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2006.12.09

「風魔の牙 黄金の忍者」(再録)

 秀吉の元で働くこととなった江ノ市之丞と配下たちだが、かつて切腹させられたはずの家康の嫡子・信康が存命であることを知る。信康の身柄確保に向かう市之丞らだが、彼らを待っていたのは何者かに惨殺された半蔵配下の伊賀忍軍の屍のみだった。その下手人が、北条家に仕える風魔忍軍であることを知った市之丞らは、かつて今川家に仕えていた山伏忍軍と共に箱根に向かう。復讐の念に燃えて同じく箱根に向かう服部半蔵と伊賀忍軍、風魔忍軍と三つ巴の死闘を繰り広げる市之丞一行だが、その戦いの背後には恐るべき陰謀が蠢いていたのだった。

 黄金の忍者シリーズ第三作。物語のパターン的には前作に似ていて、市之丞と配下たちが、服部半蔵率いる伊賀忍軍、そして第三の忍者集団と三つ巴の争闘を繰り広げ、その背後には…という展開。
 市之丞のライバル?の左近も健在…というかあからさまに間違った方向にパワーアップして大暴れしてくれるのですが、この左近の存在がかなり物語から浮いていて(いきなりファンタジーの世界から乱入してきたという感じでしょうか)少々残念。本作単独ではなく、今後のシリーズ展開も含めて考えればいいのかもしれませんが、おそらくまっとうな時代小説ファンからは強い拒否反応が出るでしょう。終盤、電波も感じられますし。

 が、そういった聊か座りのわるい部分以外を見れば、一級の忍者ものであることも間違いない話。本作のフォーマットは、時代小説というよりもむしろアリステア・マクリーンなどの軍事冒険小説の味わいが強く感じられるもので、無理にジャンルを名付けるとすればいわば忍者冒険小説。
 軍事冒険小説と時代小説は、意外と親和性が高いにもかかわらず、そのテイストをもった時代小説は数えるほどしかないのが残念だったのですが、その溜飲を下げることができました。終盤で明かされる陰謀も、意外かつ説得力があるものでなかなかに唸らされました。

 ハードな忍者冒険小説と、その中にあるファンタジックな黄金の忍者という存在。うまく絡めてまとめていくのは難しい面もあると思いますが、今後のシリーズ展開を期待します。


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