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2007.04.20

「柳生十兵衛七番勝負 最後の戦い」 第三回「孝養の剣」

 さて「柳生十兵衛七番勝負 最後の戦い」。いきなりぶっちゃけますが、私は本作の、というか本シリーズでは主役よりもむしろ敵役の生き様の方に興味を覚え、共感したりするのですが、今回はそんな私には涙涙の展開。これだけ十兵衛が憎たらしく見えたことはないよ! と思わずアホみたいに熱くなってしまいました。

 今回の十兵衛の敵は、宿敵正雪の兄・吉岡。長子として生まれながら通っていた道場の主の養子となり(やっぱり紺屋だから「吉岡」なのかなあ)、武士となった人物ですが、自分が先に家を出たにもかかわらず、家を継がず兄の後に家を出て軍学者になった弟を母が悪し様に言うのに心を痛める好人物として描かれています。
 さて、正雪が駿河由比の紺屋の子というのはよく知られた説ですが、本作でもそれに準拠しつつ、それを活かしに活かしたドラマを構築してみせたのが見事。

 久々に再会した兄に、我らは既に武士であると語り(この辺、どこぞの貝殻野郎を思い出したり)、己の大望を明かす正雪。自分が、自分たちが武士として生まれなかったことに悔しさを抱きつつ、しかしそれだからこそ一層に、武士が武士らしく生きられる世を作ろうとする彼の姿には、何とも言えぬ皮肉と、もの悲しさが感じられると同時に、なるほどこういう正雪の描き方があったか、と感心させられました。
 しかし今回のエピソードが神がかってくるのはこの後。これがあの正雪の実家かと紺屋を訪れ、所詮は紺屋生まれの山師、いずれは大罪を犯すに違いないと無礼極まりない言葉を吐く武士たちの言葉に噛みついたのは、家を捨てた正雪を嫌っていたはずの母でありました。武士たちに対し、自分は正雪の母などではなく実家に奉公していた者、正雪が紺屋の子であるはずがない。正雪は本当に立派な人間だと言い続ける母…そしてそれを正雪と兄が偶然耳にしてしまうというのが切なすぎます(「お前はおっかさんの誉れだ」と言う兄に、驚いたような顔で「誉れ…」と声に出さず繰り返す和泉元彌の演技が良いんだまた)
 そして、まさに正雪がその大罪を犯そうとしていると知りながらも、彼を庇う兄の姿が、こちらの涙腺を直撃。こうやって文章で書いてみるとベタな展開なのですが、いいものはいい。ことに、見ている我々は史実を知っているだけに、本当に本当に胸が痛みます(やっぱり慶安の変の後はこの母親や妹も…)。

 と、その直後に大仰過ぎるアクションで登場する大次郎はねえよ…本当にお前の空気の読めなさは最初のシリーズから変わらなくて嬉しいよ(ため息をつきながら)。

 そして正雪の敵である十兵衛を討つため、その妻・るいを人質にとって決闘を挑む吉岡。吉岡の得物は長巻なのですが、その長い柄を使った(そして使われた)チャンバラシーンも見事でありました。クライマックスの花びらとスローモーションは余計でしたが…
 もちろん、最後は十兵衛が勝つわけですが、この決闘の裏にあった想いを知っていたるいは、十兵衛に冷たい視線を向けることに。図らずも自分が最も厭っていた父と同じ道に踏み込んでいく十兵衛の姿が痛ましい…はずなのですが、見ているこちらは声もなく慟哭する正雪に感情移入しまくりでした。ある意味、正雪の勝ち(嬉しくない勝ちだ…)

 後半盛り上がり過ぎてすっかりどうでもよくなっていましたが、紀州で十兵衛を待つものも語られ、また家光も亡くなりと虚実入り乱れて物語も大きく動き出しました。その上何だか夫婦仲までピンチな感じで、四面楚歌な十兵衛。相変わらず辛気くさい顔がいよいよますます辛気くさくなったところで来週に続く。


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