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2007.03.31

「時の行者」 歴史の何たるかを教えてくれた人

 歴史の流れの中で、十年ごとに現れては不思議な能力を見せる少年がいた。人々から時の行者と呼ばれる彼は、どれほどの時が流れようとも、昔と変わらぬ姿で現れ、その時代の人々と関わっていく。戦国時代から関ヶ原の戦、大坂の陣を経て江戸時代…様々な時代をさまよい、時の行者は歴史の動きを目撃していく。

 こんなサイトを作っている以上、もちろん私は日本史好きなのですが、さてそもそも何故日本史が好きになったのだろうと考えてみると、思いつくのは、子供の頃に兄が古本で買ってくれたワイド版の「時の行者」全四巻の存在。
 この作品こそ、私に歴史の面白さというものを教えてくれた先生とも言うべき存在です。

 この作品は、戦国時代末期から江戸時代後期までを舞台とした連作的内容。数十年毎に、昔と変わらぬ姿で現れ、不思議な力を発揮する謎の少年・時の行者を狂言回しに、様々な歴史上の事件が描かれます。
 その題材となる事件がまた、実にバラエティ豊か。本能寺の変や大坂の陣といったメジャーどころのみならず、浄瑠璃坂の仇討ちや天一坊事件など、教科書には載らないけれども時代ものではお馴染みの事件まで、実に様々な事件が、時の行者の目を通して描かれていきます。

 そしてまた、もう一つ忘れてはならないのが、そうした事件に登場する人物たちが、実に生き生きと、血の通った存在として描かれていることでしょう。さすがは大ベテランの横山先生のこと、どの人物も個性的に、また魅力的に描かれています(個人的には、後藤又兵衛が一番印象に残りました…後藤又兵衛ファンはぜひ一読を)。
 もちろん、本当にその人物が本作の描写の通りの人物であるという保証はなく――いや当然ながらかなりの部分でフィクションだと思いますが――しかし、教科書や年表に登場するような事件の陰には、単なる情報の羅列ではなく、まぎれもなく生きている人間がいたのだという、当たり前といえば当たり前のことを、本作は小さかった頃の私に教えてくれました。

 さて、本筋にはあまり大きな影響は与えないと思いますのでバラしてしまいますが、時の行者の正体は、未来世界からやって来た時間旅行者。ある目的を持って過去世界を訪れた彼は、未来の科学力によって、当時の人間から見れば神通力としか思えない力を発揮しますが、しかし、時が来ればまた自分の世界に戻らざるを得ない、存在です。
 横山ヒーローにおいては、その超絶の能力ゆえに局外者として周囲から阻害されることがままありますが、その孤独の度合いは、ある意味、この時の行者が最も大きいかもしれません。なんと言っても、自分はあくまでも過去においてはかりそめの客、そしてどれほど努力したとしても、目の前の歴史を変えることは叶わないのですから――

 しかし、例えば本作の終盤のエピソードにはっきりと現れているように、それでもなお、歴史に残らない無名の人々を救うために精一杯の力を尽くす時の行者の姿には、冷徹な時間の流れに負けぬヒューマニズムの発露が感じられて、ほっとさせられるものがあります。

 歴史上、教科書には登場しないような部分にも様々な事件が、事物が存在すること。そして表に現れる部分も現れない部分も、歴史とは有名無名を問わず人の営みの集合であること。当たり前といってはまったく当たり前ではありますが、この作品を読んで以来、私の歴史を見る目が少し変わったのは間違いのないところです。

 …そして今に至る(笑)


「時の行者」(横山光輝 講談社漫画文庫全三巻ほか) 上巻 Amazon/中巻 Amazon/下巻 Amazon

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2007.03.30

「闇鍵師」第三巻 こういう世界もありなのだ

 赤名修&中島かずきのコンビによる伝奇時代コミック「闇鍵師」も早三巻目。この巻では前巻終盤から始まった長編エピソード「秘錠の密偵」の終盤近く(たぶん)までを収録。この世の魔を封じる枢り屋錠之介が、公儀と薩摩忍びの暗闘の中で巨大な魔と対決します。

 相棒の鍛冶屋・鉄拾が救った記憶喪失の美女が不思議な鍵を持っていたことから事件に巻き込まれる錠之介。実はその美女こそは薩摩忍びの一員、そしてその鍵こそは、江戸の大丸呉服店の蔵の鍵でありました――というのが前の巻までのあらすじ。
 大丸呉服店と言えばあの大丸の前身ですが、ここで何で大丸が、と思うのは普通の人。時代劇ファンの方であれば、大丸と聞いてニヤリとする方もいるのではないかと思います。そう、アレです。

 さて、事が鍵にかかることだけに、旧知の伊賀組頭領・服部真蔵の依頼で、薩摩忍びとの暗闘に一枚噛むこととなった錠之介ですが――ここで現れる魔物の影。
 薩摩忍びの頭領こそは、外見は年端もいかぬ美少年ながら、霊山で悪鬼を調伏してその力を取り込み自分の物にしたという魔人・牙鳳丸。この牙鳳丸の能力は、魔を自在に操り人に憑けるという、まさに錠之介とは正反対の能力であり、ここで巻き込まれただけだった事件が、錠之介の本職に関わってくるという展開がさすが(冷静に考えると偶然が重なりすぎという感もありますが、いいのいいの)。

 錠之介の魔封錠をも打ち破る最強の魔に、如何に錠之介が戦いを挑むか、というのは読んでのお楽しみとして、今回も驚かされたのは作画の赤名氏の見事な筆使い。
 元より、画力には定評のある漫画家さんですが、その一方で、本作で描かれる魔の妖しさ、おぞましさはただごとではない迫力であります。どうしても赤名氏と言えば、「勇午」が頭に浮かびますが、超現実的、とも言うべきあの作品と同一人が描いているとは思えぬ魔界描写で、嬉しい驚きであります。

 物語的にはほぼアクションアクションの釣瓶撃ちで、シンプルな構成ではありますが、この赤名氏の画と、中島かずき氏一流のガジェットの面白さで、気を逸らされることなく一気に読むことができました。
 人情ゴーストハント、ともいうべき連作短編形式のエピソードも良いですが、それとほとんど正反対に近いバリバリのアクション伝奇になっても面白い本作。「『闇鍵師』はこういう世界もありなのだ」という中島氏の言葉には、全くごもっとも、と深く頷くほかありません。


「闇鍵師」第三巻(赤名修&中島かずき 双葉社アクションコミックス) Amazon bk1

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2007.03.29

「江戸群炎記」 まつろわぬ者の刃は炎となって

 江戸時代前期を舞台としたまつろわぬ者たちの物語である本作は、その題名通りに、江戸の闇の世界に燃え上がった幾つもの炎の如き人々の生きざまを描いた重厚な作品です。
 主人公・早野小太郎は、将軍家光の近習・松平定政(この名前を聞いて、おっと思った方はなかなか歴史に詳しい方と存じます)に仕える青年武士。彼が同門の親友の誘いで遠乗りに出た先で、奇妙な一団を率いる美女と行き会ったのが、物語の始まりとなります。

 その頃、江戸では幕府に主家を取り潰された浪人たちが溢れている状態。そんな中、小太郎は浪人たちに慕われる軍学者・由比正雪、そして町奴たちを束ねる幡随院長兵衛と次々に出会うこととなります。さらに彼は、吉原でその名を誇る霞太夫と巡り会いますが、彼女こそは、かつて小太郎が原野で出会ったあの女・鵺鳥。小太郎の名を知った鵺鳥は、彼に異常なまでに興味を示します。
 何故ならば彼女こそはかつて関東にその名を轟かせた風魔一族の末裔。彼女は一族を導く風魔小太郎の生まれ変わりを探していたのでありました。
 一方、小太郎の主君である松平定政は、浪人に対して同情的な立場を取るが故に、時の老中・松平伊豆守と対立。家光の寵愛厚く、全国に派遣した廻国与力の情報網により隠然たる権力を誇る怪人・中根壱岐守と結んだ伊豆守の前に、定政は孤立を深め、それは遂に思いも寄らぬ行動に彼を走らせることとなります。
 そして柳営と市井と…二つの世界で繰り広げられる暗闘は家光の死により遂に沸点に達し、あの史上有名な事件へと物語はなだれ込んでいくこととなります。

 図らずも吉原の無縁の者や風魔たち古きまつろわぬ者たちと、浪人や町奴ら新しきまつろわぬ者たち――その双方を結ぶ存在となった小太郎は、果たして如何なる生き方を選ぶのか…本作は、家光の死の前後の時代のマクロな動きを描くと同時に、時代の流れに翻弄される一人の青年の魂の遍歴を描いています。
 分量的には、並みの作品の倍近くある作品ですが、伝奇的ガジェットもさることながら、小説的にもなかなかに充実した内容であり、一気に読み通すことができました。

 正直なところ、吉原を無縁の者の砦として描くのは、どうしても「吉原御免状」という大先達が連想されてしまい、マイナスにこそなれあまりプラスにはならないという気もするのですが、その一方で、浪人や町奴を、新たなるまつろわぬ者として無縁の民と等置する視点には大いに感心いたしました。
 思えば、まつろわぬ者という概念自体、人をまつろわせる存在――権力があってこそ成立するもの。とすれば、まつろわぬ者は決して遠い過去の存在ではなく、その時代時代で新たに生まれてくる者なのでしょう。

 さて、結末にいたり、まつろわぬ者の反撃の刃は、文字通り炎と化して江戸を焼き尽くしたことが暗示されますが、しかしそれは単に権力の座にある者のみならず、同時に多くの市井の人々をも傷つけるもの。かつての友の前に姿を現した小太郎の姿からは、その代価の重たさと、彼の往く道の険しさが強く伝わってきて、粛然とさせられたことです。


「江戸群炎記」(大久保智弘 講談社) Amazon bk1

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2007.03.28

「BRAVE10」第一巻 期待度大の新十勇士伝

 「戦国BASARA」の漫画化を担当した霜月かいり先生が真田十勇士を主人公に据えた戦国アクションコミック「BRAVE10」の、待望の単行本第一巻が発売されました。
 連載第一回の時にこのブログでも取り上げましたが、主人公は摩利支天と異名を取る天才伊賀忍者・霧隠才蔵。仕えるべき主を持たず諸国を放浪していた彼が、出雲の巫女・伊佐那海(いさなみ)と出会うところから物語は幕を開けます。
 徳川家康の配下に社を襲われ、わけもわからぬままただ神主の真田幸村を頼れという言葉に従って信州に向う彼女を連れて上田城に向かった才蔵ですが、その前に現れるのは動物を自在に操る甲賀忍者・猿飛佐助に、氷を操る美貌のくノ一・氷華のアナスタシア、超音波を操る美青年・海野六郎と、いずれも一癖もある者ばかり。そして成り行きから最大の曲者・真田幸村の下に寓することとなった才蔵ですが、伊佐那海を狙う家康の魔手は上田城にも迫り、かくて手に汗握る忍術武術合戦の始まり始まり――と相成ります。

 真田十勇士と言えば、講談に始まって、小説・漫画・ゲームとフィクションの世界では大人気のキャラクター。現代においても、彼らが登場する作品は枚挙に暇がなく、メジャーではあるものの、それだけに扱いが難しい存在であります。
 それを本作では、シャープな絵柄と現代風のキャラクター造形で、なかなかに魅力的かつ「新しい」十勇士像を生みだそうとしており、非常に好感が持てます。才蔵と佐助こそ、従来のキャラクター像をベースにしていますが(この二人の場合はこれで正解でしょう)、三好伊佐や穴山小助を女性化してみせたりと、そのアレンジぶりはいい具合に突き抜けており、「次の勇士はどんなヤツ?」と、十勇士ものとしてはまことに正しい期待感というものを味わわせてくれます。
(「十勇士を女性化・外人化しやがって…」と憤る方はまさかいないとは思いますが、仮にいらした場合は、柴田錬三郎、都筑道夫、朝松健等々、これまで名だたる時代伝奇小説家が、十勇士に自由なアレンジを施していることだけ申し添えておきます)

 もっとも、漫画として見た場合に、絵的にも描写的にもまだまだ荒削りの部分はあり、手放しで絶賛できるわけではないのも事実(特に、アクションシーンで何やっているかわからなくなることがしばしばあるのは残念)。さはさりながら、それを補って余りあるテンションの高さとスピード感が、この作品にはあります。
 そしてまた――例えば才蔵と伊佐の主役カップルが、クールと天然という全くベクトルの異なるキャラクターでありながら、それぞれに孤独というものというものを抱えており、それこそがお互いを強く結びつけ、動かす原動力となる件の描写など、単なる勢いだけではなく、キャラ描写にも「おっ」と思わせる部分があり、この先の作者自信の成長にも期待して良いのではないかと思います。

 何はともあれ、全く新しい真田十勇士伝はまだ始まったばかり。この第一巻では、ラストに六人目の勇士・筧十蔵が登場しましたが、これまた一癖ありげな印象で、残る四人の勇士と合わせて、その活躍が楽しみでなりません。これからも期待度大、です。


 …と、単行本スペシャルゲストのことを忘れていました。巻末のおまけページには、隠れ(?)ファンも多いのではないかと思われる大羽快先生の戦国四コマ「殿といっしょ」の十勇士編を収録。いつもながらのノリの良さで十勇士を茶化していて、こちらも必読であります。


