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2006.09.07

「コウヤの伝説 3 みちびきの玉」 心を合わせ、力を合わせ

 鎌倉幕府滅亡の動乱期を舞台とした時代ファンタジーの最新刊が刊行されました。今回は異世界コウヤの四神が一・朱雀を救うため、四人の少年少女が冒険行を繰り広げることとなります。

 前の巻で四神・白虎を助け出した一行。しかし帝の命の下、コウヤの、四神の力を狙う怪人バサラ一味の暗躍は続きます。強大な力を持つ四神ですが、バサラの妖力もまた強力、朱雀は地に墜ち、また、四神を封じる玉を持つ皇子・いぶきも、一行からはぐれた上にバサラに声を封じられ、窮地に陥ります。
 一方、いぶきと朱雀を探す吾郎・みさ可・きじゅ丸も、暴走する朱雀の力に翻弄されて悪戦苦闘。更に、北条宗家の生き残りという自らの立場を受け入れようとしないきじゅ丸に、みさ可のいらだちは募り、三人のチームワークも怪しい状態に…果たしてこの状況下で、少年少女たちは朱雀を救い、生き残ることができるか!? という趣向であります。

 これまでもその要素はありましたが、この第三巻で特に焦点となっているのは、人と人とのコミュニケーション(不全)ではないかと感じます。いぶきは声を封じられ、本来同じ側に立つはずのきじゅ丸とみさ可は、想いのすれ違いから険悪なムードとなり――
 それぞれに優れた力を持つものの、肉体的にはまだ幼い彼らが、持てる力をフルに発揮し、異世界で生きていくには、それぞれの思いを重ね、力を合わせていくしかありません(この辺り、きじゅ丸・みさ可・吾郎が、三人の力を思いを一つにすることによりコウヤを統べる金色の竜を呼び出すことができる点に最もよく表れていると申せましょう)。

 そんな彼らにとって、己の意志を伝えられない、互いの意志がすれ違いぶつかり合う状態は、一見ささいなことのようでいて、命にも関わりかねないピンチということになります。
 その状況を救うのが、吾郎のいかにも子供らしいおおらかさ、拘りのなさというのは、安直と言えば言えなくもないですが、大人たちでは難しいことも、子供の素直な心でもって乗り越えることができるというのは、それはそれで一つの真理でありますし、児童文学として全く正しい態度であるかと思います。

 もちろん、子供とはいえそれぞれに背負うものがあるわけで、本作で言えばきじゅ丸は北条高時の子で帝の一門を斬るための妖刀を持ち、みさ可は北条家に仕える武家の娘で一族を幕府滅亡の折りに失い、そしていぶきは彼らと対する立場にある後醍醐帝の皇子であり――唯一、農民の子である吾郎のみがそのようなしがらみと無縁に見えますが、彼もまた、幼い弟を抱えて、必死に生きようとしています。そんな、ある意味この時代の人々・勢力の縮図とも言える少年少女が、互いの立場の違いを乗り越えつつ、力と心を合わせて一つの目的に向かう姿は、見ていて気持ちの良いものであると同時に、異世界を舞台としつつも、本作を時代ものたらしめているように感じられます。

 残る四神は二体(ちなみに本作、四神の能力・性質といったものに他の作品とは異なるものを用意しているのには大いに感心しました)、果たして次には如何なる冒険が待ち受けておりますか、半年近く間隔が開いてしまうのだけは残念ですが、楽しみに待つこととしましょう。


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