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2006.10.14

「剣聖 乱世に生きた五人の兵法者」 達人が描く達人の姿

 新潮文庫から発売されたオリジナルアンソロジーである本書は、副題にあるとおり戦国乱世の時代に剣の道を生きた五人の剣士を描いた五つの作品が収録されています。

 収録された作品は以下の通り――

池波正太郎「上泉伊勢守」(上泉伊勢守)
津本陽  「一つの太刀」(塚原卜伝)
直木三十五「宮本武蔵」(宮本武蔵)
五味康祐 「真説 佐々木小次郎」(佐々木小次郎)
綱淵謙錠 「刀」(柳生石舟斎)

 ドキュメントタッチあり、伝奇風味ありと、バラエティに富んだ作品群ですが、いずれの作品も、時代小説の達人が、後世に名を残す剣の達人の姿をそれぞれの手法で描き出しており、なるほど、あのエピソードもこの作家にかかればこう描かれるのか、と実に興味深いものがあります。

 個人的に本書の中で一番印象に残ったのは、五味康祐先生の「真説 佐々木小次郎」。大きく分けて二部構成となっている本作、前半は小次郎の師の富田勢源と梅津六兵衛との対決を中心に小次郎の富田流修業時代を描き、後半は一人立ちした柳生義仙(列堂ではなく石舟斎の二男・源二郎)との対決が描かれ、その間に小次郎晩年の物語――すなわち巌流島の決闘にまつわる挿話が語られます。
 吉川英治の「宮本武蔵」での驕慢な美剣士としての小次郎とは大きく異なり、純朴過ぎるほど純朴な精神でもって剣の修行に励む者として描かれている本作の小次郎ですが、その心があった故に、師・勢源の忠実な弟子として物干し竿の如き長刀を振るうようになったという解釈が実に面白い。
 そして、クライマックスの柳生義仙との真剣勝負において、その事実の背後にあった、非情な真実に辿り着きつつも、その更に先にあるものを知った小次郎の慟哭が、不思議な感動を伴って胸に響いたことです。

 本書、個人的には全体の半分を池波正太郎の作品が占めるどうかなと思わないでもありませんが、戦国の将として死闘を繰り広げつつ無刀の剣理を追った上泉伊勢守から始まり、その弟子として活人剣を極め、そして戦国を終わらせた男にその技を伝えた柳生石舟斎で終わるというのは、なかなか美しい構成ではないでしょうか。

 なお、本書の解説は、末國善己氏。代表的な剣豪と流派を俯瞰した上で、本書の各収録作品について述べており、なかなかにわかりやすい解説であったかと思います。


「剣聖 乱世に生きた五人の兵法者」(池波正太郎ほか 新潮文庫) Amazon

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