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2006.11.28

「天保異聞 妖奇士」 説八「狐芝居」

 往壓の過去篇にもひと段落ついて、新展開第一回。今回からのエピソードは、宰蔵とその過去を掘り下げるようで、またもや重い展開が待ち受ける予感。しかし、その一方で硬軟織り交ぜた描写がバランスよく配置され、エンターテイメントとして普通に楽しめる一話だったかと思います。

 今回現れるのは、数年前に火事で焼失した芝居小屋跡で、次々と人を拐かし、面に変えてしまう(?)狐の妖夷。女芝居の豊川一座という、またわかりやすい表の顔を持つ妖夷ですが、完全に自立して活動しているところを見ると、今までの妖夷とは違うタイプの存在のようです。

 そしてその妖夷に魅入られたのは、芝居一座の子として生まれ、その才能で知られながらも、女であるがために舞台に立てなくなった宰蔵。怪しげな狐顔の美女に誘われた幻の芝居小屋で舞う彼女ですが、妖夷を引き寄せる力を持つ彼女が舞えば――というわけですわ大変事の幕開けか、というところで次回に続くことになります。

 さて、折に触れては天保末年当時の時代背景、文化風俗を物語の中に取り込んでくる本作ですが、今回のエピソードでは当時の芝居周辺の状況を、鼻につかない程度に説明を加えつつ、巧みに織り込んでいて感心させられます。
 今でも舞台上に女性が上ることは決して多くない(古典)芸能の世界ですが、そのルールが慣習でなく一つの規制として存在していたのがこの時代。まさにそのために泣くこととなった宰蔵の心中は推して知るべしですが、芝居や歌舞伎を、妖夷と同じ人を惑わす化け物・罪とまで言い切るのはいかにも極端なお話です。おそらくは彼女が己の名に――すなわち己の存在の中に――見ている罪の物語となるのでしょう(その意味では、今回登場した妖夷が狐というより罪を裁くエジプトの神・アヌビスに似ていたのはなかなか意味深ですが、これは深読みしすぎでしょう)
 やっぱり宰蔵…芝居小屋に火付けた?

 と、これからの重たい展開が想像される今回でしたが、その一方でコミカルな演出も随所に盛り込まれ、うまく緩衝剤になっていた印象もありました。
 特にアビとえどげんの表情の豊かさは実に面白く、妖夷の肉喰って頬を赤らめるえどげん(その一方で面だろうが何だろうが平気で煮てしまうアビも愉快)や、二人揃って狐に泥水と泥饅頭喰わされるというクラシカルな化かされかたをするシーンなど、これはもう、この二人でなければできない芝居というか(他の面子だとちょっとイメージ崩れすぎるしね)、声優さん自身のうまさもあってずいぶんと楽しいシーンとなっておりました。

 また、前回ラストでちゃっかり現世に居残った雲七は、馬の姿になっても相変わらずの解説役っぷりが見事で愉快。「あなた、おしゃべりになったね」って、素で言ってるのか何だかわからないアトルの台詞も、妙なおかしさがありました。
 ちなみに、吉原に匿われたアトルが堂々と素顔を晒して雪輪の世話しに来たのは悪い意味でのツッコミどころかもしれませんが、地理的に吉原・浅草、さらに猿若町は遠くではないので、まあ許容範囲かもしれません(猿若町帰りの宰蔵がアトルと出会うというのも無理のない展開であります)。
 そしてラスト、異界と化した芝居小屋の空間をブチ破っていきなり登場する往壓という、本来ならばカッコイイシーンのはずが、乗っていたのがこの雲七雪輪だったおかげで、これまた微妙なネタっぽさがあってよかったと思います。本編が油断するとどんどんヘビーになってくので、これくらいのネタ度はあっていいんじゃないかな?


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