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2007.02.14

「天保異聞 妖奇士」 説十八「漂泊者の楽園」

 漢神のないニナイに驚く往壓らの前から、ニナイと妖夷・於偶は姿を消す。一方、小笠原らの働きで山崎屋による鳥居襲撃は失敗。小笠原に捕らえられた米吉は、山崎屋で飼われていた妖夷・涙孥が、ニナイと於偶の間の子と語る。ニナイは、自ら於偶を喚び出して異界に消え、後に涙孥を現世に産み落としたのだ。その涙孥を求めて小笠原邸を襲撃する山崎屋の用心棒たち。混乱の中で山崎屋は於偶に殺され、異界の鬼と化したニナイと於偶も、アビの神火に焼かれるのだった。そしてアビはその場に現れた山の民たちに涙孥を託し、自らは街に残ることを選択するのだった。


○鳥居襲撃にあたり、山崎屋の配置を予測する狂斎。相変わらずの名探偵ぶりですが、無神経な言動も相変わらず。アトルは山の民への同情を口にしますが、「山の民も機の民も、たまたまそこに生まれて、ただ生きるのに必死なだけだ」というマスラオの言葉はいきなり結論のような気がします。

○宰蔵のからくり大活躍。不思議な蝶のようなものを操り、強烈な光を放って妖夷を消すようですが。そこに乱入してくる鳥居様。口上がノリノリです。そして奇士一行の前に現れたソテさんは、妖夷・涙孥が人間と妖夷の間の子と衝撃発言。さらに自分も生んだことがあると衝撃発言その二を。日光編の描写であるいは…と思いましたが、改めて言われるとインパクトがあります

○涙孥がニナイと妖夷の間の子と言われて声を荒げるアビ。そりゃあ、このナマコチックなのが自分の甥っ子(姪っ子?)と言われれば…そしてテレホマン妖夷/´Д`;:::\は義理のお兄さん。そして前回に引き続き、米吉らとアビの過去の物語が。自棄になってアビに襲いかかる米吉ら逃散農民を見たニナイは、妖夷を呼び出して農民たちを殺し、妖夷と共に異界に去っていきます。なるほど、米吉の仲間がどうなったのか、前回微妙にぼかされていましたが、こういうことでしたか。

○往壓が漢神を調べ、小笠原様が解説するというのはナイスコンビ。於偶の名は人に似せて作った人形の意と小笠原様は語りますが…つまりはニナイが妖夷を作った? どうせならもう少し格好良いのを作ればいいのに、私の脳内でニナイ姉さん絵心なかった説浮上。そしてその於偶は、涙孥が傷つけられると出現するということで「食べるだけなら平気ですから、いっそ飼いますか」と不謹慎発言をして小笠原様に睨まれるえどげん。しかし、傷つけるのはダメで食べるのはOKというのはよく考えれば不思議な話であります

○涙孥を求めて小笠原邸を襲う山崎屋の用心棒たち。物騒な得物を持っているとはいえ結局は山の民ワナビー、実戦経験では当代一の奇士たちには敵うべくもありませんが、小笠原様は彼らを斬りつつ、自分はこのような境涯の者たちをこそ救おうとしていたのではないのかと自問自答。お頭らしいっちゃあらしい。

○そんな中、用心棒別働隊の働きで米吉は涙孥ともども逃走。それを待ちかまえていた山崎屋ですが、米吉は涙孥引き渡しを拒否します。そこにアビも追いついて混乱はピークに。アビは、山の民は国津神の末裔などではない、俘囚(!)の末裔だと説得しようとしますが、自分が特別な存在だと思いこみたい山崎屋は聞く耳持たず。文字が刻まれた甲骨(前々回に登場)を持ち出し、これはニナイの真の名が記されていると言い出します。

○涙孥を奪った山崎屋は古事記の一節を口にしつつ、黄泉戸喫よろしくまるかじりといきますが…。黄泉戸喫は、大雑把に言えば黄泉の国のものを食べた者はそちらの住人になってしまうというものですが、黄泉の国=異界=神の国という連想が働いて、神様のもの食べてる自分も神様、という風に考えたのでしょうが…食べ方が悪かったのか、出現した於偶にぬっ殺されます。

○於偶の腹の異界に引きずり込まれた先でアビを待っていたのはニナイ。「山で一番強かったお前と、私は一緒になりたかった」などとさりげなく大変なことを言いつつ、アビも異界の住人になれと勧めます。ここで判明した異界のルールは以下の二つ。
・異界に住むには、妖夷と結ばれなくてはならない
・妖夷は異界に留まれない
…異界に住むために、異界に留まれない妖夷と結ばれなくてはならないというのはどうなんだろうか。そもそも、妖夷は異界の存在ではない?

