« 「天保異聞 妖奇士」 説二十四「後南朝幻想」 | トップページ | 「江戸群炎記」 まつろわぬ者の刃は炎となって »

2007.03.28

「BRAVE10」第一巻 期待度大の新十勇士伝

 「戦国BASARA」の漫画化を担当した霜月かいり先生が真田十勇士を主人公に据えた戦国アクションコミック「BRAVE10」の、待望の単行本第一巻が発売されました。
 連載第一回の時にこのブログでも取り上げましたが、主人公は摩利支天と異名を取る天才伊賀忍者・霧隠才蔵。仕えるべき主を持たず諸国を放浪していた彼が、出雲の巫女・伊佐那海(いさなみ)と出会うところから物語は幕を開けます。
 徳川家康の配下に社を襲われ、わけもわからぬままただ神主の真田幸村を頼れという言葉に従って信州に向う彼女を連れて上田城に向かった才蔵ですが、その前に現れるのは動物を自在に操る甲賀忍者・猿飛佐助に、氷を操る美貌のくノ一・氷華のアナスタシア、超音波を操る美青年・海野六郎と、いずれも一癖もある者ばかり。そして成り行きから最大の曲者・真田幸村の下に寓することとなった才蔵ですが、伊佐那海を狙う家康の魔手は上田城にも迫り、かくて手に汗握る忍術武術合戦の始まり始まり――と相成ります。

 真田十勇士と言えば、講談に始まって、小説・漫画・ゲームとフィクションの世界では大人気のキャラクター。現代においても、彼らが登場する作品は枚挙に暇がなく、メジャーではあるものの、それだけに扱いが難しい存在であります。
 それを本作では、シャープな絵柄と現代風のキャラクター造形で、なかなかに魅力的かつ「新しい」十勇士像を生みだそうとしており、非常に好感が持てます。才蔵と佐助こそ、従来のキャラクター像をベースにしていますが(この二人の場合はこれで正解でしょう)、三好伊佐や穴山小助を女性化してみせたりと、そのアレンジぶりはいい具合に突き抜けており、「次の勇士はどんなヤツ?」と、十勇士ものとしてはまことに正しい期待感というものを味わわせてくれます。
(「十勇士を女性化・外人化しやがって…」と憤る方はまさかいないとは思いますが、仮にいらした場合は、柴田錬三郎、都筑道夫、朝松健等々、これまで名だたる時代伝奇小説家が、十勇士に自由なアレンジを施していることだけ申し添えておきます)

 もっとも、漫画として見た場合に、絵的にも描写的にもまだまだ荒削りの部分はあり、手放しで絶賛できるわけではないのも事実(特に、アクションシーンで何やっているかわからなくなることがしばしばあるのは残念)。さはさりながら、それを補って余りあるテンションの高さとスピード感が、この作品にはあります。
 そしてまた――例えば才蔵と伊佐の主役カップルが、クールと天然という全くベクトルの異なるキャラクターでありながら、それぞれに孤独というものというものを抱えており、それこそがお互いを強く結びつけ、動かす原動力となる件の描写など、単なる勢いだけではなく、キャラ描写にも「おっ」と思わせる部分があり、この先の作者自信の成長にも期待して良いのではないかと思います。

 何はともあれ、全く新しい真田十勇士伝はまだ始まったばかり。この第一巻では、ラストに六人目の勇士・筧十蔵が登場しましたが、これまた一癖ありげな印象で、残る四人の勇士と合わせて、その活躍が楽しみでなりません。これからも期待度大、です。


 …と、単行本スペシャルゲストのことを忘れていました。巻末のおまけページには、隠れ(?)ファンも多いのではないかと思われる大羽快先生の戦国四コマ「殿といっしょ」の十勇士編を収録。いつもながらのノリの良さで十勇士を茶化していて、こちらも必読であります。


「BRAVE10」第一巻(霜月かいり メディアファクトリーMFコミックス) Amazon bk1

関連記事
 「BRAVE10」連載開始 新生十勇士伝説始動!「BRAVE10」連載開始 新生十勇士伝説始動!

|

« 「天保異聞 妖奇士」 説二十四「後南朝幻想」 | トップページ | 「江戸群炎記」 まつろわぬ者の刃は炎となって »

コメント

 昨日、「真田幸村の謀略」を観たトコだったので、
こちらも気になってきたです喃。
ちなみに、映画の方でも、十勇士の一人が
女人化した挙句に当方の伝奇脳をゴリゴリえぐるような
展開だったりしたので、大愉快でありました。
十勇士ものは「魔風海峡」くらいしか読んでないので、
こっちを読んでみるのも一興です喃。

投稿: 神無月久音 | 2007.03.28 01:53

いやー、あの濃いぃ映画の後だともの凄くギャップがあると思うのですが、伝奇病患者であれば止めはせん。

というか「MIROKU」も十勇士ものだと思います。

投稿: 三田主水 | 2007.03.29 01:43

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/14433208

この記事へのトラックバック一覧です: 「BRAVE10」第一巻 期待度大の新十勇士伝:

» 今月号のコミックフラッパーで [ダシャシュローキー]
「BRAVE10」に由利鎌之介が登場した。 今んとこ敵になっているけど、仲間になるんだろうな、展開的に。ベタだが。 現在登場しているのが 霧隠才蔵、伊佐那海(三好伊三入道)、猿飛佐助、筧十蔵、海野六郎、アナスタシア(穴山小助) というメンツなので残りが今月登...... [続きを読む]

受信: 2007.05.04 05:57

« 「天保異聞 妖奇士」 説二十四「後南朝幻想」 | トップページ | 「江戸群炎記」 まつろわぬ者の刃は炎となって »