「BRAVE10」第一巻(霜月かいり メディアファクトリーMFコミックス) Amazon bk1

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2007.03.27

「天保異聞 妖奇士」 説二十四「後南朝幻想」

 アトルの力で現れた巨大妖夷・祗影。アトルを止めようとする往壓だが、西の者はアトルと祗影を捕らえ、祗影と一体化してしまう。妖夷こそはかつて神々が現世に遺していった神の鎧であり、神の血を引く後南朝の末裔である自分のみが操ることができると語る西の者。駁竜に変じた往壓は祗影を倒すが、人間に戻ることができず、半ば妖夷化してしまう。と、そこに西の者側についた元閥が現れ、叢雲剣で往壓を貫くのだった…

 まさに風雲急を告げるラスト一話前と言うべき内容でありました今回の「天保異聞 妖奇士」。
 主な内容を上げれば
・アトル中二病発症
・アトルを往壓に託す狂斎
・踊るおっさん巫女と妖夷=神の鎧説
・西の者の正体と鳥居の真意
・大魔獣激闘
・遂に往壓妖夷化&えどげんの裏切り
と、確かに詰め込みと言えば詰め込み、急展開ではあるのですが、前回が小難しい――と言って悪ければ細やかな人間描写が必要な――話を詰め込もうとして消化不良になっていた一方で、今回は物語の重要な背景設定を盛り込みつつも基本はアクションで、詰め込みがかえって状況の緊迫感を強めていたように思えます(というのは贔屓目に過ぎるかもしれませんが…また、唯一ソテ姐さんの狂乱が唐突に見えてしまったのが残念。気持ちは何となくわかりますが)

 上記のようにポイントは山ほどありますが、まず挙げるべきは妖夷の正体でしょう。かつて八百万の神が、現世においてまとったという鎧。神々が異界へ去る際に現世に遺したその鎧と、人の想いが合わさって生まれたものが、妖夷と呼ばれる存在だった、と。なるほど、以前アビ姉が登場した際に、妖夷は異界に留まれないと語られていましたが、それとも確かに平仄は合います。
 そしてまたそこから繋がってくるのが、神は、神の血を引く者は、妖夷と一体化して(モビルトレースシステムの如く)操ることができる、という事実。これもまた、数話前の吸血妖夷の回で、西の者が異国の吸血妖夷を身にまとおうとしていたこと、そして誤って妖夷と一体化してしまった男が暴走したこととも整合性が取れています。
 もっとも、妖夷が神の鎧だったら豊川の姐さんたちみたいな存在は一体…という気もしますが、あれはまあ、妖夷とはまたちょっと違う神様に近いものか、あるいは何かの拍子に自我を持ったり人を取り込んだりした妖夷なのだと思っておきます。
(なお、この神の鎧という テーマ、同じ會川作品である「南海奇皇(ネオランガ)」と通じるもののがあるとのことなのですが、そちらは未見なのが残念)

 それはさておき、伝奇者的にたまらないのは、その妖夷の特性を使って幕府転覆を企む西の者の正体が、実は後南朝の末裔だった、というところ。後南朝については番組中でも語られていましたが、南北朝合一に不満を持つ南朝方の人間が吉野に籠もって正統の王朝を唱えたもの。結局は時勢にあらがえず自然消滅してしまったようですが、その存在の面白さから、室町時代を描いた時代ものにはしばしば登場する存在です(が、不勉強にして江戸時代に後南朝を登場させた作品は、すぐには思いつきません)。
 この後南朝が歴史上に姿を現した事件の一つが、1443年(嘉吉3年)の禁闕の変で、この時は後南朝側が内裏に乗り込んで神璽と宝剣を奪っていますが、それが今回竜殺しの剣として往壓を貫き、若本規夫にしては珍しくうろたえた声を上げさせた叢雲剣の登場に繋がってくるのですが…どんだけマニアックなのだ、一体。
(マニアックと言えばもひとつ、祗影=「桃山人夜話」の赤エイ=リヴァイアサンなんてとんでもなさすぎる話をサラッと出してくれるのが最高でありました)

 さて、往壓は(尻丸出しで)倒れ、えどげんは西の者側に立ち、アトルはその手に落ちたという最悪の状況となって次回に続く、となったわけですが――どうやら次回は奇士の本拠である前島聖天が西の者の襲撃を受ける様子。この絶体絶命のピンチに小笠原様のマッハパンチ炸裂!?
 …と、実にカオスな状態の次回最終回を、悲しくはありますが、まずは楽しみに見届けたいと思います。 

 と、次回は「最終回」じゃなく「幕間」? しかもビデオでオリジナルストーリー? 
 まあ、「幕間」ってのは少年漫画で言う「第一部完」と同じようなモンだと思いますし、オリジナルストーリーもごく限られた話数だとは思いますが――と、さすがに今更楽観的にはなれないのですが、少しだけも希望が見えるというのは良いものですね。


 …しかしあのおっさん巫女はもの凄く安永航一郎臭かったなあ


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2007.03.26

「幕末機関説 いろはにほへと」 第二十四話「色は匂へど」

 いよいよラスト三話の「いろはにほへと」、今回は覇者の首の力で狂気の度合いを深める蝦夷共和国の姿と、土方の最後の戦いが描かれます。
 榎本と、完全に己の意志というものを無くしたかに見えるコスプレ姿の座長に扇動されて、正気を失っていく共和国の人々。もちろんこれは極端な姿ですが、マスヒステリーの恐ろしさ、醜さは現代でも容易に見ることができるだけに、生々しい恐怖感がありました(こうして見ると今の首相には覇者の首は憑いてなさそうだなー)。
 そしてそれが、大商人襲撃につながり、第二の赫乃丈を生み出すこととなってしまう皮肉がまた…

 一方、土方は実質今回の主役といって良いほどの活躍ぶり。前回再会した耀次郎を匿って一緒に鍋をつついたり(なんかおかしかったです、あのシーン。絶対土方は鍋奉行だと思う)するのはいいとして、覇者の首との対決の役目を耀次郎から譲って(?)もらって榎本と対決までしてしまいます。残念ながらというかやっぱりというか、全く叶わずに退くこととなってしまいますが…
 そして運命はもはや変えられぬと知った土方は、鉄之助に自らの形見となるであろう写真と、勝への書状を持たせて一人落ち延びさせますが、そのシーンの優しい眼差しがもう…この辺りは史実ですし、そしてこの後どうなるかを知っているだけに何とも切ない場面ではあります。

 そして運命の五月十一日。新政府軍へ突撃を仕掛けた土方は、激しい銃撃の中、敵を全て斬って倒して――あれ、何だか普通に生きてますよ? と思いきや、そこに現れたのは左京之介…こうきたか!
 既に完全に飼い犬と化した左京之介は、蒼鉄先生の命令で目障りとなった土方を始末しに来たと――いくら蒼鉄先生でもやっていいことと悪いことがある! と、ここで憤ってみても仕方ないのですが、とにかく蒼鉄先生腹黒すぎます。
 もちろん(?)、これが今までの左京之介であれば、土方に返り討ちにされておしまいだったと思うのですが、覇者の首の力が伝染した左京之介の前に歴史は変わらず…土方散る。満ち足りた表情であったのが、せめてもの救いでしょうか。近藤さんよりも総司の名を先に呼んだのが不思議ですが。

 と、そんなリアル系時代劇をやっている一方で、榎本と座長は変なパワーを発揮、見る見る間に五稜郭から異様な柱が立ち上がり、見る見る間に五角形の塔とも言うべき姿になるというスーパー系の展開。何だか超長距離砲っぽいものまで出てきたりして、この辺のカラクリセンスは天外魔境っぽいなあ。しかしインパクトはあるけれども、これ一つで世界征服できるとは思えず、まだまだ秘密がありそうです。

 そして次回、ようやく出番の回ってきた耀次郎と、左京之介の決着の刻――手加減できなさそうな主人公だけにあまり多くを望みませんが、せめて左京之介の魂が救われることを祈っています。


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2007.03.25

四月の伝奇時代劇アイテム発売スケジュール

 暖かくなったりまた寒くなったり、そうこうしているうちに色々な花が咲いて、季節は着実に移り変わっていることを感じますが、そんなおセンチになる暇もなくもう四月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュール更新の時期です。

 が、(現時点でわかっている限りでは)存外に寂しい四月。小説でまず目に付くのは、エロ伝奇書かせたら屈指の鳴海丈先生の「乱華八犬伝」。ノベルスで出たときに読もうと思いつつ、でもなんか恥ずかしいしィ…と思っていたら文庫化されてしまいました。ノベルスでは全二巻でしたが、文庫では特に表記がないところをみると合本になるのでしょうか。

 しかし何よりも気になるのは、先日もちょろっと書きましたが、牧秀彦先生による「幕末機関説 いろはにほへと」のノベライゼーション。お話自体は前々から聞いていましたが、放映終了にタイミングを合わせて発売のようです。本作をご覧の方には今更言うまでもないことながら、牧先生は本作の殺陣指導を担当、元々剣戟描写では定評のある方だけに、かなり期待できるかと思います(そして何げに牧先生の初本格伝奇でもあります)。
 もっとも、全二十六話を一冊にまとめるのかなと、ちょっと気になるところではありますが、蒼鉄先生の活躍が牧先生の文章で読めるだけでもう…って、実は全然違う話だったりして。
 その他、三ヶ月連続刊行の風野真知雄先生の「耳袋秘帖」もいよいよ三冊目となり、こちらも楽しみです。

 また、漫画の方は…これも点数は少ないですが、決して見逃せない一冊が。昨年、あまりに突然の死にファンを愕然とさせた鬼才・石川賢先生の遺作たる「五右衛門」の単行本が刊行されます!
 当然のことながら(?)未完ではあるのですが、そんなことはどうでもいいこと(中絶した箇所が、また実にいいところで終わっていることもありますが)。円満に完結した作品でもなかなかきちんとした形で単行本化しなかったりするリイド社ですが、今回はようやった!
 も一つ漫画では、「原作完全版」と銘打たれた「仮面の忍者 赤影」が刊行されます。正直横山時代漫画の中では…な感のある赤影ですが、完全版とまで言われては見過ごすわけにはいかんです。

 最後に映像作品では、平成の御代に昭和TV時代劇の空気を濃厚に残した「逃亡者おりん」の DVD-BOXが発売。そして「天保異聞 妖奇士」のDVD第三巻は、愛と怒りと哀しみを込めて私は買います。


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2007.03.24

「超忍者隊イナズマ!」 肩の凝らないプログラム・ピクチャー

 続編製作決定のお話だけ書いて、本編の紹介をしておりませんでした。東映のスーパー戦隊シリーズのキャスト・スタッフが集結したコメディタッチのSF時代劇ヒーローものです。

 時は西暦2076年。駆け出しのTVプロデューサー・ジュン(菊地美香)は、新番組の企画のために、生意気なADの倉田宮(載寧龍二)と共に、江戸時代へとタイムテレポートすることになります。そう、この時代はすでにタイムマシーンが一般化しており、TV屋は過去に飛んで様々な番組を制作していたのでした。…何だかギルスの嫁さんに冷凍刑にされそうな所業ですが、「過去をいじってもタイムパラドックスは発生しない」という世界観なので問題ないのです(たぶん)。
 そして江戸時代に飛んだジュンたちは、現地で見つけた格好の素材――すなわち、丁稚でビビリの細松(橋本淳)、
大工でスカシの寒吉(松本寛也)、団子屋の娘でドジのかぐや(甲斐麻美)の三人を発見。神さまコスで三人の前に現れたジュンは、彼らを伝説の雷の力を受けたヒーロー・超忍者隊イナズマに任命、すっかりその気になった三人の姿を隠し撮りしてヒーロー番組ならぬバラエティ番組の素材にしようとします。
 それと時をほぼ同じくして江戸の町で次々と怪事件が発生。それはヤラセではなく、本物の怪物たちが引き起こしていたのでした。しかも、その怪物たちに憑依されているのが、それぞれ敬愛する呉服屋の若旦那・輝之助(市川洋介)、その妹・いと(山内明日)、そして用心棒の藤十郎(伊藤友樹)であることを知ったイナズマ三人組は、勇躍怪物たちと戦おうとするのですが…

 そんなお話の本作は、よく言えば特撮ヒーローものの時代劇版(よくも何もそのまんま)、悪く言えばバラエティ番組の時代劇コメディパート、さらにぶっちゃけると菊地美香のPV(いや、本作での彼女の可愛さは異常。本作以外でも可愛いですが)といった趣の作品。本格的な時代劇として期待すると、間違いなくがっかりすると思いますが(まあ、そもそもそういう視聴者はいないと思いますが…)、変身ヒーローものとして見れば、さすがに手慣れたキャストとスタッフによるものだけあって、なかなか楽しめます。怪物たちの正体に関する伏線が、ジュンの活躍と真のヒーローの誕生につながっていく辺り、構成もなかなか良くできていると感じました。
 個人的には、諸処に東映特撮ヒーロー時代劇の大先輩たる「仮面の忍者赤影」リスペクトが入っているのが何とも愉快でありました。もっとも、赤影リスペクトするのならば巨大怪獣には生身で立ち向かって欲しかったですが…

 もちろん、良い点ばかりではなく、不満点も――特に尺の短さに由来すると思われる――幾つかあります。特に、自分たちが面白おかしく利用されていただけだったと知った細松たちの葛藤というか落ち込み方をもっときっちりと描きこんでいれば、ドジで弱虫な主人公が勇気と信念と少しの偶然で本当のヒーローになるという「がんばれベアーズ」的王道熱血コメディとして、グッと盛り上がったと思うのですが…。また、折角きっちりと江戸時代側の設定年代も決まっていたのだから、その時期ならでは、というネタも見たかったな、という気持ちはやはりあります。

 が、こういった趣向の作品に、あまり細かいことを言うのも野暮というものでしょう。少なくとも、本作の視聴者の99%を占めるであろう、役者ファン、戦隊ものファン――特につまらないことにこだわらない心豊かな特撮ファン――にとっては十分に楽しめる、期待通りの作品であることは間違いのない話。そして、プログラム・ピクチャーにとってそれ以上に大事なことがあるでしょうか?
 もちろん、こういう作品だけになってしまうとさすがに考えものではありますが、年に一回くらい、こういう肩の凝らない時代活劇があっても全然OKだと思うのです。
 特に、特撮出身に限らず若手俳優は時代劇にも出すべきと常々主張している私にとっては、イキのいい若手たちが時代劇衣装に身を包んでいるだけでも嬉しくなったことです。…こんな奴ァさすがに極少数だとは思いますが。

 現在製作中の続編「超忍者隊イナズマ!! SPARK」も、キャストに異動があったものの(残ったキャスト、消えたキャストを見ると色々と考えさせられます)、本作の路線を発展継承してくれるものと、大いに楽しみにしております。


 それにしても――橋本淳の丁稚姿のはまりっぷりは異常。「お江戸でござる」が続いていたらえなりかずきの座も奪えたんじゃないかというほどの逸材ですよ、これは。
 あと、甲斐麻美にほっぺた強調した衣装を着せた塚田Pは鬼。


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2007.03.23

今日の小ねた 帰ってきた薬売り!

