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2006.07.10

「夢幻紳士 逢魔篇」 百鬼夜行は夢まぼろしの中に

 そういえばだいぶ以前に手に入れて面白く読んだにも関わらず、まだ紹介していなかったこの「夢幻紳士 逢魔篇」。もう何十年も描き継がれている夢幻紳士サーガ(という言葉が全く似合わないなあ)の最新作であり、また長きに渡って夢幻紳士こと夢幻魔実也氏に魅了されてきたファンにとっても満足のいく名品です。

 一風変わったラブロマンスとも言える前作「幻想篇」とはうってかわり、本作はラスト直前まで、うらぶれた料亭の離れの一室で物語が展開するという何とも人を喰った展開であります。そして、その彼の前に次々と現れるのは、人を喰ったり化かしたりの妖怪変化、確かにこれは「魔」に「逢う」話だわい…と思いきや、むしろひどい目に遭わされるのはいつも妖怪の方。なるほどこれは、夢幻「魔」実也氏に逢った妖怪の話なのでありましょう。

 ジャンルで言えば、本作は妖怪退治ものと言えるのかもしれませんが、それが全く妙な方向に突っ走っていて(いや主人公は一カ所に座り込んでいるのですが)――そしてそれでいて全く作品の面白さが失われることがない、というよりむしろ「これぞ夢幻紳士!」と言いたくなるような、妖気と色気と洒落っ気に溢れる作品になっているのは、冷静に考えればすごいことのように思えます。

 そしてまた…終盤に至り、あたかも夜が明けて(実際に物語中の時間軸でも夜が明けるのですが)、それまでの賑やかな百鬼夜行が日の光の中に姿を消していくように、物語は夢まぼろしの中に静かに一端幕を降ろし――そしてラストで趣は一転して「ちょっとイイ話」に転じて美しく終わってみせるのにはつくづく感心させられました(にしても本当に女の子には優しいな、魔実也氏は)。
 前作の構成が神過ぎただけに、ほんの少しだけ見劣りする部分はありますが、それはあくまでも構成の話。内容のバラエティという点では――空間的には限定されているにもかかわらず――勝っているように思えました。

 さて、夢幻魔実也氏は一旦夢の中に姿を消しますが、もちろん彼の冒険は永遠、今現在も本作に続く「ミステリマガジン」連載第三弾として、「迷宮篇」が連載中です。単行本化にはまた一年かかるかと思いますが――楽しみに待つとしましょう。


 なお…ラスト一話前での、ある人物と魔実也氏の会話の中には、この夢幻紳士という存在の本質に迫るものがあるように思われて、ハッとさせられたことです。


「夢幻紳士 逢魔篇」(高橋葉介 早川書房) Amazon bk1

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