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2007.01.27

「ぬばたま一休 -紅紫の契-」 原作の空気感を描き出した哉井一休

 いまや朝松健先生の代表作である「ぬばたま一休」シリーズ、その第一作である「紅紫の契」が、「少年シリウス」誌上で哉井涼氏により漫画化されました。
 このシリーズが漫画化されたのは今回が初めて、果たして如何なる作品に相成りますか、と楽しみにしておりましたが、なるほどこのような描き方になるのか…と感心いたしました。

 失意に沈んだ歌人のもとに現れ、夜毎契りを結ぶ美女の怪を描いた本作は、その物語上、艶めいた空気感が必要となりますが、哉井氏の絵は、それにきちんと応えて、少ないページ数の中で、下品にならない艶っぽさというものを描き出していたと感じました。
 そして――この物語で描かれた人外の恋は、一休の調伏により終わりを告げるわけですが、妖が消える際に若き歌人が、そして一休が一瞬浮かべた切ない表情は、この物語を単なる妖怪退治ものに留まらない余韻あるものとしており、その点には大いに頷かされるものがあります。
 また、表情と言えば、ラストの一休の表情が、物語中の厳しいイメージと裏腹な実に茶目っ気たっぷりなものとして描かれていましたが、これは朝松一休の持つ多面的なキャラクター性の現れと解してもいいのかもしれません。

 もっとも、説明的な台詞が多すぎると感じさせられる点はあり、そこは漫画として見た場合はどうかと感じましたのも正直なところですが、そこは今後の経験が解決してくれるでしょう。
 「ぬばたま一休」シリーズは、相当にバラエティ豊かな内容であり、時にグロあり、時にアクションありとなっている中で、本作の原作は比較的おとなしい部類に入るもの。その原作の味わいを絵として活かしてみせた哉井氏がシリーズの他の作品を描くとき、どのような姿となるのか…これはなかなかに興味深いことであります。
 次の哉井一休との出会いを楽しみに待ちたいと思います。


「ぬばたま一休 -紅紫の契-」(哉井涼&朝松健 「少年シリウス」2007年3月号掲載)

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