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2006.12.08

「死への霊薬 菅原幻斎怪異事件控」 血の因果を見つめて

 菅原道真の子孫であり、今は市井にあって奇怪な事件に巻き込まれた人々の救済に当たる霊能者・菅原幻斎の活躍(というとちょっとイメージが違うかな)を描くシリーズ第二弾です。
 普段は一人気ままに暮らす幻斎ですが、祈祷所の近くを流れる神田川の流れに奇妙な影が映るとき、彼のもとに持ち込まれるのはいずれも霊やあやかしにまつわる奇妙な事件ばかり。この巻でも、冥界の女に恋した男や、土地神に封じられていた女の怨念、絵の中の女に魅せられた武士、美しい花の精に憑かれた青年などなど、常識では計り知れない霊異と因縁の物語が、彼の前に現れることとなります。

 正直なところ、ごくごく当たり前に(?)霊異の数々――霊魂やら祟りやら地獄やら神仏やらが現れる本作は、(普段伝奇ものばかり読んでいるくせに)私にはちょっと違和感があり、題材的には江戸時代等の諸国怪談・霊異譚から持ってきていることもあって、(前作同様)良くも悪くも微妙に感じられるのですが――
 しかし、それでも決してつまらないわけではなく、何となくスルスルと読めてしまうのは、陰惨な事件も少なくない中、それでも飄々と、どこか達観した空気を漂わせて一人往く幻斎の人柄によるところが大きいのかも知れません。

 御霊・菅原道真の血を引くが故に、己の血を後世に残すことを懼れ、女性には引いた立場をとり続ける幻斎ですが、そんな彼が扱う事件の多くは、受け継がれる血の因果が招くもので――しかも、男女の情愛が引き金となるもの。
 そんな事件、時に彼の力を持ってしても傍観者役にしかなれぬこともある事件に対した時、彼が見せる厳しくも優しい態度は、しかし、そんな彼の背負った因果があればこそなのでしょう。

 何だかんだと言いつつも、そんな幻斎が次に出会う事件が気にかかってしまう、そんな不思議な魅力のあるシリーズであります。


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