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2006.09.30

「黄泉の影郎」(再録)

 おそらくは江戸時代、平凡な青年影郎は、愛する妻を盗賊団に奪われ、自らも殺されてしまう。とある僧の反魂の術で復活した影郎だが、術は完全ではなく、体を維持するためには人の生き血を啜らなくてはならない。呪われた生を背負った影郎は、家出少女・幸子を道連れに、妻を探しだし、盗賊団に復讐するために彷徨う。

 週刊少年チャンピオンで連載された幻の時代伝奇コミックです。
 あらすじを見ていただければ感じていただけるかと思いますが、やたらとダークなストーリー。確かに、妻(恋人)を奪われた男の復讐行というのはバイオレンスものの常道ではありますが、この作品の主人公・影郎は人の生き血を啜らなければ体が崩れ落ちるゾンビとも吸血鬼ともつかぬ存在。さすがに罪科ない人を襲って血を吸うわけにはいかないので、世のためにならない賞金首を襲ってはその血を啜る影郎ほど、とてつもない業を背負ったキャラも(少なくとも少年誌の主人公では)珍しいのではないでしょうか。ある意味、さすがは秋田書店。
 さらにクライマックスに近づくに連れてダーク度はアップ。影郎と、偶然彼と出会い、惹かれるようになった幸子の間にも因縁があることが判明、因縁自体はそれほど珍しいものではないですが、そこに至るまでの描写の鬱っぷりたるや…。しかしながら、その果てに物語が辿り着いた結末は、意外にも暖かさ、爽やかさすら感じさせるもので、そのギャップがまた魅力的な作品でした。

 もちろん、わずか14回で連載が終了するには、内容の重さに加えて色々理由があるわけで、物語的にアクションものにも、人情話にも、ホラーにも徹しきれなかった中途半端さはありますし、半死人の影郎だけでなく、生きているキャラの目も死んでるようにしか見えないのは漫画としてさすがにどうかと思います。

 とはいえ、上に述べたように余所では滅多にお目にかかれないような個性的なキャラクターとストーリーは伝奇マニア的には楽しめましたし、何よりも、作品の持つ、いつまでも暮れない薄明の中を永遠に彷徨っているかのような雰囲気は、大いに魅力的でありました。到底万人にお勧めできるとも、漫画史上に残るとも言えない作品ですが、不思議と気になる作品でありました。

 いまだに単行本化されていない作品ではありますが(秋田書店は単行本化されない作品も結構多い)、大都社あたりで単行本化してくれないかなあ…


「黄泉の影郎」(堀口哲也 週刊少年チャンピオン2001年16~30号連載)

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