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2007.01.31

「ムーン・ドラゴン」 魂魄の中の龍を釣る

 結構意外なところでお名前を拝見することも少なくない小沢章友先生ですが、本作は児童向け作品。タイトルは横文字ですが、平安時代末期を舞台とした、歴とした時代ファンタジーであります。

 主人公・月丸は、戦乱で親を失い、比叡山で僧として修行してきた少年。しかし、武士として名を上げ、美しい姫君と結ばれることを夢見る彼は、比叡山を抜け出して都に向かいます。時あたかも平家がこの世の春を謳歌していた頃、平家の禿となっていた旧友と再会した月丸は、連れて行かれた先で美しい舞い女・蘭に出会い、一目で恋に落ちます。
 が、その日の食にも事欠く月丸にとって、彼女は高嶺の花。かといって禿となって町の人をいたぶるのも性に合わず…と悩む彼の前に現れたのは、泥門と名乗る奇怪な僧侶。後白河法皇の夢の中に潜む龍を釣って、天下一の力を手に入れてみぬかと、奇ッ怪なことを唆す泥門に、果たして月丸は…

 と、いかにも小沢先生らしい奇想が本作の魅力。時の権力者の夢の中の龍と、その龍を釣り上げる力を持つ少年という、この題材の妙には、ただただ感心するのみです。何やら、作者の土御門クロニクル第一作たる「夢魔の森」に通じる空気もあり、ファンとしては嬉しい限りです。

 が、一個の作品としてみると、正直なところ残念な部分も多い本作。
 なんと言っても、悩める少年・月丸が、若さ故とはいえあまりに無計画で、周囲の状況に流されるままに物語が展開してしまうのが非常に気になったところで(特に、終盤の蘭救出のくだりはその最たるものかと)、少年の成長物語としても、食い足りない部分がありました。

 即身成仏を図った僧の末路などに見られるような、いかにも作者らしい、何とも不可思議でどこかやるせない味わいの世界描写は魅力的ですし、その中でもがきながら歩を進めていく少年の姿は、悪くはないのですが…

 もちろんこれはファンゆえの必要以上に厳しい見方かもしれませんが、「夢の中の龍を釣る」という題材が非常に魅力的であっただけに、色々ともったいなく感じてしまった次第です。


「ムーン・ドラゴン」(小沢章友 理論社) Amazon bk1

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