« 今日の小ネタ 伊賀対甲賀勃発 | トップページ | 「天保異聞 妖奇士」 説十九「三人往壓」 »

2007.02.18

「明楽と孫蔵」(再録)

 時は幕末。京の倒幕勢力は、幕府の権威を失墜させ世を混乱させるために、江戸に次々と邪悪な怪剣士たちを送り込んだ。餓狼・狂犬の如きその一党に苦しめられる無辜の人々…だがここに、彼らを救うために立ち上がった男がいた。彼こそは公儀御庭番・明楽伊織。忠僕にして鎖分銅遣いの老忍者孫蔵と共に、伊織の一刀が悪を断つ!

 時代劇版「北斗の拳」と評する人もいる本作、確かに登場する悪役は、世が世なら、バイクに乗って、ビョウのついた服きてヒャハハハハって笑いあってるのがふさわしいような連中。そんなバイオレンスな連中を、それ以上の力をもって叩きつぶす主人公・伊織の活躍は、確かにバイオレンスアクションものの常道と言えば常道と言えるかもしれません。

 しかし、この作品を単なるバイオレンス活劇ではなく、時代もの(幕末もの)として成り立たせ、かつ、清々しい読後感を与えているのは、以下の台詞に示される主人公の――そして作者の――姿勢でしょう。
「ものごとは移り変わる…それは確かにあるさ。だがな! 歴史なんて単なる“字”じゃねえか!(中略)おいら歴史とかぬかして町人どもを踏みつけにする連中は…やっぱ……許せねえよ!」
一見、ごく普通のヒーロー発言のようですが、しかしこの作品の舞台背景となる時代を考えれば、字面から感じ取れる以上の重みが生まれるように思います。

 と、中途半端に理屈をこねまわすまでもなく、時代アクションものとして超一流のこの作品。登場する悪役、そして伊織たちが直面する状況のバリエーションも多く、全十二巻という長編ながら、全く飽きさせません。
 終盤、伊織たちに仲間が増えたりして作品の雰囲気が変わったり(孫蔵とたった二人で絶望的なシチュエーションに挑むパターンがほとんどだったもので)、ラストの展開が駆け足でいささか食い足りなかったりという点はあるものの、それが全体の評価を下げるものではないでしょう。
 特に、宿場町一つを占領して要塞化し幕軍さえも退けた敵に対し、伊織と孫蔵がたった二人で死闘を繰り広げる烈風隊編は、意外に珍しい時代劇版ダイ・ハードとして珍重すべきエピソードだと思います。再版を大いに希望します。


「明楽と孫蔵」(森田信吾 双葉社アクションコミックス) Amazon

|

« 今日の小ネタ 伊賀対甲賀勃発 | トップページ | 「天保異聞 妖奇士」 説十九「三人往壓」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/13961276

この記事へのトラックバック一覧です: 「明楽と孫蔵」(再録):

« 今日の小ネタ 伊賀対甲賀勃発 | トップページ | 「天保異聞 妖奇士」 説十九「三人往壓」 »