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2006.11.29

「絵巻水滸伝」第四巻 宋江、群星を呼ぶ

 「絵巻水滸伝」第四巻は、放浪する宋江が群星を招き寄せるかのように、様々な好漢豪傑と出会っていく展開。その中でもメインとなるのは、弓の達人・小李広花英と、無双の武人・霹靂火秦明の物語です。

 大きく分けるとこの第四巻は三つの部分から分かれます。序章的位置づけの魯智深・楊志・武松を中心とした二竜山篇、花英と清風山の山賊たちvs秦明・黄信の激突を描いた青州篇、そして李俊・穆弘・張順の江州三覇や戴宗・李逵らが顔を見せる江州篇序章…これまでの巻で登場・活躍してきた魯智深らは別として、水滸伝で人気のある・有名キャラが次々と登場します。
 そして、この綺羅星の如き顔ぶれを結びつける男が一人。そう、それが後の梁山泊首領・及時雨宋江なのですが…とにかくその無意識なトラブルメイカーぶりが愉しいのです。
 何せこの巻で宋江はとにかくよく捕まる。山賊に捕まり、官軍に捕まり、追い剥ぎに捕まり…原作では登場しなかった二竜山のエピソードにまで登場して、ここでも捕まる。捕まり回数で言えば本作のヒロインは間違いなく宋江――ってやな表現だな。

 もとより宋江のトラブルメイカーぶりは原典よりのもので、本作ではそれがほんの少し誇張されているだけ(?)ではあるのですが、その宋江の根本のキャラクターが、無私の好漢と言われつつも妙に打算の影が感じられた(これでも控えめな表現)原典に比べ、無類の、いや底抜けのお人好しとアレンジされているため、受ける印象はずいぶんと異なる気がします。
 原典でも本作でも、周囲の人間の運命をとんでもない方向に導いていくことでは同様なのですが、こちらの宋江は「なんかしょうがないか…」感がして何とも憎めない、むしろほっとけない宋江のキャラ。しかし時としてそれが逆に妙な迫力を生むあたり、原典のキャラ設定を尊重しつつもプラスアルファして、より現代にマッチした形となり、そして水滸伝マニアをも納得させる本作のキャラ造形は、宋江においても健在だなと感じさせられます。

 と、本文に感心する一方で、もう一つ感心、いや感嘆させられるのはもちろん「絵巻」の語を冠するゆえんである正子公也先生の絢爛豪華なイラストレーション。もう「鉄人」と表したくなるほどのインパクトを誇る表紙の秦明を初めとして、勇猛なキャラはさらに勇猛に、美しいキャラはさらに美しく、そしておかしなキャラはさらにおかしく(?)描きあげる正子節はいよいよ快調。上記の如き本作のキャラ造形手法と相まって、水滸伝ファンであれば挿絵を見ているだけでも幸せになれること請け合い。

 個人的にこの巻で初登場したキャラで、その絵と文章のコラボレーションがもっとも印象的・魅力的だったのは、錦毛虎燕順その人(次点は混江竜李俊)。何というか、ビジュアルといい言動といい、北欧系海賊キャラファンにはたまらんキャラなのではないかと思います。わかりやすくいえばヒゲと酒杯と肉が最も似合う男。そしてもちろんガハハ笑い。

 …何だかよくわからない文章になってしまいましたが気を取り直してこの先を眺めれば、来月発売の第五巻では、この巻で顔を見せた江州勢が、そして勿論梁山泊勢が大暴れを見せる前半のクライマックス。Web連載時に大いに楽しませていただいた件だっただけに、いまから楽しみです。


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