« 「コウヤの伝説 3 みちびきの玉」 心を合わせ、力を合わせ | トップページ | 「獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇」第四話 「割れた宝玉」 »

2006.09.08

「楓の剣! 3 かげろふ人形」 江戸を駆ける二つの心

 「楓の剣!」シリーズも順調に巻を重ねて早三巻。本年初頭に開始したことを思えば、かなりのハイペースの刊行ですが、今回は楓と弥比古の間の絆が試されるお話。

 今日も今日とて江戸の町を駆け巡るじゃじゃ馬・榊原楓と幼馴染みの筒井弥比古が出会ったのは、熊野から出てきたという美しい女性・帰蝶。実はこの女性、二人の幼なじみである菓子屋の若旦那・嘉一の祖母で、嘉一の花嫁探しに江戸に出てきたということですが、どうもその行動は怪しい。
 折しも江戸では、現場に犬張子が残された神隠しと、獣めいた傷跡の殺人事件が続発、この手の事件に目がない楓と弥比古はさっそく調査を開始しますが、それでも止まぬ怪事件。更に、江戸で話題の人形使い・陽炎座の絶世の美形・紫狼が楓に接近してきて…

 というわけで、奇怪な事件の謎解きと平行して描かれるのは、実にまあ微笑ましいというか可愛らしいというか憎たらしいというかなツンデレバカップルの行方。
 正直、武家の子女が町中でこんなことをしていていいんじゃろか…と、ちょっとだけ残っている私の中の真面目な時代小説ファンの部分が思わないでもないですが、例えば作者も愛好されているという「暴れん坊将軍」のような痛快娯楽時代劇として考えれば、こういうのもOKでしょう(そういう意味では、本シリーズはまさしく良い意味の「パラレルお江戸」を舞台としていると言えるのだな、と今頃気づいた次第)。

 が、本作の後半で描かれるのは、そんな二人の間に、そんな二人の間だからこそ生まれた気持ちの小さなすれ違いが呼ぶ悲劇。邪な術の媒介があったとはいえ、片方が片方の前から姿を消し、さらには互いに刃を向ける羽目にまでなるとは…
 この辺り、前半で、いやこれまでのシリーズで、これでもか! とばかりに二人のじゃれあいが描かれていることにより、より一層切なさ、やりきれなさが感じられるのは、うまい構成だな、と素直に思いました。

 また、終盤に描かれる神隠しの「犠牲者」の姿もいい具合にホラータッチで、なかなかに気持ち悪く恐ろしく書けていたと思いますが、それがまた同時に、あくまでも現実の中で、二人ぶつかったりひっついたりしながら生き抜いていこうという主人公カップルとの対比になっているのかなと、感心した次第(…と思ったけどよく見てみたら結構あきらめ早かったですね、この二人も)。

 まあ、この二人が真に結ばれる日は当分先だと思いますが、そんなことになったらそれはシリーズが終わるときでありましょう。私なりのこのシリーズの楽しみ方もわかってきたことですし、二人にゃ悪いですが、当分このまま、二人仲良く江戸の町を駆け巡って、仲良く事件に首を突っ込んでいて欲しいものです。


 しかし…本作の「敵」の正体がわかってからもう一度その登場シーンを読み返してみると、一体彼が何を考えて日常を暮らしていたのか、ちょっと考えさせられましたよ。


「楓の剣! 3 かげろふ人形」(かたやま和華 富士見ミステリー文庫) Amazon bk1

関連記事
 「楓の剣!」 ライトノベル界に女剣士見参!
 「楓の剣! 2 ぬえの鳴く夜」 女剣士再びのお目見え

|

« 「コウヤの伝説 3 みちびきの玉」 心を合わせ、力を合わせ | トップページ | 「獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇」第四話 「割れた宝玉」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/11803850

この記事へのトラックバック一覧です: 「楓の剣! 3 かげろふ人形」 江戸を駆ける二つの心:

» 楓の剣!〈3〉―かげろふ人形 [ライトノベルっていいね]
楓の剣!〈3〉―かげろふ人形 著者 かたやま和華 イラスト 梶山ミカ レーベル 富士見ミステリー文庫  早くも展開に飽きが来ている。  人気blogランキングへ ← よろしくお願いします。  クリックありがと... [続きを読む]

受信: 2006.09.08 19:16

« 「コウヤの伝説 3 みちびきの玉」 心を合わせ、力を合わせ | トップページ | 「獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇」第四話 「割れた宝玉」 »