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2006.11.19

「九十九眠るしずめ」 開化の時代に九十九神奔る

 かつて一世を風靡した長編伝奇アクション「3X3 EYES」や、時代伝奇ものの「幻蔵人形鬼話」の高田裕三先生が現在連載中の明治時代を舞台にした伝奇コミックです。
 東京がまだ東亰と呼ばれていた明治十六年――九十九神の力をその身に宿した少女・倉橋しずめと、警視庁の斎藤一配下の密偵・乾虎源太(通称トラゲン)が、九十九神とそれを自在に操る力である護法実を巡る謎を追って、明治の闇を駆け巡ることになります。

 ヒロインしずめは、陰陽師の父と修験者の母の血を引く少女。しかし好奇心旺盛な他はごく普通の少女であるはずの彼女は、強力な九十九神をその身に宿していたのでした。眠りの無意識のうちにその九十九神の力を暴走させていたしずめですが、別の九十九神が引き起こした殺人事件を追ううちに知り合ったトラゲンのフォローで、その力と向き合うように。が、彼女の力を狙う謎の一団・東方支天衆護神民の影が迫ってきて…というのがあらすじ。

 本作における九十九神というのは、人間の身に宿ってそれを造り替え、異形の姿と能力を与える存在。いわば一種の妖怪ではありますが、作中のアプローチはむしろ九十九神を超自然的な存在として片づけることなく、「科学的」な角度から謎に迫っていくというスタイル。しずめを診察し、その謎の解明に協力するのが若き日の北里柴三郎と南方熊楠であるところに、その姿勢が端的に現れており(まあ、南方が登場した辺りでなんとなくオチは見えた気もするのですが…)、開化の時代を舞台とした物語として意味があるのでしょう。

 高田氏の絵は、さすがにベテランだけあって、怪物描写もアクション描写も達者の一言。しずめは可愛いけど脳天気で乙女チックで大食らい、でもいざというときは勇気を振り絞って…って辺りが相変わらずの高田ヒロイン(しかもボクっ娘で眼鏡っ娘ってどんだけ業が深いのだ)だなァと苦笑しつつも、重いエピソードも少なくない作品だけに、その辺りの緩急の付け所もさすがと言うべきでしょう。

 ただ個人的には、折角明治を舞台にしているのだから、もう少し突っ込んだ物語を見たいな、とは思います。何というか、当時の事物や人物を登場させていても、それが今ひとつ皮相的に感じられてしまうというか…これはこれで計算の上、という気もまたするのですが…

 さて、単行本の方は現在第三巻まで発売されていますが、第三巻ではトラゲンが大変なことになる一方、南方がしずめたちの協力者として登場。そして連載の方では、何とも予想していなかった方向に物語が展開していて、これは一体どこまで行ってしまうのか、いよいよ楽しみです。

(ちなみに「東亰」と言うとどうしても小野不由美先生を思い出しますが、別にこの語、小野先生の造語というわけではございません。ただ、明治十六年まで使われていたかは微妙ですが)


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