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2006.12.11

「踊れ!いんど屋敷 古田新太之丞東海道五十三次地獄旅」 おバカ全開!

 一度告知されたDVD化が突然流れて、もう一生観ることができないのかと思っていたこの作品、運がよいことにNHK-BSで放映された時のビデオを観ることができました。内容的だけであれば戯曲が出版されているので把握できるのですが、いや、音と動きがつくとつかないでは、当たり前ながら大違い。思う存分バカでバカでバカな(もちろん褒め言葉)世界を楽しむことができました。

 大江戸三馬鹿男こと三人の泥棒稼業の古田新太之丞・からくり戯衛門・ふぃっとねす小僧半次が、悪徳商人・曇屋丸兵衛の元から盗み出した密書。南蛮歌舞伎一座の阿国から、当の密書探しを依頼された新太之丞たちは、大坂にその密書があると口から出任せを言って彼女たちと東海道の旅に出ます。
 が、その密書に隠されていたのは、実は幕府転覆の大陰謀。かくて、密書を狙い、丸兵衛に雇われた闇の死売人チーム、風魔忍者一党、天草四郎の忘れ形見の三姉妹に、実は生きていた由比正雪らが、新太之丞たちの前に立ち塞がります。果たして密書の秘密とは? 丸兵衛と陰謀を弄する仮面侍Xの正体は? そして幾度も新太之丞たちの窮地を救う謎のでか顔侍・糸引納豆之介とは? 江戸から大坂、果ては地獄まで股に掛けて、破天荒な大冒険活劇が繰り広げられます。

 …と、もっともらしいストーリーはあるのですが、開幕以降ひたすら展開されるのは、新感線のオールスターが次から次へと飛び出し、俺が俺が私が私がでバカの限りを尽くすという、いい意味で本当にしょーもない世界。何せ主役の新太之丞からして、初登場の時点から股間に天狗の面一丁のはだか侍スタイル。以降、脳天気で享楽的でそして痛快なヒーロー(?)を、実に気持ちよさそうに演じています。
 からくり戯衛門役の粟根さんは、いつもながらのエセ冷徹眼鏡ですが、意外な過去を抱えた実は熱いキャラクター。でもクライマックスで変態ぶりが露呈されて台無しに。また、謎の風来坊・糸引納豆之介は、池田成志さんが演じているにしては珍しく結構カッコイイところもあるキャラで(まあ、それはそれでいつもながらにうさんくさいんですが)、ラストで明かされる正体には大いに驚かされました。…というか、登場した時からヒントが提示されていたのに正体に気づかなかったことを、伝奇者として大いに恥じる。

 このように、一人一人のキャラクターについて語っていくとキリがないのですが、もう一人えらく印象に残ったのが、逆木圭一郎演じる由比正雪です。もちろんあの由比正雪、慶安の変で死んだはずの正雪なのですが、これがもう本作屈指の変態。初お目見えからして、井上陽水の「ホテルリバーサイド」(に限りなく近い曲)に乗って、お付きの呪寝美坐成丸(じゅねびざあるまる)と妖しく絡み合いつつ登場という、イヤすぎるインパクトで、その後も事ある毎に脱ぐ。出番の度に脱ぐ。しかも自称田村正和に似ているとほざく。何だかもう色々と罪深いキャラクターですが、いや、正直なところ逆木さんのギャグを初めて面白いと思いましたよ(失礼な)。

 そしてまた、キャラに並ぶ本作の魅力が、その微妙に…いやかなりマズい音楽と歌。どっかで聞いたことがあるんだけど、微妙に音程を外してある曲が山ほど使われているのですが、外し方が微妙すぎてほとんど替え歌状態。これはマズい。マズいんだけど面白すぎる。でも本当にマズいのは、時々本当にオリジナルそのまんまの曲(さすがにインスト)が流れることで――気づいただけでも闇の死売人登場シーンに必殺の殺しテーマ連発、クライマックスの乱戦時に何故かゲッターロボのエンディング「合体!ゲッターロボ」(ところがこれがまたなぜか時代劇に合うんだ…)、さらに同じく乱戦時に「ジャンボーグA」の主題歌まで(なぜ!? いい曲だけど)、いくら何でもやり過ぎなんだけど、観ている分には違和感がないのでまあいいか(別なところで問題発生しているとは思うけど…)

 そんなこんなで、真面目に考えたら負けの世界なのですが、しかし無粋を承知で敢えて言えば、やっぱりキャラを詰め込みすぎたおかげで、個々のキャラやらガジェットの切れ味が薄まったというか、突っ込み不足になった面は否めないなあという印象を強く感じてしまったのもまた事実。こういう個性が強すぎる面々をぎゅっとまとめあげるストーリーや世界観の強さが欲しかったかな…と生意気なこと考えていたら、ラストでいきなり史実とファイヤーオンしたのでびっくりしました。ごめんなさい、やっぱり面白すぎます。

 何はともあれ、これだけ面白い芝居がDVD化されそうにないのは本当に残念。やっぱり色々とマズい曲がいけなかったのかしら…というかむしろクライマックスで登場する邪武暴魔神駄衛門(じゃんぼましんだーえもん)とデビルマン侍が、色々と版権的に厳しいアソコに怒られたのかなあと勝手に想像しています(あくまでも勝手な想像。バリンガーZ事件とかもありましたが)。
 今はただ、ビデオを観ることができた幸運に感謝するのみです。NHK-BSグッジョブ!


 ちなみに本作、オールスターキャストなのに私の大好きな橋本じゅんさんがいないと思ったら、94年版はじゅんさんが糸引納豆之介役だったのですね…orz(ちなみに私が観たのは2000年版)
 でもやっぱり納豆之介役は成志さんの方が合ってるんじゃないかなと思います。うさんくささ的な見地から。

 あと、「SHIROH」観た後にこれ観ると泣けますね。いろんな意味で。


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