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2007.02.07

「妖愁」から(再録)

 菊地秀行先生の時代ホラー短編といえば、もちろん「幽剣抄」が浮かびますが、そちらに収録された以外にも、時代ホラー短編は存在します。今回は、短編集「妖愁」に収録された三作品を紹介。

「不敗剣」
 剣を取らせては並ぶ者のいない男。数十人を斬って得られたもの思しきその技だが、時は天下太平、そのようなことができるわけもない。ある事件をきっかけにこの男と係わることになった剣士が知ったその真相は…

 ここで扱われている○○○という現象はさほど(?)珍しい題材ではありませんが(菊地先生の作品でも主役を張っているキャラもいますし)、それに一ひねり加え、剣豪小説としてもホラーとしても水準以上の作品に仕立て上げた作者の技は見事と言うほかありません。
 それにしても○○○の男は何を考えていたのか…想像してみると、その心理が一番恐ろしいかもしれません。


「切腹」
 さる北国の離島で、侍が立て続けに変死する事件が起きる。いずれも切腹していたその死骸は、しかし、みな作法に外れて腹の上の方を切っていたのだ。侍たちは何故切腹したのか、そして何故奇妙な作法で腹を切ったのか?

 と、この作品もネタ的にはさほど珍しくなく(作者自身、何編か過去に扱っています)、他の時代・場所で描かれてもおかしくないようにも一瞬思えるのですが、それに切腹という「風習」を絡めることによって、一気に異常かつ奇怪な「時代小説」を紡ぎあげているのには驚かされました。
 まさにこの時代でなければ描けないホラーと言ってよいでしょう。三作の中では一番気に入りました。


「ある武士(もののふ)の死」
 ある「もの」に愛されたかのような快男児の一代記。

 岡本綺堂で言えば「青蛙堂鬼談」というより「三浦老人昔話」的作品であり、作者自身も述べている通り、ホラーという印象は薄い作品ではあります。が、そんなことは作品の善し悪しに関係ないのは言うまでもないところ。
 ある意味ラストの一発が全ての作品なので、ここではあまり内容に触れることができませんが、この不思議に美しいラストシーンは、是非ビジュアルで見てみたいと感じました。


「妖愁」(菊地秀行 光文社) Amazon bk1

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