 今日の小ネタはアニメネタと物欲ネタですよ。
シグルイアニメ化
 単行本第八巻の記事でも少し触れましたが、WOWOWにてアニメ化される「シグルイ」の公式サイト。まだ何もないも同然ですが、「そうかぁ、ワシらの先祖はこんなだったんかぁ」とちょっと愉快な気分になりました。
 個人的にはマッドハウス製作ということで、川尻キャラ来ないかな、ホモくさい耽美な絵柄だし(いや私川尻監督は大ファンですが)とか、マッドハウス常連脚本家のあの方が来てくれたらファンとしては嬉しすぎる、とか思いますが、洒落のわからない人が真っ赤になって怒り出しそうなのでガタガタ言わない。
 しかし山口作品のアニメ化というと、主題歌のみが神クラスだった「覚悟のススメ」を思い出しますな(あ、あれはキャスティングも素晴らしかった)。


『幕末機関説 いろはにほへと』の注目のキャストコメント公開!
 もうすぐ最終回の「幕末機関説 いろはにほへと」のキャストインタビュー。一人当たりのコメントは少ないですが、こばこ紅丸役の方までコメントを取っているのは素直に凄いと思います。
 が…何よりも注目すべきは、蒼鉄先生役の井上和彦さんのコメント。蒼鉄先生――期待してます!


ボンズ新作『ストレンヂア-無皇刃譚-』
 「いろはにほへと」の方は円満最終回みたいですがもう一方は…というわけで非常に悲しい気分に沈んでいるわけですが、制作元のBONESの新作劇場アニメは戦国もの。監督が安藤真裕氏ということ以外、スタッフもキャストもわかりませんが…今度こそ頼むぜ、本当に。


大帝の剣TRPG
 何やら素晴らしい香ばしさがプンプンしてきて一部の人間(含むワシ)には垂涎ものの映画「大帝の剣」。現在ハードカバーで再刊されているのはいいけど、連載中の新章までハードカバーか! と嘆きたくなりますが、それはさておき、この「大帝の剣」がテーブルトークRPGになるというお話。
 私はいまのTRPGのことはほとんどわからないのですが、原作の世界がどのように数値化されているかには大いに興味がありますので、発売され次第チェックしたいと思います。


「劇団☆新感線 20th Century BOX」発売決定
 何だかずいぶん前から予告されていた気がする「劇団☆新感線 20th Century BOX」の内容・発売日がようやく発表されました。蓋を開けてみれば、収録タイトルは
・星の忍者
・BEAST IS RED~野獣郎見参(96年版)
・SUSANOH~魔性の剣
・PSY U CHIC-西遊記
・LOST SEVEN
・大江戸ロケット

と、これまでビデオ化されていてDVD化されていなかったタイトルを収録という、ぶっちゃけ予想通り以外の何物でもない内容なのですが、しかしそうであってもここまで漕ぎ着けるまででも並大抵の苦労ではなかったのでしょう。
 もちろん(?)、収録作品六本中四本がが伝奇時代劇でありまして、このサイト的には猛烈に楽しみな一品であります。少しばかり値は張りますが、もちろん私は買いますよ、ええ(この日のためにヤフオクでビデオ版買わないで我慢してきたからね)。


謎の薬売りふたたび
 って、最後に大物が来た来た来た!
 昨年初頭に放映され、深夜アニメながらそのクオリティの高さで絶賛された(もちろん私も大ファンでした)「怪 ayakashi」の「化猫」。その主人公の謎の薬売りが主人公のアニメ「モノノ怪」がこの夏登場とのことです。
 スタッフは当然(?)「化猫」のスタッフが再結集ということで、これは心の底から楽しみであります。あ、放送時間帯はまたノイタミナとのこと。


 いやー本当にヤケになってアレしなくてよかったですよ、と希望が湧いてきたところでおしまい。

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2007.03.22

「コミック乱 四月号増刊」 新たなる時代コミックの息吹

 リイド社の「コミック乱」誌の四月号増刊が発売となっていました。同誌の増刊と言えば、現「コミック乱ツインズ」誌が一本立ちしていますが、こうして新しい増刊が発刊されるというのは、それだけ需要があるということなのでしょう。新たなる時代コミックの息吹、まずはめでたいことです。
 以下、個人的に印象に残った作品など。

「巷説百物語」(日高建男&京極夏彦)
 ご存じ京極先生の原作を、「満腹ボクサー徳川。」の日高氏が漫画化した第二弾。今回の漫画化は、「続巷説百物語」の第一話「野鉄砲」からで、一月発売の「コミック乱」本誌の方に掲載されたシリーズ第一弾が「巷説百物語」の第一話「小豆洗い」を原作にしていたのを考えると、随分と飛んだものという気もしますが、まあそれは細かい話。
 こうして絵にしてみると、少々強引な話だったのだな、ということに気づかされますが、日高氏の丹念な人物描写(闇の中での又市と治平の会話シーンでは、彼らを包む闇の重さが感じられてお見事)のおかげで、良くできたドラマになっていたかと思います。個人的には、漫画なのに地の文が多いのには気になりましたが…
 今後もこの増刊でシリーズは掲載されていくようなので楽しみにしたいところです。

「剣豪列伝 柳生石舟斎」(とみ新蔵)
 とみ先生の柳生もの、今回は柳生新陰流の太祖たる柳生石舟斎宗厳が題材。超人的な師・上泉伊勢守の下で修業を積みながらも、国盗りの技である大兵法と武芸の道たる小兵法の間で苦しむ宗厳の姿が、氏独特の端正かつ生々しい筆で描かれています。
 とにかく、師の見せた新陰流水月の境地に一向にたどり着けず暴れまくる宗厳の人間の出来てなさが微笑ましくも切なく、それだけに、懊悩の果てに開眼した彼の姿が一層際だっているかと思います。
 そして圧巻は、廻国の旅の末に再び現れた上泉伊勢守と宗厳が対峙するシーン。宗厳の姿を一目見るなり、「儂は…おことを斬りとうなった」と刀を抜く上泉伊勢守と、それを迎える宗厳の姿が実に印象的でした。あの有名な、石舟斎の号の元となった和歌が、また違った意味で見えてくる結末もまた見事です。

「もやしもん 増刊コミック乱出張編」(石川雅之)
 あの「もやしもん」です、はい。リイド社とは縁浅からぬ作者ですが、これはちょっと意表を突かれました。内容的には、いつもの菌類たちがダベっているだけなのですが、たった六ページながら、有史以来の日本人とこうじかびの関わりを描いた上に、人間のレギュラーキャラの顔見せもやっていて、本編の導入編としての役割をきっちりと果たしていたのに感心しました。

「夜明けの晩に」(橋本還)
 とある瓦版屋に現れた渡世人姿の男、実は隠密配下の元・人斬りが語る、己が人斬りを辞めるに至った物語という設定のこの作品。「魔人戦記 破軍」を描いている方だと思いますが(いつも思うんですが「コミック乱」系は面白いところから新しい血を連れてくると思います)、なかなか達者な絵柄で女性キャラは艶っぽく、物語の内容にうまくマッチしていたかと思います。殺し屋とターゲットの馴染みの遊女との悲恋というのは、正直よくあるパターンではありますが、手堅い描写でまとめた上で、主人公がこの先歩むであろう修羅道をラスト一ページで示す手法が強く印象に残りました。

「デーモンの弟子」(森本サンゴ)
 ジョサイア・コンドルと「画鬼」(Demon of Painting)こと河鍋暁斎の出会いをコミカルに描く掌編。まさしく絵に鬼のような執着を見せる暁斎と、ピュアなコンドルの凸凹コンビが何とも微笑ましい作品でした。にしてもここの暁斎は随分凶悪な顔だなあ…


「コミック乱 四月号増刊」(日高建男&京極夏彦ほか リイド社)

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2007.03.21

「シグルイ」第八巻 剣戟の醍醐味ここにあり

 ウワサにはなっていたけれどもまさか本当にアニメ化されるとは思わなかった「シグルイ」ですが、その発表とタイミングを合わせるように単行本第八巻が発売。いよいよ藤木vs伊良子の最初の真剣勝負開始、というところで、全編これ決闘血闘、ただただ二人の剣士が激突するというチャンバラファンにはたまらない内容となっています。

 内容的には本当に藤木vs伊良子の決闘のみ。単なる野試合ではなく、正式の仇討ち試合として行われるこの勝負、これまで登場した(そして生き残ってきた)登場人物の多くが一堂に集い、二人の死闘の行方を見届けることとなりますが…
 その死闘の様は、まさに一進一退、剣戟の醍醐味ここにありとしか言いようのない見事なもの。普段は過激な描写や独特の台詞回しといった、いわばネタ的部分で人気を博している面も否めない本作ではありますが、決してそれだけが本作の魅力ではないことを、この巻ははっきりと示しています。
 まったく、現在の漫画界で剣戟を描かせたら五本の指に入るのでは――と言っても決して大げさではないことは、本書をご覧になった方であれば皆わかってくれるのではないかと思います。

 個人的に強く印象に残ったのは伊良子の星流れを藤木が秘術・茎受けで迎え撃ったシーン。
 藤木の表情は、前の巻から、それまでの描写と明らかに異なる何だか仏様のような透き通った表情に描かれていて違和感を感じていたのですが、それはやはり意図して描かれていた様子。そんな静謐な表情が、一転、獰猛なものに転じる様は、藤木という、普段は分厚い殻に己を潜めた(その意味ではまさに「貝殻野郎」であります)男が内に秘めたものを顕したものであり、圧巻でありました。

 この先の展開は、原作ファンとしては見たいような見たくないような…ではありますが、常にファンの期待をいい意味で裏切ってきた本作、最新刊を読み終えたばかりですが、早くも次が楽しみでなりません。


「シグルイ」第八巻(山口貴由&南條範夫 秋田書店チャンピオンREDコミックス) Amazon bk1

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2007.03.20

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 さらばタコ入道…

 さて前回は三犬亡きいま会津七本槍のマスコットと言っても過言である(コミケで単独本も出てたという噂の)司馬一眼房が突然の大活躍。何というか、こう、フラグ立っちゃった? と心配になったものですが…

 と冒頭から繰り広げられるのは、清楚な未亡人が容貌魁偉なタコ入道の緊縛責めにあって悶え苦しむという、文章にしたら誤解を招きそうなサービス展開。とらわれのお沙和さんにとっては、生け捕りにしてこいという明成の命がなければ、その場で命を失ってもおかしくはない窮地ですが、あっさりと自分たちが領内にいたことを白状してしまうのはいかがなものか。
 と――そこで他の坊さんたちが何をしたかと言えば、命知らずにも一眼房に対して「タコ」コール。怒った一眼房がそれこそ茹で蛸のように真っ赤に怒れば、まるでピンポンダッシュのお子さまのようにひゃーっと逃げる有様…楽しそうだな、あんたら。しかし廉助打倒の引き金となった(σ・∀・)σ「阿呆はオマエ」(σ・∀・)σを考えれば、これもまた命がけであることは間違いありません。

 と、お沙和さんはその隙に刀を奪って、いまにも落ちそうだった吊り橋を、自分も乗っているにもかかわらず切り落とすという自爆覚悟の離れ業を披露。見ン事ザコ芦名衆は谷底に落ち、残ったのは一眼房のみで――さあ、死兆星が輝いて参りました!
 怒り狂った一眼房は、完全に殺す気満々で坊さんたちを追いかけて、鞭を大振り。そこに地面の下から一斉に現れたのは、六人のほりにょ――にしてもお笛、えらく髪が伸びたなあ。
 それはさておき、さしもの一眼房も一度に六人に不意打ちをかけられてはどうしようもない。何だかずいぶんワイルドさが増したお千絵に脳天カチ割られるという見事な惨死っぶりを晒すこととなりました。一方お沙和さんは文字通りのクリフハンガーですが、まあどうにでもなるでしょ。

 というわけで遂に蛇の目は二つとなってしまいましたが、今回はどう考えても薄氷の勝利。どの場面でも、一つ悪い方向に転がれば全員皆殺しとなってもおかしくない、かなりのバクチだったかと思います(個人的には、坊さんたちが見事に鞭をかわしたのにちょっと違和感でした)。相手のホームグラウンドでの戦いは、やはり一筋縄ではいかない、ということでしょうか。
 そして、死ぬ間際までタコタコと外見を揶揄されまくった挙げ句、無惨に嬲り殺しにされた末におそらくは猟奇的に死体を晒されるであろう司馬一眼房さんに合掌。

