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2007.03.22

「コミック乱 四月号増刊」 新たなる時代コミックの息吹

 リイド社の「コミック乱」誌の四月号増刊が発売となっていました。同誌の増刊と言えば、現「コミック乱ツインズ」誌が一本立ちしていますが、こうして新しい増刊が発刊されるというのは、それだけ需要があるということなのでしょう。新たなる時代コミックの息吹、まずはめでたいことです。
 以下、個人的に印象に残った作品など。

「巷説百物語」(日高建男&京極夏彦)
 ご存じ京極先生の原作を、「満腹ボクサー徳川。」の日高氏が漫画化した第二弾。今回の漫画化は、「続巷説百物語」の第一話「野鉄砲」からで、一月発売の「コミック乱」本誌の方に掲載されたシリーズ第一弾が「巷説百物語」の第一話「小豆洗い」を原作にしていたのを考えると、随分と飛んだものという気もしますが、まあそれは細かい話。
 こうして絵にしてみると、少々強引な話だったのだな、ということに気づかされますが、日高氏の丹念な人物描写(闇の中での又市と治平の会話シーンでは、彼らを包む闇の重さが感じられてお見事)のおかげで、良くできたドラマになっていたかと思います。個人的には、漫画なのに地の文が多いのには気になりましたが…
 今後もこの増刊でシリーズは掲載されていくようなので楽しみにしたいところです。

「剣豪列伝 柳生石舟斎」(とみ新蔵)
 とみ先生の柳生もの、今回は柳生新陰流の太祖たる柳生石舟斎宗厳が題材。超人的な師・上泉伊勢守の下で修業を積みながらも、国盗りの技である大兵法と武芸の道たる小兵法の間で苦しむ宗厳の姿が、氏独特の端正かつ生々しい筆で描かれています。
 とにかく、師の見せた新陰流水月の境地に一向にたどり着けず暴れまくる宗厳の人間の出来てなさが微笑ましくも切なく、それだけに、懊悩の果てに開眼した彼の姿が一層際だっているかと思います。
 そして圧巻は、廻国の旅の末に再び現れた上泉伊勢守と宗厳が対峙するシーン。宗厳の姿を一目見るなり、「儂は…おことを斬りとうなった」と刀を抜く上泉伊勢守と、それを迎える宗厳の姿が実に印象的でした。あの有名な、石舟斎の号の元となった和歌が、また違った意味で見えてくる結末もまた見事です。

「もやしもん 増刊コミック乱出張編」(石川雅之)
 あの「もやしもん」です、はい。リイド社とは縁浅からぬ作者ですが、これはちょっと意表を突かれました。内容的には、いつもの菌類たちがダベっているだけなのですが、たった六ページながら、有史以来の日本人とこうじかびの関わりを描いた上に、人間のレギュラーキャラの顔見せもやっていて、本編の導入編としての役割をきっちりと果たしていたのに感心しました。

「夜明けの晩に」(橋本還)
 とある瓦版屋に現れた渡世人姿の男、実は隠密配下の元・人斬りが語る、己が人斬りを辞めるに至った物語という設定のこの作品。「魔人戦記 破軍」を描いている方だと思いますが(いつも思うんですが「コミック乱」系は面白いところから新しい血を連れてくると思います)、なかなか達者な絵柄で女性キャラは艶っぽく、物語の内容にうまくマッチしていたかと思います。殺し屋とターゲットの馴染みの遊女との悲恋というのは、正直よくあるパターンではありますが、手堅い描写でまとめた上で、主人公がこの先歩むであろう修羅道をラスト一ページで示す手法が強く印象に残りました。

「デーモンの弟子」(森本サンゴ)
 ジョサイア・コンドルと「画鬼」(Demon of Painting)こと河鍋暁斎の出会いをコミカルに描く掌編。まさしく絵に鬼のような執着を見せる暁斎と、ピュアなコンドルの凸凹コンビが何とも微笑ましい作品でした。にしてもここの暁斎は随分凶悪な顔だなあ…


「コミック乱 四月号増刊」(日高建男&京極夏彦ほか リイド社)

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