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2006.10.28

「抜刀秘伝抄 流浪の剣聖・林崎重信」(再録)

 タイトル通り林崎甚助を主人公に据えた剣豪小説。様々な題材が手際よく盛り込まれたストーリー運びはもちろんですが、決闘シーンのアクション描写が秀逸で実に面白い作品でした。

 作者は「剣豪 その流派と名刀」を書かれた方で、実際に居合術を修めているそうですが、その経験を生かした細かな(そして決して決闘のスピード感を損なわない)刀術の描写と、そこから生み出されるリアリティと緊迫感はなかなかのもの。また、長大な刀を抜く際の柄の動きを応用して、柄を相手の鳩尾に叩き込む技など、実際の刀の動きを理解しているからこそ生まれる技の描写もエキサイティング。

 キャラクター描写も、硬骨漢ながら心にある傷を負う林崎甚助をはじめとして、甚助の兄弟子ながらその才能に嫉妬してその命を狙う北畠具教、甚助の行く先々に現れる飄々とした美青年・佐々木小次郎、具教の御前試合で甚助と対決する十手術と二刀流の達人・新免無二斎など、皆個性的。特に、悲劇の剣聖として描かれることの多い北畠具教が卑屈ですらある小人物として、また狷介な武術狂として描かれることの多い無二斎が死闘の末に甚助と爽やかに剣術者同士のエールを交換する好漢として、それぞれ描かれているのが新鮮でした。

 また、この作品をより奥深いものにしているのが、随所にちりばめられた、戦国時代の最中に理想と現実、自らを高めることと人斬りの所行の間で揺れる、主人公をはじめとする剣術者の心の動きを描いていること。剣戟描写が真に迫っているだけにより一層、自らの理想とする道を、他者を傷つけずに目指そうという男たちの苦闘が胸に迫ります。

 …何だか褒めすぎになってしまいましたが、この作者の本は個人的にチェックしていこうと思います。


「抜刀秘伝抄 流浪の剣聖・林崎重信」(牧秀彦 学研M文庫) Amazon bk1

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受信: 2006.10.30 06:52

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