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2007.01.08

「陰陽師 鬼一法眼 駕篭の鳥之巻」 駕篭の鳥二羽の運命は

 「陰陽師 鬼一法眼」もいよいよ終盤、第六巻のこの「駕篭の鳥之巻」では、鎌倉第三代将軍に就任した実朝を中心に、幕府の主導権を巡る人魔入り乱れての争いが描かれます。

 この巻の実質上の主人公…というか物語の中心となるのは、源実朝その人。彼の将軍就任から物語は始まり、そして彼の周囲の者たちが歴史を動かしていくこととなりますが――しかしほとんど傀儡である彼自身にその流れを変えることはできず、できるのはただ眺めているのみ。副題通り、駕篭の鳥でしかなく、彼自身が、本作の中でも数少ない心優しく常識的な人間だけに、より痛ましく感じられます(妻である皇族出身の祥子との幼い触れ合いのシーンがまた切ないのです)。

 こちらが歴史の表とすれば、裏である鬼一法眼の周囲にも大きな動きが。いよいよこれまで遠くより指令を出すだけであった法眼の上司たる安倍泰俊が、遂に鎌倉にその姿を現します。
 泰俊の目的は、京の既存の陰陽寮の権威に邪魔されぬ、己のみの権威のため、鎌倉の地に陰陽寮を作ること。法眼も、そもそもはその地盤固めのために送り込まれたのですが、いよいよ頃合い良しとして、泰俊が乗り込んできたというわけです。
 そしてここにもう一つの「駕篭の鳥」が。かつて泰俊が懸想しながらも、法眼の方に想いを寄せ、それが拒まれたために自ら命を絶った女性――法眼の心の重荷となり続けているその女性の魂を封じた鷺を、泰俊は己の式神として使役していたのでした。
 果たしてこちらの駕篭の鳥の運命が――すなわち法眼と泰俊の確執のゆくえが――どうなることか、気になるところです。

 正直なところ、相変わらず良くも悪くも(後者の方が大きいように思いますが…)淡々と進んでいく物語運びはちょっとなあ…と思わざるを得ませんが、泣いても笑ってもあと一巻。
 実朝がどのような運命を辿ったか、そしてその後の鎌倉幕府の権力の行方は、日本史に触れたことのある者であれば誰もが知ることではありますが、さてその裏側で鬼一法眼がどのような役割を果たすこととなるのか。ここまでつきあったことですし、最後まで見届けようと思います。


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