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2006.07.22

「鷲」 綺堂怪談の全体像がここに

 連続で復刊されてきた岡本綺堂の怪談集もこれで三冊目。表題作の「鷲」をはじめとして、主に幕末を舞台にした作品と、いわば当時のモダンホラーたる開化以降の作品と、大きく分けて二つの作品群が収められています。

 正直なところ、先に刊行された「影を踏まれた女」「白髪鬼」に比べると知名度の点では一歩譲りますし、質の点でもいささか…というものもありますが、しかしあくまでも綺堂作品の中での比較の話。失われた江戸東京の情緒を漂わせつつ(まあ、今回は僻地や外地を舞台とした作品も多いのですが)、淡々とした筆致の中で恐怖感を募らせていく綺堂節は相変わらず見事というほかありません。

 個人的にお薦めの作品は、「黒ン坊」「兜」の二作品。前者は、綺堂には比較的珍しい御庭番を狂言回しとして登場させつつも(いや、登場させることにより)、民話めいた因縁譚を、凄愴の気漂う、リアルな質感を持った作品として成立させた名品であります。
 一方後者は、とある武家の一門の前に幾度となく姿を表す兜一つと、それとともに現れる謎めいた母娘を巡る物語で、本書のみならず、綺堂怪談全体の中でもまず名作と言ってよいかと思います。ベースとなる兜の由来(?)は江戸時代の奇談に見られるものですが、そこから長きにわたる因縁めいた物語を構築して見せたのはまったく綺堂の独創かと思います。また、時代ものファンとしては、上野戦争の描写にも注目したいところです。

 何はともあれ、本書を含めた三冊で、綺堂怪談の全体像はほぼ掴めるようになるかと思います。これを機に、老若男女安心して読むことができる、誰が読んでもそれぞれに面白く、発見のある綺堂怪談に、一人でも多くの方が触れてくれることを期待します。


 と、これは余談ですが、文庫の帯の惹句は、旧版と同じなのですね。実は先に出た二冊については、うちにあるものは帯がついていないので不明なのですが、こちらでも同じなのかしらん。


「岡本綺堂怪談コレクション 鷲」(岡本綺堂 光文社文庫) Amazon bk1

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