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2006.08.21

「からくりの君」 恐ろしくも熱い、怪奇熱血時代伝奇漫画の快作

 藤田和日郎先生の「からくり」と言えば、最近めでたく大団円を迎えた「からくりサーカス」が浮かびますが、このブログ的に忘れてはいけないのは、なんといっても「からくりの君」。人形遣いの健気な姫君と、やさぐれた下忍が活躍する、怪奇熱血時代伝奇漫画の快作です。

 時は戦国時代、悪大名・狩又貞義が擁するという死なずの忍びの秘密を追っていた下忍・睚弥三郎は、蘭菊という少女と出会います。人と見まごうほど精巧なからくり人形を操る彼女は、実は、貞義に家を滅ぼされた文渡の姫君。父の仇を討ち、家から奪われたからくり人形の技を封じるために旅する彼女は、その助っ人として伝説の忍び・鳶加藤を探していたのでした。
 成り行きから蘭菊と行動を共にする弥三郎ですが、人形を操っているとき以外は全く世間知らずの蘭菊に手を焼くばかり。が、戦いの中で蘭菊の中に眠るある哀しい想いを知った弥三郎は、彼女に一つの問いを投げかけます。それは…

 と、短編ながらも、いやそれだからこそ物語を構成する全ての要素がクライマックスに向けて巧みに絡み合い、溶けあっていく様が実に気持ちの良い本作、怪奇と熱血、狂気と感動といった、一見バラバラに見えるものを一つところにまとめて、熱い熱い物語を作ってみせる作者ならではの快作かと思います。
 また、内容的に見ると、「異形を討つ者は自らも異形にならねばならぬ」というテーゼと、異形と化しつつも、その中で如何にして人間性を――熱い魂を――持ち続けるかという、「うしおととら」から「からくりサーカス」まで貫かれた作者のスタンスが本作にも息づいているのが何とも興味深いところ。
 もちろん、人形遣い対人形遣い、人形遣い対自動人形という部分――そしてもう一つ、人形を操る蘭菊の心中も――は、「からくりサーカス」のパイロット版ともいえるものであり、その意味でも見逃せない作品かと思います。

 ちなみに本作が収められた短編集「夜の歌」は、最近文庫化されましたが、こちらには単行本時に収録されていなかった掌編一本と、作者自身による作品解説が付されておりますので、未読の方は是非この機会にどうぞ。


「からくりの君」(藤田和日郎 小学館文庫「藤田和日郎短編集 夜の歌」所収) Amazon bk1

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