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2006.08.31

「獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇」第一話 「かくれ里無惨」

 深い森の中で死闘を繰り広げる異形の者たち。それは一族に伝わる龍の宝玉を盗み出した男・狼牙と彼に対する追っ手、更に彼らと対立する鬼門衆だった。と、そこに飄然と現れた男は、襲いかかる鬼門衆を剣風のみで一刀両断。狼牙はその技から彼を凄腕の雇われ忍者・牙神獣兵衛と悟り雇おうとするも、獣兵衛はそれを断り去っていく。あてどもなく旅する獣兵衛は、山間の隠れ里に迷い込み、そこで気の強い娘・しぐれと出会う。が、突如、里を鬼門衆の巨大カラクリ戦車が襲撃。獣兵衛は炎の中で鬼門衆・うぶめと対決、これを斃す。一方、狼牙はしぐれを逃すも瀕死の重傷を負い、獣兵衛に宝玉を託して息絶えるのだった。

 井上敏樹の時代劇といって頭に浮かぶのがアニメ版「仮面の忍者赤影」「獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇」。日本の時代劇アニメ史上に残る名作「獣兵衛忍風帖」(以下「オリジナル」)の設定を使った(素直に続編・シリーズ作と言えないのがややこしい)連続シリーズですが、響鬼劇場版DCの文章を書いていて思い出したので、久々に通して見る(紹介する)ことにしました。

 で、不定期紹介の第一話なのですが、冷静に見てみると、これがまた実にかっちりした作り。いや、やっていることは(良くも悪くも)ブッ飛んではいるのですが、連続シリーズの第一話としては、気持ち悪いくらいに手堅い作り方と思います。
 まず冒頭から異形の者同士が激突するアクションシーンで問答無用で物語世界に視聴者を引き込むと同時に相争う二つの勢力の存在を暗示し、そしてそこに飄々と割って入る主人公のバカ強さとひねくれた性格を見せる。そして後半は主人公とヒロインを一度出会わせ、そして再びのアクションシーンを通して、その二人がそれぞれの理由から冒険の旅に出る(出ざるを得なくなる)様を描く――改めて書くのもちょっと馬鹿馬鹿しいくらいわかりやすい(もちろんこの場合は褒め言葉)構成であります。
(難点を言えば獣兵衛のキャラが今ひとつ薄い(ってこれは実は第一話だけじゃないような…)ところですが、しぐれが外の世界に何がある、何が違うと尋ねたのに「どこに行っても人は人、空は空。何も変わらねえよ」と答えたシーンはなかなか良かったかと思います)

 が、その一方で、既に第一話の時点でオリジナルとの差別化は図られていることがわかるのは面白いところ。一言で言えば時代劇と時代ファンタジーの違いと言いますか、ものすごく大雑把に喩えれば山田風太郎と石川賢の違いと言いますか…
 オリジナルが、常人離れした超人バトルを描いているようで、実は非常に真っ当な時代劇のフォーマットに則って描かれていたのはご覧になった方であればうなづいていただけるかと思いますが、「龍宝玉篇」は、少なくともこの第一話の時点ではかなり異なる手触り。例えばキャラクターに目を向ければ、少なくともこの第一話に登場するのは、一部を除いてビジュアル的にも能力的にも時代劇のキャラクターとも到底思えない者たちばかりで、正直なところ、隠れ里の人々が出てくるまで、異世界ファンタジーと言っても通じるような作りであります。
 もちろん、キャラだけ比較するのも如何かと思いますが、オリジナルではほとんどの敵相手にボコボコにされながら苦闘を演じた獣兵衛が、こちらではやたらと強いキャラに描かれているのも含めて、意図的にオリジナルとの違いを描いているのだな、という印象を受けました。

 もちろんこれは、オリジナルを見た人間の感想ではありますが、やはり同じタイトルを冠している以上は当然気になる点ではないかと思います。そしてオリジナルと意図的に異なる手触りで作品を作って見せたことについては、賛否両論あるかと思いますが(というか後者が大半か)、それはそれでスタッフ側の意図というものが明確にあったのだろうな、と今にして感じられた次第です。
 …何だか第一話にしていきなり総括してしまった気もしないでもないですが、続く。


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