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2006.10.26

「松平長七郎西海日記」 そして彼の冒険は続く

 学陽書房の人物文庫で復活した村上元三先生の松平長七郎シリーズの四巻目にして最終巻がこの「西海日記」。西の果て、長崎を舞台に長七郎主従の活躍が描かれます。

 物語は、大坂に逗留していた長七郎主従の宿に、長七郎の旧知の旗本が偶然泊まったことから始まります。普段は異常なほど落ち着かない言動を見せつつも、一服吹かせば温厚な人間に変わるという、いかにもあやしいこの旗本、何らかの秘密を長七郎に語ろうとした矢先に、何者かに殺害されてしまいます。
 彼を殺害したとおぼしき謎の行者姿の男たちが長崎から来たことを掴んだ長七郎、冒険好きの彼がこれを座視するはずもなく、一路長崎に向かいますが、そこで待ち受けていたのは、人を廃人と化さしめる阿片を売りさばく謎の一味。果たして長七郎主従は姿無き黒幕の正体を暴くことができるか!? というのがあらすじであります。

 何はともあれ良くも悪くもオールドファッションな時代活劇である本作、シリーズに慣れてくると、誰が悪の黒幕か、登場した瞬間にはっきりわかってしまって苦笑させられるのですが、そこはまあご愛敬。
 話の展開がわかっていても、いやそれだからこそ楽しめるTVの「水戸黄門」のように、エンターテイメントとしてのある種の安心感がここにはあります。

 しかし、そんな単純明快な物語のラストに、フッと、長七郎の心にある――そしてそれを紛らわせるために自身を冒険に駆り立ててきた――虚無感はこれからも消えぬことを暗示する一文が挿し挟まれる辺り、さすがは村上元三先生、と感じいったことでありました。
 明朗快活なヒーローのようでありながら、やはり彼にとっての安住の地はどこにもないこと(それは彼の冒険がこれからも続くこととイコールではありますが)を予感させる結びは、これはこれでシリーズの終幕にふさわしいものではないかと感じた次第です。


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