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2006.07.31

「碧燕の剣」 敵はオランダの外道剣士

 留蔵・伊織・弥十郎のトリオによる悪人仕置きのシリーズも四作目。今回は、江戸を離れて展開されるオランダ剣士との対決をはじめとして、バラエティに富んだ全三話が収録されています。

 第一話「笑う門から邪を払え」は、自分の邪魔になる者を次々と殺めてきた商家の悪手代と、その手足となる外道仕置人を討つエピソード。
 弥十郎らの仕置き代が、手代に兄を殺された長屋の子供が差し出したなけなしの小遣いというのが泣かせ&燃えさせてくれますが、ターゲットが一度私利私欲のために仕置きを利用して以来、その力に溺れて転落していく者という、仕置きというシステムのダークサイドを描いているのが面白い。このあたり、いかにも作者らしいひねり方だな、と感心します。

 そして初めて江戸を飛び出し、遠く異郷長崎で弥十郎がオランダの無頼剣士と死闘を繰り広げる第二話「対決・異人剣」は、それまでのエピソードとは趣を大きく変えた、いわばスペシャル編的味わいの作品となっています。
 記憶を喪失して以来初めて、一人で(さすがにチーム三人揃って旅に出るのは表の顔の関係で不可能なので)長旅にでる弥十郎の「はじめてのおつかい」ぶりや、オランダ剣士のフェンシング殺法との対決、そして旅先で出会い、心を一にする男たちの登場と、見所は十分。
 …が、話の深みは今一つで、そういう意味でもスペシャル編と考えればいいのかな。

 そしてラストの「学び舎は誰がために」は、伊織が娘と共に暮らす長屋に越してきた出張指南の好青年を狙う外道学者との対決を描いた一幕。
 自らの私塾をナンバルワンにするため、よその生徒を引き抜く&脅す・学者に自分の傘下に入れと甘言を弄す・それでもだめなら腕自慢の弟子を使って痛めつけるというルール無用の悪党ぶりは、ちょっ、そんな学者いねえwwwと突っ込みたくなりましたが、何というか、その外道学者に、劇団☆新感線の粟根さんを脳内で当てはめてみたら、やたらと似合っていたのでOKとします。

 と、まとまりのない感想になってしまいましたが、安心して読めるという点ではかなりのクオリティに達している本作、弥十郎の記憶も徐々に戻りつつありますが、末永く続いていただきたいという気持ちは強くあります。


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