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2007.02.24

「魔界転生 聖者の行進」(再録)

 まっとうな「魔界転生」ファンを大いに嘆かせていたので、ゲテモノ伝奇好きとしては果たしてどんなものかと半ば楽しみに半ばハラハラしながら読んでみましたが、それなりに楽しめる作品でした。…十兵衛、二十歳くらい年齢間違えてるだろ、という点(と後で触れる点)に慣れさえすれば。

 個人的に感心したのは、十兵衛と四郎の関係の描き方。四郎が何故何のためにこの世に復活したのか、そして何故自分が狙われるのかほとんどわからぬまま闘いながらも、四郎の心の中の悲しみと嘆きを感じ取り、赦しとしての死を与えようとする十兵衛。幕府を滅ぼすために蠢きながらも、望んでいなかった復活による生への諦念と嫌悪の念を心に秘め、その中で出会った十兵衛の強さに畏怖と救いの象徴としての天主の姿を見る四郎。この「魔界転生」は、解り合っているようでいて全く通じ合っていない二人を通して描かれた赦しと救いの物語なのかもしれません。

 …が、どうにも我慢できない点が一つ。アクションシーンの描写が拙いというか、何やってるか全然わからん! もちろん、「何か凄いことが起きている」ということを示すために、わざと粗く描いているのかも知らず(何せこの作者の作品を読むのは初めてなもので)、お前が古い読み手なんだよ、と言われればそれまでかもしれませんが、やっぱり何が起きているのかパッと見でわからないのは漫画としてどうよ、と正直なところ私は思います(十兵衛vs武蔵なんて何やってるかしばらくわかりませんでした)。

 それにしても、(個々の作品の在り方とは別に)いつも感心するのは、原作が発表されて以来、様々な形で発表された各バージョンの「魔界転生」の、そのそれぞれがそれぞれに“魔界転生”というもの(作品、概念etc.)を咀嚼して独自の作品を作り出しているということ。それぞれの作品を生み出すだけの可能性というものが、「魔界転生」という作品には秘められているのでしょう。


「魔界転生 聖者の行進」(九後奈緒子&山田風太郎 角川書店あすかコミックスDX) Amazon bk1

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