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2007.03.19

「天保異聞 妖奇士」 説二十三「印旛沼古堀筋御普請」

 鳥居が指揮する印旛沼工事の現場から逃げてきた少年。彼は黒坊主という妖怪が出没していると語り、助けを求めるが、鳥居失脚を図る幕閣の指示により、小笠原は出動を止める。それに逆らって印旛沼に向かった往壓たちが見たのは、奇怪な蝦蟇の姿に変じた人々だった。黒坊主は工事を中止させるための嘘だったが、妖夷は本当にいたのだ。印旛沼の過酷な工事が江戸の人々を救うという現実、妖夷に変じた人を救うにはその命を奪うしかないという現実――現実に絶望したアトルの思いが異界を開き、巨大な妖夷が出現する。

 最終三部作に突入した「天保異聞 妖奇士」ですが、ちょっと期待が大きすぎたのか、個人的にはいまいち…でした。
 救いを求め偽りの妖夷を拵えてまで江戸に出てきた少年、小笠原の命に背いてまで印旛沼に向かう往壓ら奇士、誰が悪いわけでもないのに誰かが傷つく現世に絶望するアトル、自分なりの信念の下にあえて汚れ役を持って任じる鳥居――それぞれの思惑が絡み合って重厚なドラマが生まれるはずが、どうにも個々の行動が性急で説得力がないように感じられました(もっとも、その中で鳥居のみは若本規夫の名演もあって好印象でした)。

 一番苦しいのは少年の行動で…幾ら重労働と疫病に苦しめられても、身内がああなった状態で、わざわざ江戸に出てでっちあげの妖夷話を広めようとするものかなあ、と。
 黒坊主については、先日の記事にも書いたとおり「史実」ではあるのですが、それに変に引っ張られてしまったかな、という印象がありました。

 もちろん、構成的に序破急で言えば「序」の部分であり、まだあれこれ言うのも早すぎますが、打ち切りの悲しさを吹き飛ばすくらいのものを期待していた身にとっては少し残念でした。
 もっとも、次回にはいよいよ「西の者」の正体とえどげんの関わりが明かされる模様。タイトルからすればあの後南朝由縁の者のようでがその頭領・赤松は…赤松氏範の血縁? いや赤松宮(興良親王)という線もあるのかな(もっともこちらは南朝と敵対しましたが)。何にせよ、アニメ作品で後南朝が登場するとは思いも寄らぬこと、伝奇者としては大いに楽しみにしたいと思います。


「天保異聞 妖奇士」第二巻(アニプレックス DVDソフト) Amazon

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 今週の天保異聞 妖奇士

 公式サイト

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2007.03.18

荒山徹 作品年表

 一週間に三回目の荒山ネタで恐縮ですが、こういうのはやる気があるうちにやっておいた方が良いので、荒山作品年表を。
 基本的にその作品でのメインの出来事があった年を挙げていますが、ものによっては開始年から終了年も書いています。ついでに関連になりそうな史実や他の作者の作品のことも参考までに。
 また、※がついているのは同一世界観(通称友景時空)の作品です。

1281(弘安04) 弘安の役
1283(弘安06) 「柳生大戦争」※(過去)
1443(嘉吉03) 「密書「しのぶもじずり」」(過去)
1506(永正03) 「柳と燕――暴君最期の日」
1592(天正20) 文禄の役 「耳塚賦」
 ~1622(元和08) 「サラン 哀しみを越えて」
1596(文禄05) 「太閤呪殺陣」
1597(慶長02) 慶長の役 「高麗秘帖」
1598(慶長03) 李舜臣没 「魔風海峡」「匠の風、翔ける」
1600(慶長05) 「巾車録」
1605(慶長10) 「柳生外道剣」
1606(慶長11) 柳生石舟斎没
1608(慶長13)~1623(元和09) 「柳生雨月抄」
1609(慶長14) 臨海君没
1615(元和01) 「鳳凰の黙示録」
1616(元和02) 「陰陽師・坂崎出羽守」
1617(元和03) 「故郷忘じたく候」
1625(寛永02) 「柳生薔薇剣」
1626(寛永03)~1637(寛永14) 「十兵衛両断」
1627(寛永04) 「柳生百合剣」
1636(寛永13) 「柳生大戦争」※(「柳生武芸帳」)
1639(寛永16) 柳生友矩没
1642(寛永19) 「何処か是れ他郷」(「柳生忍法帖」)
1646(正保03) 柳生宗矩没 「密書「しのぶもじずり」」(「魔界転生」)
1650(慶安03) 柳生十兵衛没
1656(明暦02) 「剣法正宗溯源」
1666(寛文06) 「服部半蔵秘録・金髪くノ一絶頂作戦」
1682(天和02) 「黒鍬忍者の密訴」
1811(文化08) 「魔岩伝説」
1850(嘉永03) 「其ノ一日」
1856(安政03) 「処刑御史」
1907(明治40) ハーグ密使事件
1909(明治42) 伊藤博文暗殺


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 「サラン 哀しみを越えて」 哀しみの先にあったもの
 「十兵衛両断」(1) 人外の魔と人中の魔
 「十兵衛両断」(2) 剣法、地獄。
 「十兵衛両断」(3) 剣と権の蜜と毒
 「柳生雨月抄」 これ何て民明書房?
 「柳生薔薇剣」 美しき剣の物語
 「柳生百合剣」第一回 …これはひどい
 「柳生百合剣」第二回 柳生新陰流! 最期の刻!
 新雑誌「KENZAN!」の荒山徹作品に一読三噴
 「柳生大戦争」第二回 これまさに大戦争?
 「密書「しのぶもじずり」」 荒山徹の単行本未収録短編その二
 「服部半蔵秘録」 荒山徹の単行本未収録短編その一
 「魔岩伝説」 荒山作品ここにあり! の快作
 「処刑御史」ノンストップアクションの快作、だけど…

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2007.03.17

「幕末機関説 いろはにほへと」 第二十三話「函館はあかく」

 度重なる任務失敗を詰られ、身分を剥奪された左京之介とチェス部隊は、最後の意地で榎本暗殺を決意し、五稜郭に潜入する。五稜郭最深部で榎本らを襲撃する左京之介らだが、土方と蒼鉄に次々と倒され、残る左京之介とクイーンは、ただ二人榎本に挑む。が、覇者の首の魔性の力に翻弄され、クイーンは恐怖に駆られて逃亡、それを首に操られるように左京之介は射殺してしまう。そして全てに絶望して自決せんとした左京之介の前に赫乃丈が現れ、それを優しく止める。一方、榎本に憑いた魔性を目の当たりにした土方は、耀次郎の行動に理解を示して…

 久々に神無左京之介が登場した――いや主役だった今回、しかし、左京之介ファンの黄色い悲鳴が色々な意味で聞こえてきそうなシーンの連続でした。
 冒頭、パークスにネチタラ嫌味を言われながら、用済みとばかりに身分剥奪され(一人一人の階級証を手ずからひっぺがしていくのが実に嫌らしい)、心にぽっかりと穴の開いてしまったチーム神無。チームの紅一点、メガネ巨乳セーラー服のクイーンなどは、たった二人で生きてきた兄が既に任務で死んでおり、虚しさはクライマックス。そんな寂しい彼女の前に現れた左京之介は、寂しいのはキミだけじゃないんだぜ、俺なんてサ…とばかりに陰のある男(実はマザコン)ぶりをアッピール。さらに「もしかしたら、俺は泣いているんじゃないのか…?」などと言いつつ目の前で無防備に大の字になったりして――お前寂しい女性の前でその行動は誘ってるだろ!? と言いたくなるような(耀次郎には間違えてもできないような)言動の連発で彼女のハートをキャッチ、そのまま二つの影は重なりあって…次の朝、シャツの胸元全開の左京之介と素足にセーラー服の上だけ着たクイーンの姿が何とも艶っぽい。

 そして潜入した先は、世界征服を企む榎本と蒼鉄先生の秘密基地(本当)。一体何の意味が!? と言いたくなるようなギミック満載の五稜郭最深部にいつの間にか潜入していたチーム神無は、まずは長剣の達人・ナイトが土方と対決。短いですが見応えのある剣戟の果てに破れ、満足げに倒れていったナイト…ある意味、彼が一番恵まれていたかもしれません。
 二番手・手榴弾使いのビショップは、ノリノリの蒼鉄先生を敵に回すという不運すぎるシチュエーション。ドSっぷりを発揮した蒼鉄先生に案の定散々翻弄された挙げ句、五稜郭の珍妙な仕掛けに引っかかって惨殺される有様。
 そして残るクイーンと左京之介の飛び道具カップルは、これまた相性最悪の榎本が相手。ある時はバリアーで、ある時は瞬間移動で悉く攻撃を無効化された二人は、初めて敵に回す人外の相手にガクブル状態、文字通り弓折れ矢尽きたクイーンは、恐慌を来して一人逃げだそうとしますが――榎本の魔性の囁きに狂わされ、自分の中に隠れていた母への憎悪を引き出された左京之介は、自分を残して逃げようとするクイーンに母の姿を重ね、銃を向けて引き金を――
 この番組一かもしれない悲痛なシーンの後、我に返って呆然とする左京之介の前に現れたのは、座長改め似非ジャンヌ・ダルク。その彼女に懺悔して左京之介は己の銃をこめかみに…ちょっ、もう勘弁して! と悲鳴を上げたくなりましたが、そこで似非ジャンヌに止められ、かろうじて存命。しかし自分の母と同じ顔で、しかも優しい似非ジャンヌ様に左京之介はもうメロメロで足に接吻状態…彼に幸せはあるのか。救いの神は無いのか。

 ちなみにその頃主人公は、キン肉星王族の戦闘スタイル似の覆面姿で市中を徘徊していただけ。ようやく榎本の異常さに気付いた土方が理解を示してくれたおかげで、少しだけ巧妙が見えたかも知れませんが…次回予告は土方が独占。一人で別の番組みたいなテンションです。大丈夫か、本当に…
 その次回のサブタイトルは「色は匂へど」。「いろはにほへと」という、内容と無関係に見えるこの作品のタイトルの謎が解ける?


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2007.03.16

「柳生百合剣」第二回 柳生新陰流! 最期の刻!

 先日「柳生大戦争」の感想を書いてすぐにこの「柳生百合剣」の感想を書くというのもまるで荒山ファンサイトみたいで困るのですが、出ちゃったものは仕方ない。豪の者揃いの荒山ファンをして心胆を寒からしめた連載第一回から三ヶ月、果たしていかなる惨劇が…と思いきや、これがかなり真っ当に面白かったのでした(以下、思い切りネタバレいたしますのでご注意を)。

 あまりのナニっぷりに前回ラストで座敷牢に閉じこめられてしまった十兵衛。彼が切歯扼腕するうちに思いもよらぬ「敵」の秘術が発動、あれよあれよという間に十兵衛を残して柳生新陰流が壊滅することに――いや本当に。
 その秘術こそは朝鮮渡来の妖術・断脈ノ術。呪う相手の流祖の遺骸に術を施すことにより、その流祖が後世に残した術が技芸が、あたかも時を遡って初めから無かったものの如く、失われるというこの妖術により、一夜にしてこの世から柳生新陰流が失われたのです――ただ一人、勘当されたことにより道統から外れた十兵衛を残して。
 己の依って立つ柳生新陰流を失ったことにより、さしもの宗矩もお手上げ状態。もはや「敵」の跳梁に打つ手なし…そこで十兵衛が最後の希望として颯爽と立ち上がるのですが、これは普通に格好良い。格好良すぎる。そりゃあ「彼」も真実の愛を捧げるわけです(この辺り「柳生大戦争」の方の今後の展開に影響を与えるかと思います)。

 そして、前回の腑抜けと呼ぶも生ぬるいダメ人間ぶりはどこへやら、勇躍柳生の里へ向かった十兵衛の前に姿を現す敵の正体…それは前回予想した通り、小野派一刀流。またそれを率いる怪老人・太祖様とはやはり伊藤一刀斎その人! 
 断脈ノ術を求めて朝鮮に渡った(もはやツッコミ無用)一刀斎は、遂に秘術を極めて帰国、病床の小野忠明に代わり小野派の麒麟児・小野忠也と共に柳生新陰流を打倒し、さらには将軍家光を弑しそうという大陰謀を企んでいたのでありました(やはり「鳳凰の黙示録」とは別世界のお話のようです)。
 その野望を阻むべく刃を抜いた十兵衛の前に立ち塞がるのは、もう一人の「のりか」…小野忠也の姉・典香。果たして十兵衛と典香の出会いは、この物語に何をもたらすというのか。そして秘密基地(と本当に説明されている)諏訪百合城で十兵衛の前に現れた陰謀の黒幕とは…

 ――面白い。普通に面白いですよこれ。前回アレ過ぎてさすがに怒られたのか、ヒーローとして大復活した十兵衛の姿は、上記の通り普通に格好良いことこの上ないですし、その彼をヒーローたらしめる背景設定としての柳生新陰流壊滅、いや消滅も、もとよりとんでもないものではあるのですが(ターミネーターを送り込むよか全然良いですが)、伝奇ものとしては大アリのアイディアかと思います。
 柳生新陰流vs小野一刀流という、剣豪ものとしては黄金カードについても、遂に出してきたか! という印象でありますし、更にラストに登場したあの人物(隆慶先生も大好きなあのお方!)に至っては、伝奇もののある意味常連の大物で、時代伝奇ファンとしてはたまらぬものがあります。
 前回あれだけ十兵衛を貶めてみせたのは、復活劇のためのタメだろうとは思いましたが、あの始まりからここまでもってくるとは、やっていることはアレでもさすがは荒山先生、その実力は端倪すべからざるものがあるかと思います。これは素直に次回が楽しみです。

 …まあ、そんなこと言っているとまだ次回で大惨事が発生して唖然とするんですけどね。


 いや、言うまでもなく今回も唖然とするネタは満載。以下、目に付いたものを挙げれば
○一刀斎の腹心・ゲンヨーサイ。やっぱりアレか、アレが元ネタなのでしょうか
○ゲンヨーサイと共に暗躍する外道剣士・ウラギリジョー。…これはあれか、さすがの私も許せんと思った、カリスマの欠片もなければリアルでやる気もなかったらしい甲賀弦之介役を演じた「生意気な若造役者をシメてやるっ!」ということかしら
○時代小説ファンであれば一度は使ってみたい名フレーズ「彼らを「敵」とするものに呪いあれ。(以下略)」を堂々とネタに。その後に「魔界転生」にもちゃっかり言及するのだから質が悪い
○十兵衛と、本作のキーになるであろう年増(江戸時代的意味で)ヒロインの典香さんを指しての表現が「柳生ロミオと小野ジュリエット」。やりやがった!
○今度は牧秀彦先生への言及が! 牧先生逃げて逃げてぇー!
 と、怪獣こそ登場しないものの(ゲンヨーサイならあるいは…)、先生は相変わらずですのでご安心を。

 また、一部では、既に荒山先生の脳内では「俺が山田風太郎なんだよ!」という状態になっているのではと囁かれておりましたが、作中で「風太郎十兵衛」「我が柳生十兵衛」という表現を使用しているのを鑑みるに、まだ彼我は分かたれているようで安心いたしました。
 …
 …「我が」?

