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2006.07.27

「吉宗影御用」 伝説の終わりと始まり

 約十年前に単行本化された時代アクションの快作が文庫で復活しました。将軍吉宗の秘命を受けた老隠密とその仲間たちが、幕閣を向こうに回して暗闘を繰り広げます。
 
 物語は、余命幾ばくもない大岡忠相のもとを、一人の老人が訪れるところから始まります。忠相邸に幾重にも張り巡らされた罠をかいくぐって出没自在のこの老人、名は植畠喜平こそが、将軍の側近すらその存在を知らなかった隠密中の隠密であります。

 彼が吉宗の命で集めたもの、それは、諸大名や幕臣の秘事ばかりを集めた陰武鑑。その存在を忠相から知らされた将軍家重の御側衆・大岡忠光は、己の秘事が暴かれるのを恐れ、密かに公儀御庭番を動かし、喜平を襲います。
 さらに、若き日の田沼意次も、手足として使う乞胸衆(香具師や見せ物師たちのギルド)を動かして何かを企む様子。かくて、喜平とその仲間たちは、江戸の裏側を舞台にして死闘を展開することになります。

 と、その死闘と並んで、いやそれ以上に物語の中心となるのは、一切が謎に包まれた――その仲間たちですら一部しか知らない――喜平の正体。
 ある日忽然と吉宗の前に現れ、吉宗の死とともに己も表舞台から姿を消そうとする彼の正体は。何処からきたのか、何故吉宗の隠密となり、何故陰武鑑を遺したのか。そして何故吉宗の死とともに消えようとするのか――
 喜平の謎めいた姿が徐々に明らかにされていく終盤は、ただただ驚きの連続で、まさかこんな方向(ヒント:黄算哲)に物語が広がっていくとは! と、嬉しい悲鳴を上げたくなりました。

 そして戦いの果てに、かつて己が来た地へと還っていく喜平。しかし、この老虎は去ったものの、その意志を継ぐ者は残り、新たな冒険を始めようとしています。
 いわば本書は、伝説の隠密の活躍のエピローグであると同時に、彼の意志を継ぐ者たちの活躍のプロローグ。
 このシリーズは三部作のようですが、少しでも早く続編を読まなければ、という気持ちにさせられたことです。

 ちなみに文庫版のイラストは、いい意味で書き下ろし文庫らしくらい、なかなかの味わいがあってなかなか良いので気に入ってます。


「吉宗影御用」(磐紀一郎 ベスト時代文庫) Amazon bk1

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