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2007.02.27

「天保異聞 妖奇士」(漫画版)第一巻 もう一つの妖奇士見参

 現在放映中のTVアニメと平行して「ヤングガンガン」誌で連載中の漫画版「天保異聞 妖奇士」の単行本第一巻が発売されました。基本設定はアニメをなぞりながらも、漫画独自の魅力溢れる、もう一つの「妖奇士」と呼ぶにふさわしい作品です。

 漫画版「妖奇士」の主人公も、三十九歳独身で(妖夷に)ちょいモテオヤジの竜導往壓であることはもちろんなのですが、そのキャラクター描写が、アニメと少々異なっています。
 こちらの往壓は、アニメに比べるとかなり飄々とした、そして年相応の(?)落ち着きを見せたキャラクター。それでいて決める時にはビシッと決める、奇士の切り札的キャラクターとして描かれているため、かなり「カッコイイ」主人公となっています。「炯眼に伏せ!」という決め台詞までありますしね。
 意地悪な見方をすると、この漫画版では雲七もアトルも(まだ)登場していないため、往壓のネガティブな部分が見えないだけかもしれませんが、何はともあれ、万年モラトリアム状態のアニメ版往壓に比べ(もちろんこちらはこちらで魅力的なんですが)、時代漫画の主人公としていい具合にやさぐれていて格好いい往壓、ヒーローとしての存在感十分です。

 ちなみに漫画版では往壓や小笠原の素性・過去、さらに言えば宰蔵やえどげんの性別も漫画中では語られていないのですが(宰蔵は一度だけ「小娘」呼ばわりされていますが、おかげで漫画だけ読んでいてそこに気付かないと小笠原様ラヴの若衆にしか見えない罠)、雑誌の方にはアニメの紹介記事も掲載されているはずですし、アニメの視聴者を対象としている部分も大きいと思われるため、これはこれでよいのかもしれません。

 さて、この第一巻に収録されているエピソードは二つ――アニメの第一話・第二話のアナザーバージョンとも言うべき「山神」と、完全漫画オリジナルのエピソード「人魚」。「山神」では往壓と宰蔵、小河原様が、「人魚」ではそれに加えてえどげんとアビが登場、この第一巻で奇士の顔ぶれが揃うこととなります。
 物語的には、「山神」の方はほぼアニメと同様の展開ながら、妖夷の正体はアニメよりも大分重く、また行動原理が救いのないものとなっているのが特徴的。そんな中で重い真実を一人受け止め、さらりと流してみせる往壓の大人ぶりが印象に残ります。
 一方の「人魚」は、人魚に憑かれ女殺しを繰り返す男を描いた作品。人魚とは、「妖奇士」にしてはずいぶんとメジャーな存在のような気もしますが、もちろんただの人魚であるわけはなく、一筋縄ではいかない奇怪な、そして本作ならではのユニークな存在として描かれており、そしてそれがまた男の凶行の原因としてきちんと機能しているのには感心しました。オチもベタではありますが、これはこれでなかなかよろしい。

 絵柄の方も作品の雰囲気をうまく活かした達者なものですし、アニメの「妖奇士」ファンであればまず読んで損はない、というより是非読むべき作品(熱狂的なアトルファンでもない限り…)と断言させていただきます。連載がいつまで続くかはわかりませんが、これからももう一つの「妖奇士」として楽しませていただきたいものです。


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