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2006.07.05

「絵巻水滸伝」第2巻 正しきオレ水滸伝ここにあり

 絵巻水滸伝第二巻は、副題を「北斗の党」。水滸伝ファンならピンとくるでしょう、托塔天王晁蓋と、彼の下に集った好漢たちが、知恵でもって不義の財を奪い取る「智取生辰綱」がメインのエピソードとして描かれます。

 まず本書の幕開けとなるのは、青面獣楊志vs豹子頭林冲のドリームマッチ。本書の前半の主役とも言うべき楊志と、第一巻後半の主役であった林冲の対決は、好漢たちが次々と現れ、リレー形式で物語を紡いでいく「水滸伝」ならではの展開ですが、ため息が出るほど…いやそれすらも忘れるほど美しい挿絵に飾られて、実に印象的なシーンとなっています。

 そして物語の中心は楊志へ、そして晁蓋と仲間たちへと移っていきますが、基本的なストーリーラインは原典と同じものの、そこに施されたデコレーションは、本書ならではの味わい。原典にあったエピソードを掘り下げ、さらにオリジナルのエピソードを追加することにより――一部のキャラクターを除けば原典ではかなり薄かった――人物造形や物語展開をより掘り下げるとともに、さらに新しい魅力を加えることに成功していると言えるかと思います。
 まあ、一言で表現してしまえば「オレ水滸伝」なのかもしれませんが、しかしそれが水滸伝ファンならば誰もが感じた点を解決し、夢見たものを実現しているとくれば、問題にはなりますまい。

 そのアレンジぶりが最も発揮されているのは、この巻のクライマックスである「智取生辰綱」の件でしょう。原典では、楊志が差配する生辰綱輸送隊を、晁蓋の一党が罠にはめて奪取するという比較的シンプルなエピソードでありましたが、本書ではそこに林冲ら梁山泊勢も参加して三つ巴の混戦模様に。さらに楊志の側には北京で彼と好勝負を演じた急先鋒索超が加わり、一方晁蓋の側では智多星呉用にライバル心を抱く公孫勝一清道人が別行動を取り…と人間模様も複雑になって、数多くの魅力的なキャラクターがある時は敵に、ある時は味方になって大暴れするという「水滸伝」の魅力を凝縮したような…というのはさすがに大袈裟かも知れませんが、豪傑好漢の活躍を腹一杯になるまで読むことができて満足です(もっとも、胸焼けを起こす方もあるかもしれませんが…)。

 そして――本書のアレンジで一番得をしたのは、何と言っても智多星呉用でしょう。その渾名の通り、知謀に富んだ天才軍師…のはずが、原典ではどうもパッとしない、というかぶっちゃけ役立たず。北方版水滸伝でも、「ジャイアントロボ The Animation」でも「ダメ人間」「うっかり」「泣き虫」と実に愉快なキャラとして描かれていたあの呉先生が、本書(のオリジナルエピソード)では大活躍。普段は何を考えているかわからないが、やることなすこと間違いなし、いざという時これほど頼もしい人物はない、というくらいの格好良さで…何だか自分で書いていてこれはさすがに美化しすぎなんじゃないかと心配になってきました。

 ちなみに、口絵ページでは第一巻同様、主立った好漢の渾名が英語表記されております。第一巻では林冲の「Leopard the Great」に吹きましたが、ここでも呉先生は大活躍。他の好漢がほとんど直訳なのに対して、彼一人「Sir Intelligence」って…かっこいい、かっこいいよ呉先生…

 と、それはさておき。林冲による粛正で梁山泊の頭領の座に晁蓋がつき、いよいよ梁山泊も星の豪傑たちの本拠として活動開始…というところまででこの第二巻は幕。続く第三巻では、「水滸伝」でも指折りの豪傑・行者武松が主役となっての「血戦鴛鴦楼」ということで、乞うご期待、であります。


 …そういえば、百八星のトップの方がほとんど登場しなかったけど気にしない。公式サイトで配布している壁紙にもいないような気がするけど気にしちゃいけない。


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