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2006.12.31

「朧の森に棲む鬼」プレビュー 赤い舌が生み出す地獄絵図

 昨日、劇団☆新感線の最新作「朧の森に棲む鬼」のプレビュー公演に行って参りました。市川染五郎が徹頭徹尾純粋な悪人となってどんな世界を造り上げるのか、期待して行ったのですが…何というか、凄いものを見せられた、という気分です。

 いつともどことも知れぬ戦乱の時代、主人公ライは、弟分のキンタとともに放浪を続けるうちに、鬼が棲むという朧の森に迷い込みます。そこで三人の魔物に出会ったライは、己の命と引き替えに、王となる運命とオボロの霊力を持つ剣を手に入れることになります。魔物の予言通り、その場に現れたエイアン国の四天王の一人・ヤスマサを殺したライは、その名を騙り、エイアン国と敵対するオーエ国の長・シュテンと盟約を結びます。
 エイアンの都に入り込んだライは、今度はヤスマサの遺言を携えた部下という触れ込みでヤスマサの妻であり同じく四天王のツナに接近、その信頼を得ていく一方で、暗黒街の顔役・マダレと手を結び、力を蓄えていくことに。そしてミカドの愛人・シキブと通じたライは、謀計を重ね、四天王の一人に収まります。が、それでもなお治まることのないライの野心は、二つの国を飲み込むほどに膨れ上がって――

 というわけでジャンルで言えばピカレスク・ロマンということになるのでしょうか。原案としてシェークスピアの「リチャード三世」を根底に据えつつも、登場人物名を見ればわかるように、日本の平安時代、源頼光と四天王の物語に材を採った本作(野暮を承知で書けば、ライの名は嘘のlieと頼光の名のダブルミーニングとなっているわけですね)、ライ役の染五郎の悪役ぶりがとにかく凄まじく印象的でした。歌舞伎には「色悪」という言葉がありますが、色悪ってレベルじゃねーぞ! という人間悪の固まりのような役柄で、いい意味で共感できないキャラクターを見事に演じておりました(後半、あるキャラクターをボコボコにするシーンは素で引きましたよ…)。
 特に終盤の狂乱シーンは…人間の業といいますか、一番見たくない部分というものを凝縮した凄まじさがあって、むしろ感心すらしてしまいました。三寸不爛の赤い舌が生み出す地獄絵巻、まったく恐れ入りました。

 演じると言えば、脇を固める面子もまた好演。阿部サダヲは、いつもの無闇な勢いでライの可哀想な弟分を、ツナ役の秋山菜津子さんは、「SHIROH」の時とは全く異なる、しかし女の哀しさを漂わせるという点では同じ役柄を、それぞれきっちりと演じ切っておりました。また高田聖子さんのシキブは、ツナとは異なるベクトルの女の哀しさで場を圧しておりましたし、古田さんは素晴らしくドスの利いた(ちょっと勝新入った?)マダレ役を実に格好良く演じており、終盤はほとんど主役状態。粟根さんは…何か考えているようで何も考えてなかった最期に泣いた(´Д⊂
 ただ、シュテン役の真木よう子さんの滑舌だけは、役作りの一環なのだとは思いますが、何だか不安感がつきまとっていてちょっと気になってしまいました(しかし真木さん、すンごい頭身高くて綺麗なの)。

 また――舞台上のギミックでちょっと気になった点もあったのは事実。本作、舞台上でじゃんじゃんと本物の水を使っていて大いに感心させられるのですが、まだ芝居と水の使い方に噛み合わせが悪い部分が多く、例えば冒頭の三人の魔物の歌や台詞など、水音が強すぎてちゃんと聞こえなかったのは問題かと思います。また、ラストシーンでは思いっきり裏方さんが見えてしまったり、あるギミックの動きが悪くて絵的にだいぶまずかったり…(よく考えたら冒頭とラストでこれではかなりマズいのでは)。これは、今後の改善を強く望みます。
(も一つ、これは今回だけのトラブルだと思いますが、オオキミが断末魔でのたうち回るシーンで、スッポリとカツラが脱げるという椿事が発生。その後のシリアスなシーンの間ずっと外れていたのにみんな何ごともなかったように演技しているのには感心しました)

 と、幾つか気になる点もあったものの、総じてプレビューとは思えないほどレベルの高かった公演でありました。スタート時点でこのクオリティなのですから、これから公演を重ねていくにつれてどれだけレベルアップしてくれるのか、楽しみでなりません。終盤にもう一回見に行くので、その時にまた感想を書いてみたいと思います。


 …あと、いきなり光と水と土とか言い出すのでスサノオ噴いた。

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コメント

その他、脚本やら演出やらに感じたところは幾つかありましたが、それはもう一度観た後に書きます

投稿: 三田主水 | 2006.12.31 15:35

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