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2007.01.26

「ガゴゼ」第二巻 大鬼の辿り着く先は何処に

 室町前期を舞台とした伝奇妖怪コミック「ガゴゼ」の単行本第二巻が発売されました。力を失った大鬼ガゴゼを襲う運命は大きく変転し、ガゴゼの周囲の人間・妖怪たちを巻き込んでいよいよもって波瀾万丈の展開となってきました。

 餓えに任せて少女・鬼無砂の愛犬を喰らってしまったものの、動物は食物としか見れないため、彼女の哀しみが理解できないガゴゼ。そんなある日、妖怪たちに襲われ、その身を引き裂かれたガゴゼは、おぞましい姿に変容して敵を倒すも、鬼無砂にその姿を見られた哀しみから彼女の元を離れ、慣れ親しんだ生育の地を訪れます。が、そこにも異変が生じていたことを知ったガゴゼは、己を封じた陰陽師・土御門有盛を求めて京に向かいます。
 一方、その有盛は、各地に散ったガゴゼの残骸を求めて旅立ち、そこからガゴゼの妖気を手に入れていくことに。また、かつて(名目上とは言え)ガゴゼ討伐の総大将だった足利義嗣は、父・義満の命で強引に出家させられるところを逃走するもガゴゼを慕う老妖狼に捕らえられて…と、ガゴゼを巡る人々の運命も様々に動き始めます。

 地獄風味は相変わらずの本作、冒頭のガゴゼを襲う水妖たちとの戦いのシーンから、目を覆わんばかりのおぞましい人外の死闘が描かれます。以前、第一巻の感想では「日野日出志先生の絵柄を一見可愛らしくしたような絵柄」と書きましたが、むしろ中村嘉宏氏の絵にグロをぶち込んだような絵柄と言うべきでしょうか、その緻密な描き込み様は、この世の者ならざるガゴゼや妖怪たちに、凄まじいまでの存在感を与えて余りあるものがあります。
(特に変容したガゴゼの姿は、実はヨグ=ソトースの御子でした、と言われても信じるほどの怪物ぶりでありました)

 正直なところ、良くも悪くも先の読めない展開の本作。ガゴゼがこれから辿る運命も、足利義満の真意も、反義満派に接近し一人暗躍する有盛の真の狙いも、全てが謎のままではありますが、今回ガゴゼの生誕の地とも言える場所が登場したことにより、それまで全く意識の範疇外にあった「そもそもガゴゼとは何なのか」という点について、俄然興味が湧いて参りました。
 また、これだけ先が読めないと、一歩間違えると、読者の物語自体に対する興趣や興味も失われがちになりますが、そこを上記の絵柄のインパクトで補っていると感じられる部分もあり、その点については漫画作品として好感が持てるところであります。

 一度は人間的な感情に目覚めつつあるように見えたガゴゼではありますが、まだまだそんな生やさしい存在ではないとも思わせるガゴゼのキャラクター。この巻のラストでは、奇しき運命の悪戯から、思わぬ所でガゴゼと義嗣が対面、ここでのガゴゼの行動が、物語的にも、キャラクター的にも今後の展開に大きな意味を持つのではないか、ガゴゼの辿り着く先が少し見えてくるのではないかと思いますが…さて。


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