○厭な感じで誘われるアビを助けに異界に乗り込んできたのは往壓。異界恐怖症はいつの間に克服したのか…というのはさておき、山崎屋が持っていた甲骨の中からニナイの漢神「異」を取り出します。「異」とは鬼の顔をした者が両手を挙げている姿。「この世で懸命に生きる人間を迷わす、それが鬼ってんだ!」とカッコイイ啖呵を切って漢神を叩きつけますが、昔迷いまくっていたのが嘘のようです。いや、迷いまくったからこそそれを煽る奴が許せないのか

○そして「神火」をまとったアビは異界から飛び出して於偶を粉砕。アビの対妖夷戦初勝利(豊川狐の駕籠はカウント外)は、義理の兄というのが何とも。そしてニナイは共に滅んだのか、はたまた異界に残ったのか…

○混乱の中、涙孥を持ち逃げした米吉と仲間たちを待っていたのは南町奉行所の弓隊の一斉射撃。結局山の民にはなれず、無惨に屍を晒した米吉たちを見下ろすのは、本物の山の民…彼らに涙孥と、米吉の武器を形見として託し、アビは奇士として残ることを選びます。涙孥を指したアビの言葉「あれは…ニナイがこの世にかけた呪いだ」が強く印象に残ります。

○俺はもう山の民でも何でもないと語るアビに「お前は山の民さ。例え古き民が一人残らず消えても、お前だけは本当の山の民さ」と答える往壓。この世の軛の外で彷徨い続ける者が古き民だとしたら、その古き民からも外れて流離うアビこそが真の山の民、とでも言ったらよいのでしょうか。名優二人ならではの、重く味わい深い結末でありました。


 何だかもう自分でもうんざりするくらい長くなってしまった今回の紹介ですが、こうしてみると情報量が本当に多いですね。そんな今回の内容を無理矢理一言で表せば――みんな言っていることなので自分も言うのは癪ですが――「隣りの芝は青い」ということになりましょうか。山崎屋、米吉、ニナイそれぞれが別々の方向を見つつ、それぞれの「ここではないどこか」を求めるという想いが、異界の存在により狂わされていく様が(その意味ではニナイもまた「異界の鬼」に狂わされた者ではあります)、重く切なく印象に残ります。
 月並みな考えではありますし、無責任でもありますが、結局は「いまいるここ」を受け容れて、より良く生きていくことしかないのかもしれません。それが永遠に彷徨い流離い続けることであっても。

 一方、ネタ的に色々と心配だった山の民ネタは、アビの「俘囚」の一言でとりあえず解決(?)。俘囚については、こちらのブログで大変わかりやすく解説されていますが、山の民(山の者、サンカetc.)同様、「これ」という結論づけることはやはり難しい存在ではあります。今回のエピソードでは、その辺りを「真実どうであるか」と同時に「それをどう考えるか」という視点から捉えていて、その二つの視点の相違が悲劇を生んだと言えるかもしれません。

 また、今回、妖しい魅力でニナイを演じられた東山麻美さんは、本作とメインライターが同じ「轟轟戦隊ボウケンジャー」に俳優として出演されていました。異世界の妖魔の女性で人間の男性と禁断の恋に落ちて一子を残すという、ニナイとはある意味正反対の設定だったのがちょっと面白いですね。そちらでは子供はイケメンヒーローでしたが…

 そして次回、往壓の名を持つ者が三人登場。しかもそのうちの一人は少年時代の土方歳三…!? もうこうなったら後のことは考えずにロケットでつきぬけて欲しいですね。最後まで見届けます。


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