 「ハハハハハ! 柳生ファミリーは最早我が手の内!」と哄笑する荒山先生の姿を一瞬幻視した気分になったことです。


「柳生百合剣」第二回(荒山徹 「小説トリッパー」 2007年春季号掲載) Amazon

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2007.03.15

「耳袋秘帖 赤鬼奉行根岸肥前」 赤鬼奉行、怪異に挑む

 その作家の新刊が出たらとりあえず買う、といういわば「作家買い」は、本好きの方であれば大抵の方がしているのではないかと思うのですが、私にとって風野真知雄先生はその対象の一人。この風野先生の最近の作品に多いのは、ご隠居もの――いや、引退していない主人公もいるので老境ものと言うべきでしょうか、すでに五十代六十代となった老武士を主人公とした内容のものです。
 そして本作「耳袋秘帖 赤鬼奉行根岸肥前」もそんな老境ものの一つに挙げても良いかも知れません。数え六十二歳にして南町奉行に就任した根岸肥前守鎮衛の活躍を描いた連作集です。

 さて根岸鎮衛と言えば、時代もの好き、いやむしろ奇談怪談好きであればお馴染みの人物。世間の様々な噂話などを記録し、その内容のユニークさから今なお語り継がれる巷説集「耳袋」を著したのが、この御仁です。宮部みゆき先生の「霊験お初」シリーズのお奉行様と言えばわかる方もいるでしょう。
 この物語は、その根岸肥前が南町奉行に就任するところから始まります。すでに隠居を考えてもよい年齢ながら、激務で知られる江戸町奉行職に任ぜられた根岸肥前は、自分なりの試みとして、叩き上げの同心で世知に長けた栗田と自らの家臣で堅物の坂巻を、世情を探るためのいわばお耳役として派遣、その二人が集めてきた市井の奇怪な五つの事件――しゃべる猫の怪、人を祟り殺す古井戸、幽霊となった小侍、八十三歳の新妻、死霊の言葉を語る巫女――に、根岸肥前は挑むことになります。

 根岸肥前が「耳袋」を著したのは上で述べたとおりですが、本作ではその「耳袋」に故あって記すことができなかったこれらの事件を、「秘帖耳袋」と題して根岸肥前が記していた…という趣向となっています。
 これら「秘帖耳袋」に記された物語に共通するのは、いずれも事件の陰に、程度の差こそあれ、人の心の暗部がわだかまっている点。その暗闇を、若い頃に無頼の暮らしを送り、それだけに人情の機微を知り尽くした根岸肥前が時にシリアスに、時にコミカルに裁いていく様が、本作の魅力の一つといえるでしょう。

 物語的には飛び抜けて斬新というわけではないですが、登場するキャラクターたち一人一人の個性がきちんと描かれており(それもわずか一、二行でキャラを立ててしまうのが見事)や、また「怪異」というユニークな味付けが効いて、実に良くできた、素直に面白い作品となっています。
 レーベルが実用文庫であるため、正直なところ本作の知名度はあまり高くないだろうな…と残念かつ心配に思いますが、この「耳袋秘帖」はシリーズとして何と三ヶ月連続刊行される由(すでに第二巻「八丁堀同心殺人事件」が発売されています)。まずはこれからも続刊を楽しみにして、紹介していきたいと思います。

 ちなみに――ネタバレを避けるためここでは伏せますが、本作第一話のラストは、物語の傾向が傾向だけに、ちょっとしたどんでん返しで驚かされたことで(最終話に入れた方がよりショッキングだったのではないか、という気がしないでもないですが…)。


赤鬼奉行根岸肥前(風野真知雄 大和書房だいわ文庫) Amazon bk1

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2007.03.14

「天保異聞 妖奇士」 説二十二「帰ってこないヨッパライ」

 江戸に水を酒にする妖夷が出現。江戸の水路を通じて神出鬼没の妖夷に、奇士たちは勝手が違い苦戦する。その頃、アトルは明後日には切腹するという侍・岡田と出会う。藩から詰め腹を切らされる岡田を逃がすため、豊川狐らの力を借りて異界の入り口を求めるアトル。そして往壓とアトルがそれぞれ辿り着いたのは、妖夷を生み出す発端となった少女だった。酒乱の父に苦しむ少女を更に追い詰めることは出来なかったアトルは、岡田の切腹に一人涙を流す…

 さて私は非常に楽しかった「天保異聞 妖奇士」も、今回を含めて残すところわずか四回…と、サブタイトルを見て、そんな時期にギャグ話かい!? と思いきや、蓋を開けてみればコメディ要素を多々含みつつも、その実ズドンと重たいテーマを内包した、いかにも本作らしい味わいの名作でありました。

 まずコメディパートの方に目を向ければ、水を酒に変じさせるという妖夷の出現に右往左往する奇士たちの姿が、これまでのキャラ立てを踏まえて実に楽しく描かれていて好印象。元々快楽主義者のえどげん、真面目なようでどこか抜けているアビもさることながら、小笠原様が、ある意味期待通りの壊れぶりでおいしいところを独り占めしていた感がありました。
大体コメディではこういう普段お堅い人間をいじった方が面白くなるわけですが、「策を講じた」と次々と微妙な作戦を考案しては破られていく姿は、何というかこう…萌え? こういうお頭を待っていた!

 そしてまたサービス方面でも抜かりはない今回、妖夷の攻撃で川に落ちたのをいいことに(?)奇士の野郎どもがうち揃ってふんどしをアッピールするふんどし男祭でありました。一方、唯一嫁入り前の娘であるところの宰蔵も、濡れ透け巫女という破壊力溢れるアイテムで存在感をアッピール(違 
 そんな宰蔵に対し、「嫁入り前の娘だぞ!!」「嫁入り先は探してやる!!」という漫才みたいな掛け合いを見せる往壓と小笠原様も、実にいい意味でのしょーもなさに溢れていて、その直後のアビのポンプ破壊も相まって、大いに笑わせていただきました。

 一方のシリアスパートでは、そんな大人たちのだらしなさと対照的に、藩の財政難を救うためにご禁制の竹を売ったことにより詰め腹を切らされる岡田を救うために奔走。岡田を救うために、鳥居様(今回の鳥居様は異人娘に諄々と道理を説いて聞かせる隠れた人格者ぶりでちょっと感心)に突撃しますが、言ってみればシステムが人を殺すということを知ってしまったがために、今度は異界の入り口を開いて岡田を逃がそうとします。
 この辺り、いささか唐突という感がなきにしもあらずですが、実際に異界の力を借りて現実から逃れた経験を持つ彼女であれば、さもあろうというところ。それよりも、今回のエピソードにより、大人たちが――いやその世界の人間たちが当然のものとして受け容れている現実へのカウンター、異議申立て者というアトルの立ち位置・役割というものがここに来てはっきり見えてきた感があります。

 そしてまた、そんな誰が悪いわけでもない、100%の解決が望めない問題にひとまずの区切りをつけるのが、世知に長けたおっさん・往壓というのは、物語の落とし所としては悪くないものであると、キャラクター配置の妙に感心いたしました。が、それと同時に、往壓の立ち位置ももっと早くこういう形で、理想と現実の――そして同時に異界と現実の――統合者という姿が描かれていればな、と口惜しく思ったのも正直なところではあるのですが…

 ちなみに今回は、上記の通り久々に豊川狐・バニラ狐が登場。アトルの求めに応じて助っ人役を務めるなど、一見気のいいように見せておいて、クライマックスでその艶やかさ・可愛らしさに似合わぬ邪悪さを見せることにより、結局は彼女たちが人間とは異なるメンタリティを持つ妖夷であることがきちんと描かれており、好感(?)が持てた次第です。


 ちなみに今回、竹島――今の竹島でない竹島――に絡めて領土問題の愚を笑うというところまで切り込んで見せたのもプロの技芸として面白かったのですが、竹島と聞くと脊髄反射的に「あれは宮本武蔵が…」とか思ってしまうので荒山ファンは困る。


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2007.03.13

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 頭脳派シバQ大暴れ?

 メインキャラクターも出そろい、いよいよ会津編も本編突入の感がある今週の「Y十M 柳生忍法帖」ですが、主役クラスの目立ち方をしたのは何と我らがシバQこと司馬一眼房。おニューの冬服まで登場して大活躍のシバQですが…
 会津領内に、どこかで聞いたようなフレーズの誹謗中傷が書かれた高札を立てまくるという陰湿な嫌がらせを繰り返す沢庵やほりにょ(たぶん)に腹を立てつつ、シバQ率いる無駄に個性的なルックスの芦名衆が行うのは、里娘の強制連行。どうやらおゆらさんのお陰で、あれだけいた雪地獄の女性たちも不足気味になったとのことですが、本人はバカ殿とアレしているのに、何で他の女性たちが消えてしまうのか。
 さあkwsk、超kwsk。…いや、何だか古の殷の紂王と妲己みたいなことしてそうなのでやっぱりいいです。

 さて一眼房たち、お江戸吉原ではお金を払って女衒めいたことをしておりましたが、会津ではとにかく無理矢理に女の子をかっさらう乱暴狼藉し放題。その兄たちが弓矢でもって止めようとすれば、シバQは無駄にスピード感のある見開きでもって魔鞭一閃、ただの一振りで何人もの男たちを血祭りに上げます。
 考えてみれば、その鞭を振るっての活躍(乱行)は物語冒頭の尼僧虐殺くらいであった司馬一眼房。それゆえ今までちゃんと考えたことはなかったですが、鞭というやつ、相当にイヤな得物であります。
 達人の振るう鞭の先端の速度は音速を超える、と何かで読みましたが、紛れもなく達人クラスの一眼房の鞭は、単なる鞭にあらず、既に一個の刃とでも言うべきものであることは、今回の描写を見ればわかるとおり。それでいて、その攻撃範囲は刀など及びもつかぬ広さを誇ります。
 七本槍の中の長射程組と言えば、既に倒された大道寺鉄斎の鎖鎌と平賀孫兵衛の長槍がありましたが、そのどちらも攻撃を行った後に懐に飛び込まれれば脆いという弱点があったのに対し、その速度に加え、どの部分が当たっても大ダメージを与えるであろう一眼房の鞭は、こちらで思う以上の戦闘力を秘めているように思います。

 そんな強敵一眼房の前に現れたのは、今にも落ちそうな吊り橋の上に立つ雲水たち。その中の一人が女性であるとすばやく見て取った一眼房、あたかも足場の悪く、脆い吊り橋上に誘う策と見て、その鞭でもって女人雲水を絡め取ります。
 思えば、剽悍無比の七本槍にあって一眼房は随一の頭脳派(単に他の連中がアレなだけとかガタガタ言わない)。微妙なテクニックが必要であろう鞭といい、その外見に似合わず存外に繊細な人間なのかも知れません。

 そんな人物分析はともかく、鞭に捕まったのはほりにょの一人、お沙和さん。ほりにょの中では、裁縫の腕前のことと、十兵衛女難の際に「わたし以外の…みんなに御親切なように思われてなりませぬ…」と可愛らしい(?)発言をしたほかにはあまり出番のなかったお沙和さん。果たしてシバQの鞭を相手にどんな(どっち方向の)活躍を見せてくれるのでしょうか。
 冷静に考えてみれば、逃げ場のない吊り橋の上で芦名衆を挑発するというのも愚の骨頂。なにがしかの策があるのではないかと思いますが…折角の冬服が死装束とならぬよう、一眼房には気をつけていただきたいものです。
 …って、何で会津側を応援しているのだ儂は。

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2007.03.12

今日の小ネタ 天保十四年印旛沼ほか

 今日のこねた。疲れているので色々とまとまりが全くありません。
印旛沼の怪獣
 先々週の「天保異聞 妖奇士」で、「西の者」が「次は印旛沼」などと言っていて、ちょっと気になりました。印旛沼…天保…妖怪…あ、自分でちゃんと書いていたよというわけで、天保十四年には印旛沼で怪物が出現した記録というものがしっかりと残っているのでありました。
 印旛沼掘割御普請の最中に出現したというこの怪物、妖怪やUMAファンにはそこそこ知られているのではないかと思いますが、何と言っても面白いのは、実に十三人を即死させたというその逸話もさることながら、その出現が公文書に記載されているという点(まあ、常識的に考えれば、怪物にかこつけて何かマズイことをごまかしたのだとは思いますが)。
 好き者としてはたまらないこの事件、まず間違いなく次回の「妖奇士」の元ネタになると思いますが、ちなみに現在残されているこの怪物の画像はこんなの
 …
 …スタッフの手腕に期待かな!


