« 今日の小ネタ(ゲームネタ二題) | トップページ | 新雑誌KENZAN! »

2006.11.02

「道長の冒険」 優等生ではあるのだけど…

 若き日の藤原道長と、不思議な力を持つ楽人の少年・真比呂が不可思議な事件の数々を解決する「平安妖異伝」の続編たる「道長の冒険」が文庫化されました。
 前作のラストで真比呂が何処かへ去ってから一年、京の都で起こるのは数々の異変。そんな時に道長の前に現れたのは真比呂から遣わされたという寅麿なる男が現れます。聞けば、異変は根の国を支配する無明王の仕業、真比呂もまた、無明王に捕らわれているとのこと。友の窮地を見過ごしにはできぬと、道長は寅麿を供に、根の国へと向かいます。

 このあらすじからもわかるように、連作短編形式のゴーストハントもの的作品であった前作とは異なり、長編ファンタジーとも言うべき本作、舞台のほとんどは京の都から離れた異界で、山海経などの中国怪異譚や、本朝の霊異譚を思わせるキャラクターや事件が道長の前に現れることになります。私は読んでいる最中、諸星大次郎先生の中国ファンタジーを思い出しました。

 さて、次々と登場する不思議な世界がなかなか楽しい本作ではありますが、個人的にどうしても気になってしまったのが道長のキャラクター。一言で表せば、非常に人間が良くできた優等生なのですが、それがために個性が薄く感じられるのです。
 この道長の優等生ぶりは、前作から見られたのですが、その時にはより超然とした真比炉というキャラが傍らにいましたし、舞台も京の都ということで、平安貴族としての道長の姿も描かれていました。が、今作では、冒頭とラストを除けば舞台は異世界ということもあり、比較すべきものがなくなって前作以上に道長が「良くできた主人公」以上に見えなくなっているように思われます。
 失礼を承知でさらに言わせていただければ、道長を主人公とする必然性が薄いのではないか(もちろん、前作での真比呂との結びつきという大きな理由はあるのですが…)とすら感じてしまった次第です。

 そういった意味も含めて、ここで完結となってしまうのが何とも残念なこのシリーズ、何とか続編を――第一作目のスタイルで――書いていただけないものかと思っているところであります。


「道長の冒険 平安妖異伝」(平岩弓枝 新潮文庫) Amazon bk1

関連記事
 平安妖異伝

|

« 今日の小ネタ(ゲームネタ二題) | トップページ | 新雑誌KENZAN! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/12521495

この記事へのトラックバック一覧です: 「道長の冒険」 優等生ではあるのだけど…:

« 今日の小ネタ(ゲームネタ二題) | トップページ | 新雑誌KENZAN! »