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2006.12.26

「SUSANOH 魔性の剣」 黄金トリオ見参!

 今から十年近く前に上演された劇団☆新感線の「SUSANOH 魔性の剣」を、ビデオで観ることができました。この作品、現在「takeru」のタイトルでコミカライズされ、このブログでも単行本が発売されるたびに紹介しているところでありますが、DVD化されていないこともあり、これまで観る機会がありませんでした。まあ、「takeru」が完結してから探しても遅くはないか、いやむしろ完結するまで観ない! と思っていたのですが、この度ビデオを見せて下さるという素晴らしい方が現れたのであっさり宗旨替えして観てしまいました。いや、観てよかった。

 舞台は遙か古代の日本(を思わせる国)。イズモノタケル、クマソノタケル、オグナノタケルの三人のタケルが、伝説の神の剣クサナギを守る蛇殻国と、この地に覇を唱えんとする天帝国の戦場で偶然顔を合わせる場面から物語は始まります。
 能天気なイズモに豪快なクマソ、寡黙冷徹なオグナと、個性も生まれ育ちも全く異なる三人が、イズモの言葉によりクサナギを求めて蛇殻国に向かうことになるのですが、そこで彼らを待ち受けていたのは裏切りと血の過酷な運命(中島かずき節全開!)。奇怪な預言者サグメの手のひらの上で踊らされるが如くいよいよ戦は激しさを増し、その果てにクマソは魔剣に取り憑かれて魔軍の長となってしまいます。唯一クサナギに抗する力を持つ真の神の剣を求め、イズモとオグナは秘境・鬼住国を目指すのですが――
 というのが物語半ばまでのあらすじ。だいぶ前の舞台とあって、舞台装置・ギミックなどは最近の舞台に比べるとさすがに見劣りする部分はあり、また、キャラやストーリー描写についても食い足りない部分が些かありますが、しかしそんなものを吹き飛ばすほどの勢いが、当時の新感線にはありました。前年の97年に快作「髑髏城の七人」でもメインを張った古田新太・橋本じゅん・粟根まことの黄金トリオが、本作では三人のタケルを演じて大活躍。

 能天気で女好きで、しかし決めるところはバッチリ決めるイズモは、もちろん古田新太ならではの痛快なキャラクター。実は他の二人に比べると、脚本・演出上、キャラの陰影という点では突っ込みが足りない部分もあるのですが、それを補って余りあるハマりぶりでした。また、前半は単純ながら豪快で気のいい漢、そして後半では魔剣に憑かれ血に飢えた狂戦士と化すクマソという振りの広い役を、橋本じゅんはお得意の目ン玉ヒン剥いた表情で熱演。これァもう、じゅんさん以外演じられないハマり役と申せましょう。
 この二人が対決するクライマックスは、一撃が命取りになる真剣勝負の緊迫感が横溢、チャンバラ巧者の二人だけに今日日TVや映画でも滅多に見られないような白熱した殺陣を堪能させていただきました。

 が――この二人以上に爆発しているのが、オグナを演じる粟根まことの、アニメや漫画から抜け出してきたようなクールな美形キャラぶり。例えるなら、気になる女の子から誕生会の招待状をもらったのに、それをその子の目の前でひっちゃぶきつつ「お前を殺す」とか耳打ちしちゃいそうな?(わかんねえ)
 物語中でもオグナは、登場した時には、人を表情一つ変えずに殺す冷徹な男ながら、ある事件をきっかけに人を殺すことができなくなってしまいます。そしてまた、戦いの中で明かされるその正体は実は…! と、おいしいところ押さえまくりのキャラクターなのですが、冷徹なだけに感情のわずかな動きも重要な役柄を粟根氏は好演。見るからに大変そうな長物を使っての殺陣も見事で、喧嘩が強くて男前のそのキャラは、前年の「髑髏城」の無界屋蘭兵衛に続き強烈なインパクトがあって、女性ファンが多いというのも頷けます。

 そんな黄金トリオの活劇が、冒頭からラストまで一気呵成に繰り広げられる本作。冒頭のちょっとしたシーンがこんなところで活きてくるなんて! 的展開もクライマックスにはあり、そしてまたラストに登場するもう一つのタケルの名というサプライズもありと、最初から最後まで爽快なアクション活劇を味合わせていただきました。
 上記の通り、決して百点満点ではなく、残念な点もあるのですが、脂の乗り切った役者のパワーはそれを些末なことに思わせるほどのものがありました。やはり舞台は生き物、なのでしょう。

 冒頭に述べたとおり、いまだDVD化されていない本作ですが、来年、イーオシバイから新感線の過去作を集めたDVDボックスが発売されるとのこと。その中には間違いなく本作も収録されることでしょう。その時にまた、本作を見返してみたいものです。

 ちなみに「takeru」(まだ完結していませんが)と本作を見比べてみると、本作で見ていて気になっていた点がきっちりフォローされていることに驚かされました。その辺りについては、「takeru」完結の際に触れたいと思いますが、いま再演するとこうなるんだろうなあ…と考えさせられたことです。


関連記事
 「takeru-SUSANOH~魔性の剣より-」第1巻 三人のタケル、ここに出逢う
 「takeru-SUSANOH~魔性の剣より-」第2巻 魔剣クサナギ覚醒す
 「takeru-SUSANOH~魔性の剣より-」第三巻 神剣めざめる

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