明智光秀が体に刀を刺させて戦うアクション!?『THE 落武者』
 何げに時代劇ネタも少なくない(そしてそのほとんど全てが地雷であるところの)PS2のSIMPLE2000シリーズの新作は「THE 落武者~怒獲武サムライ登場~」。本能寺で秀吉に嵌められた挙げ句、命を奪われた光秀が「M神様」の力で復活、髪サラサラの落武者ルックも眩しく、相手の攻撃を受ければ受けるほどパワーアップする「怒獲武(ドえむ)」の力でもって復讐に乗り出すということなのですが…
 一体、明智光秀がスタッフに対してどんな悪いことをしたというのか。お耽美青年にされたり殺人狂にされたかと思えば今度はドM野郎に…
 まあ、冷静に考えれば「サムライスピリッツ」などの怒りゲージの変態…いや変形ではあるのですが、それを珍妙な名前を付けてゲームのウリと言い張る姿は、往年の東宝東和の宣伝に通じる味わいがあるような気がしないでもなく、これはこれで愉快ではあります。個人的には「影風魔ハヤセ」の豪腕光秀様をちょっと思いだしたり。
 ちなみにアリバイ的にもう一人のプレイヤーキャラとして、無駄に露出度が高いくノ一が登場するようですが、こっちはまあどうでもいいです。むしろこちらの商品説明の末尾の一文「くノ一には特別なシステムは搭載していない。」が味わい深くてよろしい。


SKOMB「劇☆メタル」CDもうすぐ発売
 最後に劇団☆新感線絡みのネタを。新感線の音楽と言えばこの人! の岡崎司が、「メタルマクベス」にも出演していた冠徹弥と組んでの新ユニット“SKOMB”を結成(ちなみに名前は、[S]新感線+[K]冠 徹弥+[O]岡崎 司+[M]メタル+[B]バッテリーの略だそーです)過去の新感線の曲をメタルチューンしたアルバムを今月21日に発売するとのことです。
 収録曲はリンク先の下の方にありますが、八割方時代もの(…という名目でこのブログで取り上げております)、そしてそのラインナップがまたほとんど岡崎司ベストのベストとでも言うべきものになっていて、曲名を見ただけでかなりwktkできます。
 オリジナルに勝るものなし、という考え方もありますが、かつての名曲がどのような形で蘇ることになるのか、楽しみです。もちろん買いますよ、私は。


「大江戸ロケット」公式サイト
 最後のこねた。「天保異聞 妖奇士」のナニがアレするショックでしばらく忘れておりましたが、賢妹ケイト様からお知らせいただいたのに思い出して紹介。會川昇&劇団☆新幹線という伝奇時代劇ファンには夢のコラボの新番組「大江戸ロケット」の公式サイトです。
 しばらく放送局がわからず心配していたのですが、千葉テレビでも映るようで安心しました。ローカル局(と言って良いのかしら)メインではありますが、キャスト・スタッフ共に豪華で実に楽しみです。特に私の大晦日に訪ねてきてもらいたい人ナンバルワンであるところの橋本じゅんさんが、舞台と同じ役の声を当ててるしね! あと、番組は違うのに(脚本家は同じだけど)また鳥居耀蔵の声を当てる若本規夫とか…
 何はともあれ、この三月で「妖奇士」「いろはにほへと」が終わってしまい、毎週レビューするものがなくなってホッと残念に思っていましたが、今度はこちらにチャレンジいたしますかね。


 そうそう、も一つありました。以前某氏からお話のみ聞いていたのですが、ようやく新刊情報に掲載されたので。
 四月に「幕末機関説 いろはにほへと」のノベライゼーションが発売されます。もちろんが、書くのは、本作の殺陣を担当されている牧秀彦先生。「いろはにほへと」も牧先生もどちらもファンの私にとってはとても楽しみです。あの牧文体でどのように「いろはにほへと」の世界が描かれるのか。特に蒼鉄先生。

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2007.03.11

「幕末機関説 いろはにほへと」 第二十二話「北の邂逅」

 冒頭の如月影二のような覆面姿の耀次郎が愉快…などと暢気なことを思っていたら一気に物語が動き出した感のある今回。いかに吹っ切れたように見えても、いざ太刀の月涙刀を見ると暴走してしまう座長は、蒼鉄先生(やっぱりあんたか)に連れられてきた乱戦の中で早速暴走、耀次郎に斬りかかります。折角座長に対するイメージも良くなったのに…というか、座長とりあえず白月涙刀持ちなさんな。
 一方、こちらは吹っ切れたことで普段の鉄面皮ぶりを甦らせたか、ごく冷静に座長の攻撃(と二本の月涙刀の激突のデカすぎる衝撃波)に対処した耀次郎ですが、共和国軍と新政府軍の乱戦という、榎本暗殺には絶好の機会を逃してさっさと撤退。以後ほとんど出番なしなのが何というか。

 そして始まるのは、榎本による武士への、そして赫乃丈一座による民衆への一大アジテーション。国家とは何か? という点にまで踏み込んだ榎本と、それにシンクロしたと思しい座長の大演説を聴いていると、ああ本作も高橋良輔作品だなあという気がしないでもありません。
 それはさておき、このシーンを見ていると、耀次郎の相手にすべきものが、単なる榎本一個人、覇者の首という存在を超えて、国家という、巨大な、それでいて形の掴めぬ怪物になりつつあるのではないかという印象も受けます。そして蒼鉄先生が覇者の首を用いて真に生みたかったものは、この国家を産み出すムーブメント、一種の革命意識というものなのかな…とも。

 何はともあれ、耀次郎に赫乃丈一座、蒼鉄先生に榎本はもちろんのこと、ようやく榎本の異常さに気が付いた土方(遅い、遅いよ!)、最近すっかり忘れ去られつつもようやく登場した神無チーム(って、公式サイトの次回予告を見たら大変なことに…)、蒼鉄先生との関係も気になる琴波太夫に、あとおまけに座長に一方的にフラグを立ててるおぼこい鉄之助と、まさに五稜郭に役者は揃ったと言えます。
 気付いてみれば残るはあと四回。おそらくは五稜郭陥落と共に終幕となるであろうこの物語と登場人物たち(具体的には蒼鉄先生)の行く末を、最後まで心して見極めたいと思います。


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2007.03.10

「柳生大戦争」第二回 これまさに大戦争?

 十二日発売のはずが既に発売となっていた「KENZAN!」第二号。早速入手しましたが…今回の「柳生大戦争」もひどい。ひどすぎます。「荒山ファン」と胸を張って言いにくくなってきた(性的な意味で)昨今ですが、今回はそんなこちらの葛藤をハナっから無視して飛ばしまくる狂いぶりであります。今回の展開を簡単に表せば、男色⇒柳生⇒捏造⇒男色…の地獄コンボ。見よ満タンからこの減り!

 何せ冒頭からして「(あの名作をホモシーンを全カットしてお調子者の伝奇マニアしか喜ばないようなイイ話に変えやがった)生意気な漫画家コンビをシメてやる!」とばかりに濃密に描かれる友矩×家光の閨房のありさま。
 私はクリエーターの方には常に敬意を払いたい、罵詈雑言をもって当たるなどもってのほか、とは思っているのですが、どうにも我慢できないのであえて言わせていただければ、若竹じゃねえよバカ! バカ!
 いやはや、そのうち2chで「荒山徹のガイドライン」が立つんじゃないかという迷フレーズの連発に、笑えばいいのか怒ればいいのか非常に困惑しました。

 …と、いきなり乱れてしまいましたが、連載第一回では全貌が見えなかった「柳生大戦争」、この第二回で物語構造がかなりの部分見えてくることとなりました。物語の中心となるのは、これまで荒山柳生の中ではさしてスポットがあたることのなかった美剣士・柳生友矩であります。
 友矩の人となりについては本文で(先行作品を引いて!)説明されているので詳しくは省略しますが、柳生宗矩の子の中でも屈指の達人にして、徳川家光を虜にした美青年という、存在自体が伝奇キャラのような人物を描くにあたり、荒山先生はいかなるアプローチを試みたか――(というところで飛び出してきたのが、いつにもまして実在の柳生新陰流から刺客を送られかねないような内容の激烈ホモなのが業が深いというか何というか。先生密かに男色好きだよな)
 それはさておき、家光の寵愛の度が過ぎてついに宗矩に排除の意志を固めさせた友矩ですが、友矩は最後の願いとして父との真剣での立ち会いを望みます。さしもの宗矩も、従容たる友矩の姿を哀れと思い、息子との最初で最後の真剣勝負に臨むのですが…この荒山友矩、実は柳生新陰流にあらず、○○○○の流れを汲む幻の新陰流の達人。策士のくせに肝心なところで抜けている宗矩は、その剣の前に非道い目に遭わされることとなります。
 ちなみに、この○○○○を語るに際し、またも先行作品を引いての解説があるのですが、ここで戸部新十郎先生の名作短編を引いてくるあたり、出来ておる喃…とか思っていたら次のページで大惨事発生。
 私はクリエーターの方には(略)ゴメスじゃねえよバカ! バカ!

 …まあそれはいいとして、その日を境に友矩は何処かへ姿を消します…まあ、荒山作品で何処かへ、と言ったら一箇所しかないのですが、豈図らんや、彼の行動が第一回に登場した捏造文書と結びついて、柳生と朝鮮をそれぞれに危機に陥れることになるとは。
 詳細は語りませんが、この辺りの展開は時代もの、伝奇ものとして実に面白く、さすがに地力のある作家は違うわい、という印象。なるほど、冷静にバカデコレーションをはぎとって見てみれば、友矩の辿ることとなった運命は、剣と権に愛され、そして翻弄された、何とも哀しくそして残酷なものであり、その悲劇性たるや強く胸を打つものがあります。そして追いつめられた彼の取った行動は…なるほどその手があったか! と膝を打つものであり、本作品がスケールの点では荒山作品一となる可能性も出てきました。
 国と国、国と個、個と個の相克というものを、その時代ならでは、その時代でなくてはの舞台背景でもって絡めることについては、相変わらず見事としかいいようがなく、これだから荒山ファンは止められないんだよなあ。

 何はともあれ、第二回のラストで対決の構図も鮮明になり、なるほどこれはまさに「柳生大戦争」と感心した次第ですが、わざわざ「大戦争」と銘打っている以上、これで柳生勢が打ち止めとは限らないのが恐ろしいところではあります。本作は荒山作品中では友景時空の物語ということも今回明らかになっただけに、まだまだ油断はできません。
 個人的にはまだ怪獣のかの字も出てこないのが不満ですが、妖術師登場の伏線は張られており(というか上記の通り友景時空なので何でもアリではありますが)、これからいよいよ恐ろしいこととなるのでしょう。いよいよもって、今後の展開が楽しみになってきました。


 それにしても――今回つくづく感じさせられたのですが、荒山作品があれだけ朝鮮のことをクサしながらも嫌みさや不快感を生じさせないのは、例えるならば、「王様はハダカだよ!」って指さして笑っているヤツ自身が全裸(しかも何故か誇らしそうに)、みたいな印象が荒山先生から感じられるからなのでしょうね(まじめな話、日本を持ち上げるために朝鮮を貶めているわけでないところが大きいのだとは思いますが)。


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2007.03.09

「御隠居忍法 亡者の鐘」 御隠居、山中の陰に迫る

 何だか久しぶりな気もする「御隠居忍法」最新作は、元御庭番の御隠居・鹿間狸斎が、排他的な山中の寺領で起きた僧侶の死の謎に挑みます。
 今回の舞台は、御隠居の住まいのある村から山一つ向こうの天領。その山中で、江戸東叡山(寛永寺)から派遣された住持が、鐘つき堂の吊り鐘の下敷きになって死に、それ以来、その怨霊が夜中に鐘を鳴らすという噂が流れます。狸斎はかつての上役の紹介で江戸からやって来た青年武士に協力して、その「亡者の鐘」の謎と、住持の死の真相を追うこととなるのですが…

 江戸から遠く離れた地を舞台とするためか、これまでも地方特有の(?)閉鎖性が物語の随所に現れ、御隠居の手強い敵として立ち塞がってきた本シリーズですが、それは本作でも健在。
 天領に棲みながらも、極めて排他的で外界の人間に冷たい住人たちから、時に間接的に、時に直接的に妨害を受けて、御隠居は今回も孤独な戦いを強いられることになります。誰が本当の敵なのか、誰が本当のことを言っているのかわからないまま暗中模索を続ける御隠居の姿からは、本シリーズに共通の、乾いた味わいというべきものが感じられます。

 が…正直なところ、本作はかなり地味な印象があります。御隠居のアクションはいつもよりも抑え気味に感じられますし、結末で明かされる真相も、これまでのシリーズに比べるとかなり地味で…エンターテイメント的にはもっと盛り上げられるだけの材料があっただけに、少々残念です(もっとも、この盛り上がりをあえて避けるような流れも、高橋作品の味わいではあるのですが)。
 さらに付け加えれば、上記の印象には、今回御隠居が本来であれば四面楚歌の状況にも関わらず、危機感がいささか薄い点が影響を与えているようにも思えます。これはどの辺りから来ているのかな、と考えてみると――直接的にではなく、あくまでも間接的であるにせよ――御隠居が今回はほとんどの場面において幕府や代官所といった権威の側に立っていることから来ているのかな、と思わないでもありません。

