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2007.01.14

「人斬り鬼門 魔都脱出」(再録)

 赤子の頃手に葵の葉を持って捨てられていたため、将軍家斉に戯れに「鬼門」と名付けられ、寛永寺の墓守として暮らす孤独な青年・鬼門。江戸に直訴に来ていたところを伊賀者に襲われた大原幽学の娘を救ったことから江戸町奉行・遠山金四郎の怒りを買い、江戸所払とされた鬼門は、己とうり二つの容貌を持つという平手造酒を求めて、下総国に向かう。天保水滸伝の世界を漂泊する鬼門は、ついに大利根河原で平手造酒と対峙するが…。

 私が密かにひいきにしている加野厚志先生の新刊(といっても過去作の改題加筆)。
 加野先生の小説は、地の文・台詞ともに独特の気障ったらしさというか奇妙なリズム感があるのですが、それはこの作品でも健在。一歩間違えると鼻につきかねない文体だけれども、自分のアイデンティティを求めて彷徨う孤剣士には、よく似合っていました。伝奇風味もほどよくまぶしてあって、このクラスの娯楽時代小説(廣済堂文庫とか集英社文庫とかこのM文庫とかでよく出ている作品)として合格点でした。

 が、序盤の展開があまりに急すぎて、一瞬「これって一巻目じゃないんだっけ!?」と思ってしまうような部分があったのが難と言えば難。特に鬼門の師匠がいきなり正体を現すところなど、上記の文体のためもあって、いい具合に電波を発していました。いや、個人的には面白かったんですが、結局その辺りの伏線が一巻目ではまるで回収されていないので、ぜひ二巻以降も出して欲しいものです。


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