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2006.11.11

「竜門の衛」(再録)

 南町奉行所の同心・三田村元八郎は、ふとしたきっかけから次期将軍と目される徳川家重暗殺の企みを知り、これをかろうじて阻止する。その功績を買われた元八郎は、寺社奉行となった大岡忠相の臣となり、次期将軍宣下を巡る陰謀に立ち向かうこととなる。天下を私せんとする敵の陰謀は天皇の身辺にも及ぶが、元八郎は父・順斎や硬骨の公家・伏見宮とともにこれに立ち向かう。そして東海道を下る天皇の勅使一行を守って江戸に向かう元八郎だが、陰謀と因縁は思わぬ形で彼のすぐ近くに迫っていた…

 ネット上でかなり評判が良い作品なので読んでみたのですが、これが噂に違わぬ痛快作。少々厚めの分量も気にならず、一気に読むことができました。

 一介の(もと)同心が将軍親子はおろか時の帝まで守ってしまうというストーリーは、一歩間違えれば荒唐無稽以外の何物でもないですが、きっちりとシチュエーションを積み重ねて物語を展開しているため、(時代小説としては)ごく自然に受け入れることができ、主人公たちの痛快な活躍を思う存分楽しむことができる作品でした(このきっちりとした、自然なストーリー展開というやつ、当たり前と言えば当たり前のことなのですが、これをおろそかにしている作品が案外多いのも事実です)。
 もちろん、単に物語構成の妙のみならず、そこに織り込まれた謎や因縁も巧みで、特にすっかり忘れていた事件が終盤に意外な伏線として生きてくるのには感心させられました。また、当時の事物――特に時代小説の世界でも意外と馴染みの薄い当時の宮中の描写など――を丁寧に(冗長にならない程度に)作中で説明しているのも好印象。

 唯一、悪役の描写、特に台詞回しがあまりに類型的なのが非常に残念ですが、作者にとってこの作品がほぼ長編デビュー作ということを考えれば、この点もおいおい改善されていくことでしょう。続編も発売されているので、絶対読みます。


「竜門の衛」(上田秀人 徳間文庫) Amazon bk1

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