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2006.12.15

最後の「戦国忍法秘録 五右衛門」ほか

 あまりに突然の石川賢先生の死から約一ヶ月。ファンにとって気がかりだったのは、「コミック乱ツインズ」誌で連載中だった「戦国忍法秘録 五右衛門」の行方でしたが――最新号には、先生の絶筆となった最新最終話が掲載されておりました。

 秀吉・家康・光秀の三巨頭会談に乱入し、城を破壊しながら暴れ回る石川五右衛門と服部半蔵の前に、果心居士出現――というのが前回のヒキでありました。
 それを受けての今回は、果心居士と五右衛門たちの対決がメイン。実は不吉な予感を覚えていたねねに招かれて現れた果心居士、つまりは秀吉方の人間であって、五右衛門たちの敵ということになります。

 見かけは剽げた男ながら、その幻術の力は絶大。秀吉配下の忍びたちをあたるを幸いなぎ倒す五右衛門と半蔵(半蔵が予想以上に強くて、二人の活躍にはちょっとリョウとハヤトの面影を見てしまいましたよ)の前に現れた果心は、五右衛門には自分の体から蟲がはい出す幻覚を、半蔵には斬れば斬るほど果心が増えていく幻覚を見せて苦しめます。

 そして幻覚に苦しむ五右衛門が、救いを求めて飛び込んだのは、城外で用意されていた――油の煮立った大釜! 五右衛門が釜ゆで、というのは言うまでもなく史実での五右衛門の最期ですが、ここで釜ゆでが登場するとは、心憎いセンスです。
 さしもの五右衛門も、いささかどころでなく時期は早いものの史実同様釜の中でお陀仏か? と思いきや、常識はずれのパワーで脱出。さらに自分の何倍もある大釜を持ち上げて果心・秀吉たちめがけてぶん投げたおかげで城は大崩壊、その隙に半蔵ともども逃げ延びるのでした。

 そして大火傷を負った五右衛門が着物を脱いだその背中に浮かび上がっていたのは! というところで以下次号――で読めることは永遠に無くなってしまったのですが…

 しかし、ご覧いただければ何となくわかっていただけるかと思いますが、不慮の死であったとはいえ、最後の最後まで、石川先生は石川先生のまま、石川作品は石川作品のままであって――その痛快なまでのアクションセンスは健在でありました。
 そしてラスト一ページは、これは是非ご自分の目で確かめていただきたいのですが実に印象的な絵。物語の流れ的に一区切り、という感じだったこともあり、ここで物語が中絶していても、不思議に違和感は感じませんでした。

 伝奇物語は、終わらないのが一番面白い、という言には、個人的には肯きかねるものではありますが、本作に限っては、決して意図したものではないとはいえ、その永遠の中絶が、伝奇物語としての強い輝きを与えてくれたという感があります。
 最後の作品がこの作品のこの回で良かった…というのはもちろん負け惜しみではありますが、しかし半分くらいは、ファンとして正直な気持ちであります。
 改めて、石川賢先生に、心よりの感謝と、追悼の想いを捧げる次第です。


 なお、同じ最終回でもこちらは円満な完結ですが、同じ号では岡村賢二先生の「真田十勇士」が堂々完結。
 十勇士もののマスターピースである、笹沢左保先生の決して少ない分量ではない原作を、余すところなく劇画化してみせた業前には、心から敬意を評します。ベタではありますが、やはりラストの幸村&十勇士の見開きにはグッとくるものがありました。
 これで「乱ツインズ」で読む漫画がだいぶなくなってしまったな…と思ったら、岡村先生は早くも次号から新作の連載を開始。しかも今度は吉川英治先生の、あの「私本太平記」を劇画化! これは非常に楽しみであります。


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