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2007.03.04

「黄金の明星」(再録)

 幼い頃に漂流し、アメリカ船の奴隷として育ってきた少年サム。ペリー艦隊の一隻として日本近海を訪れたサムは、故郷を一目見るために船を脱走するが、そんな彼を救ったのは深川安楽亭の面々だった。黒船来航を予期して阿部老中の黙認の下、江戸裏出島に設けられた安楽亭。持ち前のバイタリティで安楽亭にとけ込むサムだが、そんな彼らを敵視する井伊直弼配下の魔の手が伸びようとしていた…

 創刊以来非常に微妙な線を行く「コミックバンチ」で連載されていた時代コミック。何と言っても「裏出島」という馬鹿馬鹿しくも浪漫溢れるワードと、主人公サムのバイタリティが新鮮だった第一話以来注目して読んでいたのですが、この度単行本にまとまったので再び読み返しました。

 やはり第一話に満ちあふれている輝きというか、疾走感というのは何度読み返してみても見事で、理想の第一話と言えると思うのですが、その後の展開で人情物としてもアクション物としても少々中途半端になってしまったのは残念。
 特に終盤は急に物語をまとめにかかってドタバタとした展開で(サムに先導されて史上最強に悪人面のペリーの船に突入するそこらの漁民軍団とか、私的にかなりヒットではありますが)、あっさり敵(=ペリーさん)が改心して終わった上に安っぽい民族派のアジ演説みたいなメッセージで幕という有様で、せめてあと一巻分続いていれば…と残念でなりません。途中、いかにもバンチ的な濃さと暑苦しさ…いや熱さがあっただけになおさら。

 それにしてもこの作品の原案が山本周五郎の「深川安楽亭」というのは、ある意味石川賢並みの無茶っぷりではありますが、このバイタリティはなかなか伝奇的で、またこのようないい意味での馬鹿作品の登場を期待する次第ではあります。


「黄金の明星」全2巻(武喜仁&二橋進吾 新潮社バンチコミックス) Amazon bk1

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