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2006.11.14

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 げにおそろしきは…

 今週の「Y十M」は、お圭さんが道で躓いたのをきっかけに、十兵衛一行が思わぬ窮地に立たされるお話。っていうか、何だかもの凄い勢いでラブコメになってます。

 躓いて足をひねったお圭さんに、自分におぶされという十兵衛先生。先を急ぐ旅でもあり、十兵衛にしてみれば当然の申し出であったはずが――いきなり脇からキツい言葉をぶつけたのは、お鳥さんとお品さん。
 あんたの不覚悟で十兵衛先生にいらん負担かけるんじゃないわよキーッ…という感じではないですが、いずれにせよいつもの朗らかなお鳥さん、おしとやかなお品さんとキャラが違ってる! いやはや、げにおそろしきは女心かな。
 そしてここまで言われてはお圭さんも黙ってはおれぬ、私を置いて先に行って下さいと自棄なことを言い出します(女の涙つきで)。

 さすがに三人をたしなめた十兵衛ですが、ここでお鳥とお品が笠を上げれば(ここまで笠の下で表情が見えないという演出が光る)二人の頬にも大粒の涙…というより涙だだ漏れ。先週描かれたあれやこれやが積もり積もって思わず爆発、さらに二人の想いは止まらず、こないだの偽祝言以来、十兵衛がお圭さんだけに親切するとほとんど子供がこねる駄々なみのこを言ってしまいます。
 さすがにこれには十兵衛も驚き半分怒り半分で思わず声を荒げ、沢庵和尚に説教されろと言えば、二人の方は悲しさ半分意地半分で、じゃあ説教されてきますとばかりに沢庵たちの方角――つまりは今来た方角に駆け戻っていきます。
 さすがに焦った十兵衛先生、唯一沈黙を守っていたお沙和さんに「そんなことないよな」と助けを求めますが…お沙和さんは、私以外のみんなに優しくしてるように見えますと、冷たく言い放ちます…って、一番おっかないリアクションだよ! これが今週のオチかい!

 いやはや、同じ男として想像するだに恐ろしい今週の展開。自分が同じ立場に立たされたら果たしてどんなことになるかと考えただけでゾッとします(ていうか私ならたぶん自分も沢庵様んとこに走る)。
 しかし、端から見る分には面白い…という表現が悪趣味であれば興味深い今回。まさか山風作品でここまでラブコメ――というより最早ギャルゲー――的展開が繰り出されてくるとはと、原作を既読であるのに感心したり驚いたり。こんな展開が何十年前の作品で描かれていたとは、全く山風世界は奥が深い。
 そしてもちろん、せがわ先生の絵が、その原作の持つ味わいを何倍にも増幅して見せているのは間違いのないところ。正直なところ、劇画タッチの絵で今回のエピソードをビジュアライズされたら、読んでいるこちらが相当いたたまれない気持ちになったんじゃないかと思いますが、せがわ先生の適度に漫画的描写のおかげで、今回の悲喜劇のおかしさせつなさが、より一層増幅されて伝わってきた印象があります。とくに、二人に駄々こねられた時の十兵衛先生のリアクションはケッサクでした。

 そして今更ながらに気付いたのは、ほりにょ七人の(というか十兵衛側四人の)チーム分けの妙。
 例えば沢庵側の三人を思えば、お千絵は責任感で己を鎧っているでしょうし、さくらも厳しく己を律するタイプ。お鳥さんとキャラが近いように見えるお笛は、しかし腹の中に貯め込む前に爆発するタイプなので、やはり今回のようなことにはなりそうにもない。
 翻って十兵衛側を見れば、お鳥さんはともかく(失礼)、分別ありそうな元人妻組が今回の取り乱しようというのは、意外のようにも思いますが、しかし、一度は男性と結ばれたことがある――すなわち男という存在を、より理解している――からこそ、胸中に溜まったものが、思ずほとばしってしまったのかと思えば、誠に納得のいく展開ではないでしょうか。
 と、一番恐ろしいのは、自分の作ったものとはいえ、キャラの女心をここまで理解し、計算(?)して物語に配置した山風先生のセンスなのでしょう――あんな顔してるのにな(超暴言)

 なにはともあれ、思わぬことで空中分解した一行、これは普通の旅であれば、まあ時間が解決してくれる気がしますが、しかし二人が走り去った方角には…というわけで、さて一体どうなることか、来週は一回休みなのが全く持って残念であります。

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