« 「今昔物語 世にもふしぎな物語」 まだまだ面白い物語の宝庫 | トップページ | 「織江緋之介見参 散華の太刀」 真の剣豪ヒーローへの道を »

2006.11.09

新雑誌「KENZAN!」の荒山徹作品に一読三噴

 さて、八日発売の講談社の新雑誌「KENZAN!」。比較的若い層を狙った、比較的若い作家が執筆する時代小説誌というコンセプトのようで、話を聞いたときから非常に楽しみにしていたのですが、早速入手してきました。まだ巻頭の作品を読んだだけなのですが…たぶんこの巻頭の作品が最大の問題作でしょう。だって作者は荒山徹先生。
 いやはや、本などを評するに一読三嘆という言葉がありますが、この作品に関しては、冗談抜きで読んでいる最中に三回噴き出しました。すなわち一読三噴。以下、たぶんネットで一番早い紹介を(例によってネタバレが多いので、ご注意下さい)。

 さて、この荒山先生の最新作ですが、タイトルは「柳生大戦争」
 `;:゙;`(;゚;ж;゚; ) …早速噴きました。つまりあれですか、朝鮮妖術に操られて三大柳生が戦ったり、はたまた古代朝鮮の遺跡から復活した大妖怪と日本中の柳生が戦ったりするわけですか、と勝手な想像をしていたのですが――豈図らんや、開幕の舞台となるのは十三世紀末。すなわち日本で言えば鎌倉時代でした。

 当時の高麗の国師(その国の王が帰依する僧侶)・晦然は、元寇の際に元軍の尖兵として日本に派遣され、戦死した高麗兵の死霊を慰めるため、危険を冒して日本に渡航します。が、早速捕らえられ、スパイ容疑であわや斬首の彼を救ったのは、天狗面の謎の剣士。亀山上皇の命を受けて駆けつけたこの天狗侠、その名は柳生悪十兵衛
 `;:゙;`(;゚;ж;゚; ) はい、二回目噴きました。またこのパターンか! 「十兵衛が出せないんだったら十兵衛を作ればいいじゃない」とばかりに俺十兵衛二号登場!! もう大変です。

 そして晦然は二号と、山伏の祖父と孫に扮して博多に向かうことになります。途中、二号から「お祖父さま」と懐かれて晦然がもの凄くデレったりする心温まる描写があったり、壇ノ浦であの国民的怪談をやたら下品な方向性でファックしたり(これに関しても色々と言いたいことはありますが、ここでは一つだけ。荒山先生、平家の怨霊は柳生や朝鮮妖術よりも洒落にならんので勘弁して下さい)と色々あった末に、熊野と縁深い九州の彦山に腰を落ち着けることになった晦然は、ある事業に着手することになります。

 来日して以来、彼の心にあった疑問「何故高麗は元に敗れ、日本は敗れなかったのか?」――彼が辿り着いたその答えは、「日本には神がいたから」。しかし高麗には神が、神話というものがありません。このままでは高麗は元に占領されたまま滅んでしまう。果たして神話なき国に神話を生むにはどうすればよいか…?
 と、ここでこちらの悪い予感はピークに達するのですが、ここで、荒山ファンの間ではいつ本格的に登場するかと囁かれていたあの壇君神話が登場(これについてはここここをご参照下さい)。かくして晦然は、「神がいないんだったら神を作ればいいじゃない」とばかりに、日本の神話をアレしてせっせと神話作りにいそしむことになります。

 以下、晦然が神話を作り出すまでの一人ブレーンストーミングが描かれるのですが、正直、この辺りは荒山先生の悪い癖の「延々と一人のキャラが電波話を説明」なのですが、ここで晦然が語る、自分で決めたルール、それは「捏造で捏造を糊塗するべからず」
 `;:゙;`(;゚;ж;゚; ) 三回目噴いた。いやいやいや、してますから! 思いっきり糊塗してますから! 正直、この辺りの晦然の悩みは、荒山先生の執筆風景に(見た事もないのに)被って見えるのが実に愉快であります(と、仮に荒山先生が晦然に自分を投影しているのであれば、上記の、二号に懐かれてデレる晦然というのは、非常にナニな感じに見えてくるのですが、これはさすがに妄想が過ぎるでしょう)。

 それにしても、新雑誌の巻頭でよりにもよってこんなネタを繰り出してくる荒山先生と、それを許した(スルーした)講談社の度胸には感動したというか戦慄したというか…。いや、真面目な話、元の侵攻に対する勝敗の根元を、神の存在の有無に求めるという考え方は非常に面白いアイディアで感心しましたし、ちゃんと登場人物に「あまり自分とこの神を絶対視して調子に乗ってると国が滅びますよ」と釘を刺させておいて、それが更にラストに示される驚愕すべき伝奇的展開につながってくる点は、さすが! と言うほかありません。
 しかし、判断力のない方や、人の言うことを鵜呑みにしてしまう方が読んだら(今回も)ちょっとアレじゃないかな…と一瞬思ったのですが、冷静に考えれば「よし、高麗民族の共通始祖神は、柳生悪十兵衛である、と。」などと大真面目に書いてしまう人のことを鵜呑みにする奴ぁいませんわな。

 さて、この調子で鎌倉時代が舞台で続くのかしら? と思ったら、ラスト六行で大展開。柳生 of 柳生のあの人、ボクらのアイドルの黒い人が登場したところで次号に続く、という憎い展開となっておりました。果たしてこの先どうなってタイトル通りの展開になるのか? 数ヶ月先の第二号が非常に気になります。


 …と、期待の新雑誌が出たというのに延々と荒山話ばかり書いてしまって申し訳ないのですが今日はこれまで。その他の作品については、別途紹介させていただきたいと思います。


「KENZAN!」(荒山徹他 講談社) Amazon

|

« 「今昔物語 世にもふしぎな物語」 まだまだ面白い物語の宝庫 | トップページ | 「織江緋之介見参 散華の太刀」 真の剣豪ヒーローへの道を »

コメント

 むむう、当方まだ未読でありますが、
これはもう探しに行くしか手はないで砂。
久々の荒山先生の柳生力の高ぶりを
一刻も早く拝みたいトコであります喃。

投稿: 神無月久音 | 2006.11.09 02:33

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/12612348

この記事へのトラックバック一覧です: 新雑誌「KENZAN!」の荒山徹作品に一読三噴:

« 「今昔物語 世にもふしぎな物語」 まだまだ面白い物語の宝庫 | トップページ | 「織江緋之介見参 散華の太刀」 真の剣豪ヒーローへの道を »