 シリーズ自体の安定感は言うまでもないことなのですが、あまり主人公の立場に安定感が出てくるのもちょっと考え物なのかもしれませんね。


「御隠居忍法 亡者の鐘」(高橋義夫 中公文庫) Amazon bk1

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2007.03.08

「幕末機関説 いろはにほへと」 第二十一話「海峡渡る」

 最新鋭艦ストーンウォール号を手みやげに、蝦夷共和国に投降せんとする薩摩の黒田了介。その「甲鉄」には、箱館に渡るべく、聖天に依頼された西郷の口利きで耀次郎が乗船していた。ストーンウォール号受け取りのために宮古湾で黒田を出迎えた土方たち。が、全ては投降を偽装した黒田の罠であり、ガトリング砲の猛威の前に共和国側は次々と討たれていく。が、耀次郎は土方への射撃を妨害すると回天の土方に同行、耀次郎の重要さを語る西郷の言葉を思いだし黒田も彼を見逃すのだった。

 いわゆる宮古湾海戦の意外史ともいうべき今回。平均してみると作画面では正直あまり高いレベルではない本作ですが、その中でも今回はかなり低調な印象。特に今回主役格の活躍を見せた土方のキャラクターデザインが淡泊なだけに、作画が崩れるとたちどころに「誰!?」になってしまうという…
 元々作画アニメというわけでもありませんし、個人的には元々それほど気にする方ではないのですが、集中しての視聴を妨げるほどだったので文句を言ってみました。

 と、のっけからネガティブな話で恐縮ですが、そんな今回の物語をずいぶん救っていた感があるのは、黒田了介の豪快かつ生臭いキャラクター。酒乱の気があったという黒田らしく(?)登場シーンの半分くらい酒をくらっていたような印象がありますが、「この黒田了介を、蝦夷共和国は欲しくはないか!?」など、言動の端々に、豪傑的半面と策士的半面を持つ黒田のしたたかさが現れていて、なかなか魅力的なキャラクターに描かれていたかと思います。土方はさておき、またもとのだんまりに戻ってしまった耀次郎は完全に喰われていた感がありました(そもそも、箱館潜入の困難さが描かれていないため、耀次郎が黒田と同行する必然性が薄かったような…と、また文句言ってしまった)。

 ちなみに今回の蒼鉄先生、ほとんどただ一人、冷静に黒田の罠を見破っておきながら、それを指摘したら土方が「俺が行こう」と言い出したので、これも先生の策のうちかと思ってしまいましたよ。もう先生の一挙手一投足が油断ならなくて愉快です。しかも太夫を独り占め(?)
 その蒼鉄先生、次回予告ではまた穏やかならざることを言っていましたが…あっさり丸め込まれそうな座長が心配です。


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2007.03.07

「延暦十三年のフランケンシュタイン」 鏡としての超越者空海

 天才・山田正紀があの弘法大師空海の物語を伝奇的手法で描いた本作、以前から強く興味を持っていたのですが、ようやく読むことができました。
 本作は全四話からなる連作短編集のスタイル。「経師三嶋大人の告白」「沙門広達の回想」「偸盗千手丸の懺悔」「夢占師乙魚の夢解き」と、語り手を毎回変えながら、それぞれの角度で物語が展開されることによって、独自の空海像が浮かび上がることとなります。

 第一話「経師三嶋大人の告白」は、ふとした気の迷いから大盗・千手丸の一党に加わってしまった平凡な男の視点から、空海にまつわるこの奇怪な物語が語り起こされます。
 当時既に高名を馳せていた最澄を堕落させんとしながらもその法力の前に敗退した千手丸とその情婦・玉依。それでも再度の襲撃を図る彼らの前に現れたのが、生まれながらに強大な呪力と不思議な魅力を持つ青年・真魚でありました。結局、真魚の力で一矢報いながらも、再び破れた一党ですが、それがきっかけで真魚は仏道に入門する決意を固めます。が、仏道に専心するには彼の心は俗にすぎる。そこで彼は、呪術でもってもう一人の自分を造り、それに己の負の部分を押しつけようとするのですが…
 ここで登場するのが本作のタイトルである「延暦十三年のフランケンシュタイン」の由来である禁断の秘術。打ち捨てられた屍から新たな命を生み出すその術は、伝奇ファン・奇談ファンであればお馴染みのあの術でありますが、生まれたもう一人の真魚は、創造主である真魚を恐怖させると何処かへ消えて――

 以降、二人の真魚を巡り、物語が展開されていくこととなります。真魚が空海の幼名であることをご存知の方は多いと思いますが、さて本物の真魚と造られた真魚、一体どちらが後の空海となったのか? 後世に流布する大師伝説も絡んで物語は変転し、空海が入定するまで――いやその後に至るまで語られることとなります。
 ここで面白いのは、各話の語り手、さらには玉依や、千手丸のライバルである盗賊・蝮王など…物語の登場人物のほとんどが、真魚の存在により、大なり小なり運命を狂わされていること――それも、あたかも自分の中に、それまで知らなかった「もう一人の自分」が生まれたかのように。
 ここで一つ白状すると、恥ずかしながら私はメアリ・シェリーの「フランケンシュタイン」を未読なのであまり偉そうなことは言えないのですが、しかし本作はフランケンシュタインテーマというよりもむしろドッペルゲンガーテーマ、例えばポーの「ウィリアム・ウィルソン」などにに通じるものがあるように感じられた次第です。

 さらにも一つ聞いた風なことを言わせていただければ、本作の背景には、山田正紀お得意の「神」、超越者の影が揺曳しているやにも感じられます。
 山田作品の超越者は、単にそれ自体として描かれるよりもむしろ、それに対置される人間、平凡な人間の存在を映し出す鏡のような存在として描かれている(ことが多い)と常々感じていましたが、本作における空海の姿が、それに重なって見えてくるのです。単にその超常的能力のみならず、その仏道の巨人たる生きざまが常人を遙かに超えた超越者・空海に触れるとき、人は彼の中にもう一つの自分の姿、鏡像を見るのではないか、と…

 実を言えば本作は、空海の姿を描くと同時に、いやそれ以上に、語り手たちに代表される平安時代の平民、ごく一般的な普通の人間たちを描くことに力を注いでいる作品です。最初はそれに違和感を感じないでもなかったのですが、上記のように山田作品的超越者としての空海、鏡としての空海――そして本作では、超越者たらんとした空海自身が鏡像と化してしまうのが皮肉であり、魅力なのですが――の存在に気付いたとき、これもまた実に山田正紀らしい、ヒューマニティに満ちた作品であったと得心できた次第です。


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2007.03.06

「オヅヌ」第二巻 物語は「起」から「承」へ

 ようやく登場の「オヅヌ」第二巻は、比較的静かな展開だった第一巻に比べ、敵味方様々に動き出した印象のある展開。起承転結で言えば「起」から「承」に移るところとでも言えばよいでしょうか。
 冒頭から語られるのは、オヅヌたち「キ」の民の由来。キツネを思わせる獣と変化する彼ら「キ」の民の「キ」とは、漢字で表せば「麒」、その本地は…と、あれよあれよというまに物語が、いかにも朝松節の効いた超古代の日本史、いやアジア史へと繋がっていく様には感心させられました。

 その一方で蝦夷の居住地に逃れたオヅヌとゼン爺、コウは藤原不比人率いる兵士たちの攻撃の前に窮地に立たされますが…この場面でのアクションシーンがユニーク。
 初めは派手で大きな、しかしそれだけに無駄が多かったオヅヌのアクションが、戦闘中のゼン爺の指導により無駄のない洗練されたもの――ウケヒになっていくという、動きの変化が如実に見て取れるアクション設計で、なかなかに説得力のあるシーンとなっていたかと思います(ちなみに「ウケヒ」とは、誓約や、神意を問う儀式のことですが、ここで体術の名として使われているのが面白いですね)。
 画風的に梶原にき氏の画はかなりシンプルではあるのですが、ここではそれがプラスに働いて、アクションの骨格というものがはっきりと見えたのかな、という印象です。

 とはいえ――正直なところ、画的にはまだまだ…と感じさせられる部分があるのも正直なところ。特に物語を通じてのオヅヌの強大な敵になるであろう韓国広足の描写に、邪悪さのスケール感が感じられず、小才子といった趣になってしまっているのには、やはり不満があります(と、本当に小才子だったら心からお詫びいたします)。

 物語的には既に助走を終え、役者も揃った感のある本作。後は画が、物語の大きなポテンシャルを受け止め、能くこれを展開し得るかですが…この第二巻のラスト、ウノササラの情念が秘めていた情念を露わにするシーンなどを見ていると、心配するには及ばないかな、と感じているところです。

 しかし何と言いますか、こう、おかしな意味でなく不比人は可愛いね、どうも。


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2007.03.05

今週の「Y十M 柳生忍法帖」 魔人の弱点は何処に

 今週は一眼坊の裸の戦闘シーンがあるって聞いていたのにヽ(`Д´)ノ<某スレのウソバレにダマされた
 そ、それはともかく一週おいての今週の「Y十M 柳生忍法帖」のサブタイトルは、「銅伯夜がたり」。
 「つまり! 儂は天海と双子の兄弟だったんだよ!」
 「な なんだってー!!」(AA略)
という展開だった前回ですが、引き続いて銅伯が語るのは、さらにとんでもないお話。銅伯の命と天海の命は二つで一つ、銅伯が傷つけば天海も傷つき、天海が命を落とせば銅伯も命を落とすという…

 しかしこれは、裏を返せばどちらか一方が生き続ける限り、もう一方も生き残るということ。わかり易く言えば魔王サイコとサイコラーみたいなもんですな<全然わかりません
 なるほどいかに忍法とはいえ、銅伯があれほどの不死身性を発揮しているのは、この不可思議な命のつながりあってのことでしたか、と思わず納得…してよいものかわかりませんが、世の中には双子になるはずの兄弟と一体になって生まれたお陰で不老不死になったドジっ子もいるので、これもアリなのでしょう。
 しかし、自分の娘よりも長く生きることになるとは、これはもう一種の呪いと言うべきもののようにも思えますが…

 それはともかく、もちろんこれは、不死身の銅伯の唯一の弱み。いかに強大な忍法・武術があろうとも、天海の方を相手にされたら一方的にダメージを受けてしまうわけで…さしもの銅伯も、明成や三本槍に口止めしています。
 が、これは幾ら何でも銅伯の気の回しすぎ。自分たちのような横紙破りの無道者ならば格別、徳川将軍家三代の帰依厚く、また政治面でも徳川幕府を支える僧正は、言ってみれば士道・仏法両面にわたって徳川家にとって守護神のごとき大柱石。如何に江戸の耳目をうばった大悪業に天誅を加えるためとはいえ所詮は私事、私闘…銅伯の命と引き替えに天海の命を――天下の仏法、徳川家の士道を引き替えにしようという人間が、この時代、この場合にいるとは思えません。

 そんな厄介な状況になっているとは露知らず、十兵衛先生は城の大手門に般若面を打ち付けるという陰湿ないやがらせをしてよろこんでいるありさま。天海と坊さんズ+おとねさんと、ほりにょたちは別行動となった様子ですし、果たしてこんな調子で一国そのものに立ち向かうことはできるのでしょうか、というところで以下次号。

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「修羅の刻 陸奥天兵の章」(再録)

 歴史の陰に陸奥あり、様々な時代での陸奥圓明流伝承者の闘いを描いた「修羅の刻」シリーズも、ぐっと時代が下って明治時代。今回陸奥と対峙するのは、かの姿三四郎のモデルである西郷四郎です。

 このシリーズは、陸奥自身が主人公というよりも、陸奥を狂言回しにある時代や人物を描くという性格があって、特に最近は顕著なのですが、今回も主人公である陸奥天兵(幕末編の主人公・出海の息子)はむしろ遠景にあって、柔道という新たな道を往きつつも、自らの中の鬼のために道を踏み外していく四郎が主役、と言えます。

 ストーリーはいたってシンプル。嘉納治五郎に入門し、講道館四天王として頭角を現していく四郎が、かつて一度だけ出会い、その技に戦慄した“陸奥”、陸奥天兵と再会し、自らの未来を擲ってまで天兵と野試合を行う、というもの。しかもドラマ部分の大半は前半で消化で、後半100ページ近くはひたすら二人のガチ勝負というから嬉しい話です。
 これでもかこれでもか、これでもまだ足りないかとばかりに、二人が文字通り死力を尽くしてぶつかり合う様は――「修羅の門」がそうであったように――ダイナミックな中にむしろ荘厳さすら感じさせる描写で、しばらくこの作者の格闘漫画に飢えていた身にとしては大いに満足しました。
 伝奇的にも、奥の手を使い果たしたかに見えた四郎がついに見せる真の秘術と西郷姓の秘密、という大いに盛り上がるネタがあり(まあ、最後まで柔道を使って欲しかった、という気もしますが)、楽しめました。

 欲を言えば、明治という闘いのなくなった時代に、なお闘いを求める四郎の、格闘家の、哀しさや業というものがもっと強く描かれていても良かったとは思いますが(四郎に敗れて身を持ち崩していく柔術家がそれを象徴しているわけではあるのですが)、これだけ格闘一本で楽しまされれば、あまり贅沢はいいません。壮大なファンタジーもよいですが、またこういう一対一のゴツゴツした闘いも描いていただきたいものです。


