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2006.12.06

「陰陽の城 吉宗影御用」 江戸城大変!

 「吉宗影御用」シリーズ第二弾が文庫で登場、タイトルを「江戸城大変」から「陰陽の城」に改め、老虎・植畠喜平の跡を継いだ四ツ目屋呆庵が、幕府を壊滅させんとする魔人が引き起こした江戸城大変に挑みます。

 表の顔は薬屋、裏の顔は若き田沼意次の相談役として暮らす呆庵を襲うようになった夜毎の悪夢。海の向こうへ去った師からの警告とも取れるその悪夢を裏付けるかのように、意次は江戸城で続発する怪事について語ります。幕府の威信の象徴であり、徳川将軍家の最後の砦である江戸城内で日夜怪事が起こるということは、これすなわち幕府の権威が侵されているということ。
 悪夢のこともあり、容易ならざる事態と探索に乗り出す呆庵ですが、謎の敵の精神攻撃を受け、己の身までもが危機に陥ることになります。更に、影御用の同志であるが奇怪な女に誘われて姿を消し、いよいよ事件は混迷の度合いを深めます。師にも匹敵する気の力を持つ謎の老人・無斎の協力を得て、敵の正体を知った呆庵ですが、既に敵の陰謀は成就寸前、遂に呆庵は陰陽の魔界と化した江戸城内に突入しますが――

 と、シリーズ第二弾ではありますが、主人公は前作の植畠喜平に替わり、その弟子・呆庵が務める本作。主役交代が物語をパワーダウンさせるのではないかと少し心配はしましたが、敵の陰謀のスケール…というか手段が非常に面白く、それは杞憂でありました。
 敵の正体や陰謀の内容についてはここでは伏せますが、江戸城自体を人体に見立てて…という仕掛けは、これはうまいアイディアだと感心いたしました。
 また、終盤、呆庵が江戸城内に突入してから見ることとなる狂宴の描写もなかなかに迫力があり、敵の陰謀の異常性を際だたせていたかと思います。

 もちろん、必ずしも絶賛できる部分ばかりではなく、例えば敵周辺の描写が、如何にも往年の「超」伝奇小説チックであまり新味が感じられなかったのは残念なところ。
 また、残念といえば、終盤の江戸城内が奇怪に変貌していく辺りは、もう少し時系列を追って書けば、さらに緊急事態の緊迫感が増しただろうにと思います(これに対する幕閣の対抗手段もなかなか面白かっただけに)。

 とはいえ、この辺りは個人の感じ方も大きいかも知れません。主人公自体の正体の謎を追うという第一作とはがらりと趣向を変えて描かれる本作は、単純な続編ものではない楽しさがありますし、上記の通り、敵の陰謀(の描写)はユニークで得難いものでありました。
 また、少しネタバレになりますが、呆庵が、全く偶然に事件に巻き込まれたかに見えながらも、そこに一つの必然があることを示したラストには、シリーズに一本背骨を通すという意味からも感心しました。

 本シリーズは三部作ということで、残るはあと一冊。こちらもおそらく文庫化されることでしょう。それを楽しみに待ちたいと思います。
 なお、本作は単行本時には「江戸城大変」のタイトルで刊行されていましたが、それから文庫化に当たって大幅に加筆修正されているとのこと。機会があれば、単行本の方にも当たってみたいと考えているところです。

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