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2006.07.20

「白髪の女」 近世と近代が交わるところに

 短編一本で一つ記事を書くのも少々気が引けるものがありますが、少々本業が多忙なのと、そして何よりも「白髪鬼」「夢幻紳士」と語ってきてこの作品を語らないのはむしろおかしいというわけで高橋葉介氏による「白髪鬼」の漫画化「白髪の女」を。

 「夢幻外伝 2 夜の劇場」に収録されている本作、基本的なストーリーは原作と同様、弁護士志望の青年の前に現れる白髪の女の怪を描いたもの。個人的には、作品では和装よりも洋装のイメージが強い(…のは夢幻紳士の印象だと思いますが)高橋葉介氏と、やはりどうしても和装のイメージの強い岡本綺堂というのは果たして組み合わせとしてどうなのかしらん、と思いましたが、ごめんなさい、実によい仕上がりとなっておりました。
 高橋葉介氏がレトロな世界を舞台に描いた物語を読むとき――かつてそこに確かに存在しながらも、今では決して手の届かないものを見るような――妖しくもどこかもの哀しい印象を受けるのですが、それが近世と近代が交わるところに蟠る陰を描いた綺堂先生の「モダンホラー」とよくマッチしていたと思います。

 原作の、直接的な怪が描かれるのは語り手の伝聞としてのみ、あとは客観的な事実のみというスタイルは、さすがに完全に再現というわけにはいかないようでしたが、しかしそれは一人称の小説と、漫画という媒体にそもそも起因するところゆえ仕方がないでしょう。
 むしろ、ヒロイン(?)伊佐子の素顔を読者に見せないでおいて、最後に…というような演出は、漫画ならではのものであって、あの印象的な結末をうまく飾っていたと思います。

 と、綺堂ファン的には、その伊佐子の素顔を隠すために使われた小道具が驚きで、むしろあんなものを被ったから伊佐子さんはあんなことに…と思わないでもないですがそれはさておき。

 ちょっと今では手に入れにくい本かもしれませんが、「夜の劇場」自体が優れたホラー短編集でもあり、機会があれば一度ご覧いただきたいものです。


 …そういえば本作を読み返していて、近代合理性のある意味化身と言うべき法律家たちを生み出す司法試験の場に、白髪の和装の女の幽霊が現れるというのは、何だかとても象徴的だな、と今さらながらに気付かされましたよ。


「白髪の女」(高橋葉介&岡本綺堂 ソノラマコミック文庫「夢幻外伝 2 夜の劇場」所収) Amazon bk1


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