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2006.08.24

「暗殺道場」 激突する“武術”と“武術”

 「闇の土鬼」を紹介しておいて、これを忘れちゃいけないというのがこの「暗殺道場」。「闇の土鬼」のいわばプロトタイプと言うべき、短編ながらピリッと引き締まった武術アクションの佳品であります。

 主人公は武術道場・天真流の道場主に育てられた少年・鷹丸。彼は、ある日師から道場の四天王の恐るべき秘密を聞かされます。
 実は彼らこそは幕府が極秘裏に結成した暗殺集団のメンバー。天真流に目を付けた彼らは、流派の秘密技を盗むために入門してきたのでした。偶然彼らの正体を知った道場主は、己の流派が悪用されることを防ぐため、彼らを倒そうとしますが四人に隙はなく、かえって毒を盛られてしまったのでした。
 そしてそれからほどなく、遂に四天王は道場主を暗殺。鷹丸は恩師の仇を討ち、天真流の秘密技を封じるために、単身四人に戦いを挑む…というのがあらすじであります。

 経験・技量とも自分より上、しかも四人いる相手を主人公がいかにして討ち果たすかという、一種(言葉の正しい意味で)ゲーム的展開を見せる本作は、開幕からひたすらアクションとサスペンスの連続。それでいて一本調子になることなく、長編を読み切ったのと同等以上の満足感を味あわせてくれるのは、まさに名匠の技というべきでしょう。

 そして、本作で四天王が操る殺人術というのは、いずれも正当な剣術・武術からは離れた外道の技。その暗殺集団の操る裏武術に、それと根を同じくする技でもって単身戦いを挑む主人公というのは、まさに「闇の土鬼」に通じるものであり、この「剣術」でも「忍術」でもない「武術」同士の激突というシチュエーションが、いかに作者会心のものであったかうかがえます。

 もちろん、ページ数の制約等から、土鬼の方にあった人間ドラマ、テーマ性は希薄ではあるのですが、ある意味、その分だけ武術ものとしての純粋さは強いとも言えるかもしれません。
 さすがに一般的な知名度という点ではかなり他の作品に比べて劣るところではありますが、内容においては些かも劣るところない本作。機会があれば一読を(できれば「闇の土鬼」との併読を)お勧めします。


 …と、ここまで書いてきてふと、都筑道夫先生の名作ライトハードボイルドアクション「なめくじに聞いてみろ」を思い出しました。あの作品も、主人公が様々な殺人術の継承者たちを次々と倒していく物語ですが、影響を受けていたりすることは…さすがにないでしょうな、きっと(ちなみに「なめくじに聞いてみろ」、舞台こそ現代ですが、ちょっと設定をいじるだけで簡単に時代劇にできる内容なのは、これは都筑先生、わざとやったのかしらん)。


「暗殺道場」(横山光輝 講談社漫画文庫「鬼火 珠玉短編集」所収) Amazon bk1

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