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2006.12.10

「白浪五人男 徳川の埋蔵金」(再録)

 「正義とは自分に恥じずに生きること」とうそぶき、一味を率いて東海道を荒らし回る義賊・日本左衛門。向かうところ敵なしとなった日常に倦んでいた彼の前に現れた弁天小僧菊之助は、家康が遺したという埋蔵金三千万両の鍵を握っていた。幕府を敵に回しての戦いに俄然燃える日本左衛門は、幾多の犠牲を払いつつも、ついに家康の秘宝を目の当たりにするが――

 本を読んでいて、自分の目が信じられなくなることはまれにあるのですが、この本ほど読んでいる最中に自分の正気を疑った本はありませんでした。上のあらすじにあるとおり、基本的に設定はまあ普通のピカレスク・ロマン(日本左衛門が波動拳使ったりしますが)。展開的にもまあ可もなく不可もなく、大盗としての自分を演出する自らの姿に自嘲の念を抱いているという左衛門のキャラクター造形がこの作品の面白さであり、かつ足かせでもあるな、などとの感想を抱いていたのですが…終盤大暴走。

 家康の秘宝の正体が現れてからの展開は、どんなに読解力と洞察力のある人間でも絶対予想がつかないであろう、ある意味神の領域。まさかピカレスク・ロマンが○○小説になろうとは――最初からそういうノリであればこれほどは驚かなかったのですが、上に述べたように大衆娯楽時代小説としてはまあ普通の作品だっただけに、それまでとのギャップに凄まじい衝撃を受けました。実はこの本の後半は真っ白で、私が見たい話を勝手に妄想しているんじゃないか、今日本を閉じて明日開いてみたら別の内容に変わっているんじゃないか…という感じの。

 それでも何とか話は収束して史実通りの結末に落ち着いて、ラストはまあ形を整えたかな…と思ったところに、またとてつもないどんでん返しが待ち受けていて、油断していた出会い頭にボディブローを食ったような気分でページを閉じました。

 恥ずかしながらこの作者の作品を読んだのはこれが初めてなのですが、いつもこんな感じなんでしょうか…んなわけないか。何はともあれ、真面目な時代小説ファンであれば真っ赤になって怒り出しそうな作品ではありますが、私のサイトを面白がってくれるような方は、笑って(あるいは唖然としつつ)楽しんでいただけるのではないでしょうか。個人的には殿堂入りの一冊。


 …にしても(鳴海丈の魔狼次シリーズ読んだ時にも思いましたが)この手の小説の中の男色シーンって、ニーズあるんですかねえ。


「白浪五人男 徳川の埋蔵金」(鈴木輝一郎 双葉文庫) Amazon bk1

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コメント

 鈴木さんはこの手のものもあります。ゴジラやガメラが出てきたり(笑)

投稿: らんせ | 2006.12.10 16:15

らんせ様:
いやー本当に驚きましたよ。ノーモーションからの変化球だったので…でも大好きです。
というか、ゴジラやガメラって凄く気になります。

投稿: 三田主水 | 2006.12.10 23:14

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