「修羅の刻 陸奥天兵の章」(川原正敏 講談社月刊マガジンKC 「修羅の刻」第14巻所収) Amazon bk1

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2007.03.04

「天保異聞 妖奇士」 説二十一「星夜に果つ」

 新潟沖で密貿易船を急襲した新潟奉行の手勢。だがそれに乗っていた「西の者」は異国渡りの魔物と漢神を組み合わせて妖夷・西牙を創造、役人の一人はそれに憑かれて天空に姿を消す。そして江戸の町で美女ばかりが襲撃される事件が続発、犠牲者はいずれも自らも人の血を求める怪物と化していた。アトルと宰蔵を囮にして探索に乗り出した奇士だが、西牙が狙ったのは元閥だった。西牙を追いつめた元閥だが、「西の者」の姿に動揺して西牙の爪にかかり、天空に連れ去られる。雲七と共に後を追った往壓は駁竜に変化、元閥との連携で西牙を倒すのだった。

 さて…後番組の予告も始まって、ファンとしては何ともどよ~んとした空気になってしまうところですが、本編の方は相変わらず面白い。今回は
・異国渡りの妖夷(のミイラ)と漢神のハイブリッド
・日光編以来久しぶりの「西の者」
・美女ばかり狙う妖夷の真意
・その「西の者」と何やら因縁のあるらしいえどげん
・「西の者」の暗躍を隠蔽しようとする鳥居
・往壓のことを意識しまくってる宰蔵
・御庭番の「明楽」キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
と盛り沢山の内容(最後のはわかる人だけわかって下さいな)でしたが、なんと一話完結。これだけの要素に加え、アホの子モードの宰蔵のギャグシーン(アトルの( ´,_ゝ`)プッ付き)まで入っていて、一話でやるにはちょっと厳しいようにも思えますが、それでもきっちりまとめてみせたのには感心しました(こうやってみると、シリーズ序盤のゆったりした展開は、ちょっとのんびりしすぎたかな…という気分はやはり否めませんね。あれはあれで好きなのですが)。

 中でも特に印象的かつ今後の展開に大きく影響しそうなのは、「西の者」の暗躍と、彼らと何らかのつながりを持つらしいえどげんの存在。考えてみれば一番謎めいた存在ながらこれまでその過去が語られてこなかったえどげんですが、「西の者」の頭領を知っており、かつ「西の者からは逃れることはできない」という彼自身の言葉からすると、やはり…という感じですが、さてどうなることでしょう。そもそも、わざわざ異国から吸血鬼を輸入した「西の者」は何を企んでいたのか…という気もしますが。

 その一方で、まるでその「西の者」の行動を隠蔽する鳥居の真意も謎です。蘭学を退け、日本古来の神に興味を持つように思われる鳥居であれば、日本古来の存在であろう「地の神」を復活させようとする「西の者」は思想的に近しいようにも思えます。が、その一方で「西の者」の行動は明らかに反徳川的であり、その点で前回往壓に徳川を救えと語りかけた鳥居の立場とは明らかに異なっていると言えるでしょう。それなのに何故彼らを庇うかのように隠蔽するのか…
 次は印旛沼、という言葉を残して消えた「西の者」。確かにこの年鳥居は勘定奉行を兼ね、印旛沼開削工事を担当することになりますが…果たしてその背後にどのような伝奇的事実が描かれることになるのか、楽しみ――なんですが果たしてそこまで描けるのかしらん。

 しかも次回は「帰ってこないヨッパライ」なるどうみてもギャグ編的なタイトル(あらすじを見るに実はヘビーな話にもなりそうですが)で、全く先が読めない「妖奇士」。とりあえずここは腹をくくって最後まで楽しみたいと思います。次回はえどげんと並ぶ本作屈指の美人さん・豊川狐も登場するようですし――


「天保異聞 妖奇士」第一巻(アニプレックス DVDソフト) 通常版 限定版

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「黄金の明星」(再録)

 幼い頃に漂流し、アメリカ船の奴隷として育ってきた少年サム。ペリー艦隊の一隻として日本近海を訪れたサムは、故郷を一目見るために船を脱走するが、そんな彼を救ったのは深川安楽亭の面々だった。黒船来航を予期して阿部老中の黙認の下、江戸裏出島に設けられた安楽亭。持ち前のバイタリティで安楽亭にとけ込むサムだが、そんな彼らを敵視する井伊直弼配下の魔の手が伸びようとしていた…

 創刊以来非常に微妙な線を行く「コミックバンチ」で連載されていた時代コミック。何と言っても「裏出島」という馬鹿馬鹿しくも浪漫溢れるワードと、主人公サムのバイタリティが新鮮だった第一話以来注目して読んでいたのですが、この度単行本にまとまったので再び読み返しました。

 やはり第一話に満ちあふれている輝きというか、疾走感というのは何度読み返してみても見事で、理想の第一話と言えると思うのですが、その後の展開で人情物としてもアクション物としても少々中途半端になってしまったのは残念。
 特に終盤は急に物語をまとめにかかってドタバタとした展開で(サムに先導されて史上最強に悪人面のペリーの船に突入するそこらの漁民軍団とか、私的にかなりヒットではありますが)、あっさり敵(=ペリーさん)が改心して終わった上に安っぽい民族派のアジ演説みたいなメッセージで幕という有様で、せめてあと一巻分続いていれば…と残念でなりません。途中、いかにもバンチ的な濃さと暑苦しさ…いや熱さがあっただけになおさら。

 それにしてもこの作品の原案が山本周五郎の「深川安楽亭」というのは、ある意味石川賢並みの無茶っぷりではありますが、このバイタリティはなかなか伝奇的で、またこのようないい意味での馬鹿作品の登場を期待する次第ではあります。


「黄金の明星」全2巻(武喜仁&二橋進吾 新潮社バンチコミックス) Amazon bk1

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2007.03.03

「幕末機関説 いろはにほへと」 第二十話「波浪ありて」

 陸奥国岩磯村に流れ着き、漁師の妻子に世話を受ける耀次郎だが、赫乃丈に斬られた記憶に苦しむ。が、かつて家族を海で失いながらも、その海を理解し、海で暮らしていこうとする漁師の妻の姿に、己の姿を重ね、宿命の何たるかを知るべく再び立ち上がるのだった。一方、榎本軍は福山城を攻略、蝦夷共和国が樹立されるが、蒼鉄はなおも何事かを企む様子を見せる…

 座長復活編に続き、耀次郎復活編。が、前回に比べると色々な意味で地味なのが何とも耀次郎らしい展開です。
 微妙にガッツ系の東北弁も見事な未亡人(違 に拾われた耀次郎は、恵みと同時に死をももたらす海と暮らす彼女から、避けえぬものであれば自らそれを理解し、乗り越えようとする姿勢を学び、立ち上がることになります。
 「己が宿命を憎んだことなどない。嫌ったことも呪ったこともただの一度も。 当たり前のように目の前にあったこの刀のように」と語る耀次郎ですが、それは宿命を受け入れているように見えて、ある意味己の宿命を無視しているとも言える状態。宿命を共にするはずだった座長に斬られたことが、初めて彼にそれを自覚させたのでしょう。
 そしてそれを乗り越える、受け入れようと努めるきっかけになったのが、己と全く無縁の場所と世界に生きる女性の生きざまであったことは、意外なようでいて納得できるものがありました。本当に地味な展開ではあるのですが。

 また、その己の宿命への無自覚さが、これまで非常に気になってきた耀次郎のキャラの薄さに重なってくる様に感心しつつ、それ故のキャラの薄さだったのか、と気付かされたのですが、しかしこれは買いかぶりすぎかもしれません。
 結局、これまでの耀次郎のキャラの描き込み不足が響いて、今回は物語構成に面白さは感じましたが、物語展開にカタルシスは感じられなかった、というのが正直な感想です。

 また、今回のもう一方のクライマックスと言える福山城攻略は、前回とは雲泥の差の作画・動きでテンションも上がらず(スタッフを見たら三文字名前がずらりと…)。何故土方があれほど榎本を信じているかも今一つ説得力がなかったこともあって、こちらもカタルシスは感じられませんでした。
 まあ、濃霧の中からの超精密艦砲射撃で城門を直接ブチ壊す榎本の豪快すぎる攻撃は愉快でしたが…あと、キメキメで「幕は、まだまだ先の先。我が共和国は蝦夷にあらず」などと気を持たせてくれる蒼鉄先生が相変わらず素敵でした。

 さて、そんなこんなのうちに物語も終盤。気付いてみれば覇者の首が憑いたターゲットはあれよあれよという間に一国の総裁に。おそらくは最後の舞台となるであろう五稜郭を舞台に、いかなる物語が展開されることでありましょうか。
 そして次回、またも実在の大物・黒田了介(清隆)が登場…なるほど、ここで耀次郎は仙頭左馬之介と出会うのか<出会いません


「幕末機関説 いろはにほへと」第二巻(バンダイビジュアル DVDソフト) Amazon

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2007.03.02

「乱飛乱外」第三巻 今度は柳生の剣豪姫?

 戦国くノ一アクションラブコメディ「乱飛乱外」の第三巻が発売されました。前の巻のアイドル姫の次は、柳生の剣豪姫がターゲット(って書くといかがわしいな…)です。
 柳生といえばあの柳生、当然(?)その姫もただ者ではなく、まだ年端もいかぬ少女ながら、剣の達人にして超ワイルド(でもツンデレ)。しかも柳生の庄では二十年に一度の世継ぎの試練――バトルロワイヤルにトーナメント戦と、要するに潰し合いの血風吹き荒れる中、主人公・雷蔵は、何故かその出場者の一人(兼姫のお付き)として戦う羽目となります。

 まだ三巻ながら、既にキャラ立ちの安定感といい、アクションやギャグの切れといい、堂々としたもので、安心して読める本作、特に雷蔵を慕うかがりのけなげさ、可愛さは相変わらず。今回は故あってはしたない痴女装束を着せられた挙げ句、雷蔵と戦わされるという大変な出番もあって、本当にこの子には幸せになって欲しいねえ…と何だか親になったような気分で見守ってしまいたくなりました。
(それにしてもこれだけきわどい格好やらシーンを描いてもイヤらしくならないのは実に見事かと思います。そういう意味ではせがわまさき先生の対極にあるかと)

 が、この巻は個人的にはちょっとなあ…というのが正直なところ。一言で言えば、ちょっと血なまぐさすぎたなあ、といったところでしょうか。もちろんこれまでも人死にはありましたが、ちょっと今回は真剣勝負の連続で流血シーンが多く、コメディパートとの差が気になってしまいました。
 もう一つ――こちらの方が大きいのですが――この巻のヒロイン・飯綱姫があまりに雷蔵にデレ過ぎというか…ちょっと心を許すのが早すぎるんではないのかなあ、という点が気になりました。もちろん、周囲からの愛情に飢えた孤独な少女、という基本設定はあるのですが、いわば本作のキモの一つである部分、雷蔵が如何にして姫の心を開かせるか、という点にちょっと書き込みが足りないような気がいたしました。
(もう一つ、柳生周辺の描写については突っ込みたいところが山ほどあるのですが、さすがにこれは野暮というものでしょう)

 しかし、この巻のラストで飯綱姫の語る言葉は実に切なくも美しく――やっぱりうまいなあと感心させられてしまったのでありました。
 次に現れる姫はどんな人物か。かがりの、この巻ではほとんど小姑だった如火と姫丸の活躍は。そしてこの巻では巻末四コマしか登場できなかった凶悪ロリ忍者・みずちの出番はあるのか、この先も楽しみしているところです。


「乱飛乱外」第三巻(田中ほさな 講談社シリウスKC) Amazon bk1

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2007.03.01

「寝小魔夜伽草子」 黒と白の狭間で蠢く妖の世界

 「コミック乱」誌に連載された的場健氏による漫画「寝小魔夜伽草子」。何やら艶っぽいタイトルですが、大丈夫(?)、諸国流浪のお姐さんが、龍脈の乱れに乗じる妖しと対決する時代ファンタジー漫画です。

 主人公のお玉さんは、龍脈を監視し、各地の妖を鎮める組織に属する女性。江戸時代の感覚で言えば中年増といったところでしょうか、きっぷが良くてサッパリした気性の美人という、江戸っ子好みなお姐さんです。
 その彼女が風任せの旅先で出会うのは、いずれも不可思議で怪奇な事件。実はその背後には、日本の地脈の流れ、龍脈を乱し、我が者にせんとする何者かの陰謀が…というのが本作の基本設定です。

 その本作で描かれるのは、いずれも超自然的事件ではありますが、そのきっかけとなるのは、決して神や妖の側の事情ばかりではなく、むしろ大部分が人間の欲望によるもの。人間の不遜な、あるいは醜い欲望に怒る神や妖を鎮め、人と妖の世界双方を平穏に保つため、お玉さんが活躍することとなります。
 そんな物語であるために、描かれる内容は時として陰惨なものともなりますが、そこをお玉さんの明るい個性が救っており、読後感は決して悪くありません。

 そして…そんなお玉さんのキャラクターと物語を飾るのが、本作の最大の魅力とも言うべき、その黒と白のコントラストも鮮やかな絵。光と闇をくっきりと描き分けたその美しい絵は、そのまま人の世界と妖の世界という二つの世界につながって、その狭間で起こる事件を妖しく、美しく浮かび上がらせています。
 本書を開いてその絵に目を奪われ、そのままご購入、という読者の方も多かったのではないかと想像します。

 そんな本作ですが、雑誌連載はすでに終了。本作の大きなストーリーも、一応ひと段落ついてはいます。しかしながら、絵もキャラクターも魅力的な本作、まだまだ終わらせるのは惜しいし、幾らでも続編を描くことはできるでしょう。いつかまた、お玉さんの旅姿を拝みたいものです。


「寝小魔夜伽草子」(的場健 リイド社SPコミックス) Amazon bk1

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