« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 嘘も方便…? | トップページ | 「妖愁」から(再録) »

2007.02.07

「くもはち。」 くもはちもう一つの物語

 恥ずかしながら大塚英志氏の「くもはち」にもう一つ漫画版があることを先日知りました。単行本版「くもはち」のイラストを担当した西島大介氏が「メフィスト」誌に掲載した「くもはち。」です。

 掲載されたのは全六編(特段最終話という記載はなかったように思いますがですが、とりあえず現時点では、ということで)。「衝立の乙女」「耳なし芳一」「草ひばり」「鮫人の恩返し」「夢を食うもの」「団子をなくしたおばあさん」と、いずれも小泉八雲の怪談を題材としたエピソードとなっています。原作者である大塚氏は、本作において「原案」としてクレジットされており、つまりは物語の基本設定を使って西島氏がある程度自由に物語を作ったものなのかな、という印象で、大塚作品お得意の伝奇性、偽史観といったものは、ほとんど影を潜めています(もっとも、「くもはち」自体、そういった要素は表面的には希薄ではあるのですが)。
 しかし、それがかえって、くもはちとむじなのコンビの、呑気でのほほんとした、妙に親しみやすいムードを強めている印象があり、物語性を弱めたことで、キャラクターものとしての本作の姿がより浮き彫りになったのかな、という印象を受けた次第です。

 実はイラストはともかく、西島氏の漫画を読んだのは初めてだったのですが、可愛い中にも毒一滴垂らされているような絵柄はそのままに、漫画として不思議な躍動感があって、なかなか楽しく読むことができました。
 そういった点からすると、サメ少女の暴れぶりが楽しい「鮫人の恩返し」と、様々な悪夢の奔流が吹き出すシーンが不思議な味わいを見せる「夢を食うもの」が、個人的には強く印象に残ったところです。

 初めは食い合わせが悪いのではと思った組み合わせですが、いやはやこれは嬉しい誤算でした。諸手を上げて傑作! というわけではありませんが、原作とは少し違ったベクトルで、不思議な魅力のある作品です。


「くもはち。」(西島大介 「メフィスト」2003年5月~2005年1月)


関連記事
 「くもはち」 のっぺら坊の時代

|

« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 嘘も方便…? | トップページ | 「妖愁」から(再録) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/13817624

この記事へのトラックバック一覧です: 「くもはち。」 くもはちもう一つの物語:

« 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 嘘も方便…? | トップページ | 「妖愁」から(再録) »