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2006.07.30

「外法陰陽師」第3巻 これも一つのハッピーエンド!?

 異国渡りの外法陰陽師・漢耿星の活躍(?)を描くシリーズも第三弾。三部作のラストとなる本作では、中宮定子の身ごもった帝の子を巡って、奇怪な術合戦が展開されます。が…

 これまでもシリーズの敵役として暗躍してきた蟲使いの播磨流陰陽師・蘆屋清高は、中宮定子の心を奪い、その腹心の座を射止めます。
 既にその権勢に陰りの見えた定子一派ですが、定子の身ごもった帝の子が男であれば、立場は大きく逆転、言うなれば赤子の性別でこの国の権力の趨勢が決まることになります。
 定子を擁する藤原伊周方に蘆屋清高がつけば、対する藤原道長方には安倍晴明と賀茂光栄ありと、権力争いがそのまま術争いとなりますが…災難なのは耿星の方。

 一切我関せずの立場にいるつもりが、例によって例のごとく、この国の乱れは耿星のせい、と脅され、しぶしぶ重い腰をあげるのですが、しかし、更なる力を求める清高は、耿星の龍の力に目を付けて己が物にせんと狙います。

 そして…その渦中に巻き込まれた耿星の親友・藤原行成を襲う悲劇。
 かつて耿星が探索のために女装した姿である史君に、それとは知らずに恋い焦がれる行成ですが、思わぬことから、史君=耿星であることが明らかになってしまい、さあ大変。二人の間には決定的な亀裂が入ってしまいます。
 更に耿星を誘き出し、さらには己の術のための材料として行成に目を付けた清高は彼を誘拐、かくて物語は決戦の地・紫香楽宮へと舞台を移し、二人の死命――そして我が国の運命――が決せられることになります。

 ここで繰り広げられる最後の決戦は、シリーズの集大成と言うべき内容で実に充実。超常の力を発揮しながらも、超自然法則とでもいうべきルールに縛られる外法と、霊地たる紫香楽宮の力を借りて無双の力を発揮する清高の陰陽術の激突は、その最中のドラマチックな展開も含めて、紛れもなく本作、いや本シリーズのハイライトと言えましょう。

 そして死闘が終わり、いくつかの不安の種を残しつつも全てが平穏のうちに終わるかと思いきや…とんでもないオチが。
 ちょっ、行成それ実質プロポーズ! 耿星も素直についてくんじゃねえ! と、思わず取り乱してしまうような展開に砂を吐きそうになりましたよ。ある意味こちらが真のハイライトやも知れません。

 それはいいとして(よくない)、ひとまずの決着はついたものの、まだまだ幾らでも続けようがある本作、これで耿星の冒険を幕にするのはもったいないお話。本作の刊行からだいぶ間は空いていますが、続編を期待したいところです(その際は男性でも手に取れるレーベルでお願いいたしますです)。


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