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2007.04.09

「武死道」第三巻 大義持つ者持たぬ者

 朝松健先生の大蝦夷ウェスタン「旋風伝」を原作としたバイオレンス・アクション「武死道」の最新刊です。明治初頭の蝦夷地を舞台としたマカロニ・ウェスタンである原作が、ヒロモト世界と化学反応を起こした本作、以前にも書きましたがこの巻も「すげえもん見た!」としか言いようのないインパクトです。

 新選組の生き残り・原田佐ノ助との出会いにより、「そるじゃあ」として生きる覚悟を決めた新之介。しかし彼に欠けていたのは、生きるための強烈な行動原理――大義でありました。
 そんな彼が悩んでいる頃、黒田清隆はロシアの密偵と結び、蝦夷地、ひいては日本の支配に向けて、秘密鉱山でアイヌ人を使って硝石の採掘を目論みます。一方、アメリカ政府の刺客ワーナーブラザーズも活動を開始。黒田の配下となった宿敵・仙頭左馬ノ助にさらわれたヒロイン・アギを追って新之介と左之助らも秘密工場に向かい、そこで巻き起こるのは当然ながらバイオレンスまたバイオレンスの大乱闘――

 とにかく登場する連中が主人公とヒロインとあと少しを除いて全員悪人面という本作。もちろん悪いのは面だけではなく、基本的に善人は存在しない世界ですが、ヒロモト作品で善悪を云々するのが間違いであるのは言うまでもないところ。そこにあるのは、ただ強烈に己の道を往こうとする意志――本作で言えば大義――のみであり、そのぶつかり合いが暴力という形となるのは、むしろ当然と言えるかもしれません。

 その意味で、この巻で主役級の活躍(?)を見せる黒田清隆はまさしくヒロモト世界の住人。その思想と所業は間違えても賛同できるものではなく、支離滅裂ですらありますが、彼もまた、紛れもなく彼自身の大義を持って生きる男であり、時としてそれが魅力的に映ります(「ステーキの血では消せぬ血を浴びた男のようだ…」という黒田評がまた素晴らしい)。
 本作に登場する実在の人物、すなわち土方・原田・黒田は、いずれもヒロモトキャラらしいブッ飛んだ行動を見せながらも、その根底では、我々が持つその人物のイメージをきちんと踏まえているのは、驚くべきことであり、かつ讃えるべきことかと思います。

 そんな大義を持った男たちに対し、持たない新之介はいかにも非力。果たしてこの巻で起きた悲劇が、彼に大義を与えるのでしょうか。
 思えば物語の冒頭から悩み迷い続けてきた新之介。その彼が己の進むべき道を見出すとき…それが本作の一つのゴールなのかもしれません。そしてラストのアギの言葉を見れば、そのゴールが原作と重なる形になっていくのではないか――そんな気がします。


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