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2006.09.29

「獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇」第九話 「はらわたに龍」

 柳生の里からの迎えに刃を向けられるしぐれ。幕府への保険としてしぐれを育てていた柳生家だが、今となって彼女の存在が邪魔になったのだ。そこにヒルコの剣士・臓腑が現れ、その剣と腹から飛び出す青黒い龍で瞬く間に柳生の剣士を全滅させる。そしてしぐれを連れ帰ろうとする臓腑だが…。その後、獣兵衛の前に一人現れる臓腑。しぐれを惨殺したという臓腑と獣兵衛が刃を交える中、臓腑は己に寄生する怪物の事を語る。強敵の前に危機に陥った際にしか現れない怪物を始末するため、嘘をついてまで彼は獣兵衛との戦いを望んでいたのだ。そして現れた怪物を斃した二人だが、喜んだのも束の間、臓腑が倒れる。実は自分こそが寄生していたのだと気付き、臓腑は逝くのだった。

 獣兵衛と互角の能力を持つ(剣先からカマイタチも放った? さらにオリジナル以来、久々に獣兵衛の頭突きを使用。戦いの流れと言ってしまえばそれまでですが、それくらいの強敵と思っております)ヒルコの剣士・臓腑との対決を描いたこのエピソード、おそらくは本シリーズ中一、二を争う名編かと思われます。
 臓腑対柳生の剣士、臓腑対獣兵衛の、緊迫感溢れるアクションシーンのクオリティもかなりのものでしたが、虚無的とも冷笑的とも言える特異なキャラクターの臓腑を演じた上田祐司氏の名演も光ります。全てに諦めきったような、あるいは悟りきったような、そしてまた実に薄っ気味悪い喋りの底に、哀しみを湛えた声音の見事さにはただただ感心するのみです。

 そして、臓腑があれほどまでに望んだ自由を掴んだと思った瞬間、全てが崩れ去っていく悲しくも皮肉なラストは、自分の宿命から自由に、普通の女の子として暮らしたいと願うしぐれの姿に重ねられるものがあるのでしょう。

 と、本編の出来の良さにうっかりスルーするところでしたが、冒頭であっさりと柳生としぐれの関わりが語られます。その内容からわかるのは、本作の時代背景。しぐれが幼い頃に柳生家が徳川幕府に不信感を抱いていたこと、この物語の時点で直参であること(そのような科白がありました)、また鬼門衆の黒幕たる闇公方が豊臣の残党ということを考えると、大坂の陣後、さほど時間が経っていない頃が舞台なのでしょう。

 と、柳生で思い出した。冒頭でしぐれを襲う柳生剣士のリーダー・安兵衛の声は小林清志。柳生で小林清志、しかも臓腑との戦いでは二刀を使用、というのを見て、「サムライスピリッツ」の柳生十兵衛を思い出してしまいましたよ。


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