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2006.09.27

「剣法奥儀」 宝石箱のような名品集

 世に剣豪小説家は数あれど、こと短編小説の切れ味については、五味康祐先生が、没後四半世紀を過ぎてなお、最高峰に位置するのではないかと時々思います。達人同士が己の命と矜恃をかけてぶつかり合う一瞬に向け、潮が満ちていくように静かに彼ら剣士の半生・境遇を描き、緊張が頂点に達したとき一気呵成にクライマックスを描ききる、その品格すら漂う業前には、読む度毎に唸らされます。

 本書も、そんな剣豪小説を集めた宝石箱のような短編集。作者が柳生の芳徳寺(柳生家の菩提寺であり、かの列堂が住持を務めたというあの寺)で、「旅不知」なる各流派の奥義の詳細・由縁を記した書物を発見し、それを元に小説化したというスタイルを取っています。
 収録された作品――すなわち流派と奥義――は以下の通り。

 心極流「鷹之羽」
 知心流「雪柳」
 天心獨明流「無拍子」
 一刀流「青眼崩し」
 先意流「浦波」
 風心流「畳返し」
 柳生流「八重垣」

 刀術の極みともいうべきものあり、はたまた化生の業としか思えぬものありと、一口に剣法奥義といっても実に様々、そしてその奥義を修めた者・振るう者も様々(それが主人公である時もあれば、敵である場合もあり)であり、単なる剣法の品評会には決してなっていないのは、流石としかいいようがありません。

 伝奇性という点においては、一連の柳生ものに譲るところもあるかもしれませんが、剣豪小説としての完成度としては、些かも劣るところのない本書。少しでも多くの――特に若年層の――方に、触れていただきたいと願う次第です(なお、本書のタイトルは「奥義」でなく「奥儀」なので、検索の際には要注意)。


 ちなみに、現在書店で手に入る新装版の解説は荒山徹氏が担当しており、氏らしい独特の切り口で五味作品の魅力が語られていますが、返す刀で他の作者・作品――なかんづく吉川英治の「宮本武蔵」をバッサリやっているのにはただただ慄然。また、フォーサイスの作品を「伝奇小説」と評しているのにはちょっと感心しました。


「剣法奥儀」(五味康祐 文春文庫) Amazon bk1

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